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2005年6月1日
経営センサー6月号 2005 No.73

■経済・産業

世界一生産性の高い造船所 -大島造船所を訪ねて-

高橋 健治   常務理事 特別上席エコノミスト 

【要点(Point)】
(1)大島造船所は、創業してすぐ第一次石油ショックに遭遇し、大幅人員削減を迫られるなど、まさに「ついていない会社」であった。
(2)しかし、2001年、米国の大学から「世界一生産性の高い造船所」と評価された。
(3)これは、平成3年(1991年)以降、バルクに特化し、また、広い敷地を有効に使う一方、合理化、コスト削減にも注力し、生産性を高めてきた結果である。
(4)I昭和60年代に入って「雇用を守る」経営に転換、労使が一致団結して造船不況を乗り切ったことで、お互いの信頼関係がさらに深まった。
(5)命名引渡し式には、いつもお年寄りから幼稚園児までボランティアで集まって旗を振るなど、地元住民との関係も緊密である。

復活したブラジル経済 -注目の新興経済大国を追う(上) ブラジル編-

日本貿易振興機構 総務部 人事課 上席課長代理 竹下 幸治郎

 最近、世界経済の牽引役として「BRICs」(ブラジル、ロシア、インド、中国の4ヵ国を指す総称)諸国が注目を浴びている。高成長を続けるBRICsの経済規模は、2025年までには先進6ヵ国(米国、日本、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア)合計の半分を超える見通しで、「世界の工場」としての側面だけでなく、「世界の市場」としての存在感を高めつつある。BRICsのうちアジアに位置する中国とインドについては、日本企業も比較的多くの情報を集めており、進出事例も多いが、ブラジルとロシアについてはあまり馴染みがないという企業が多いのが実情だ。そこで、今号および次号では、それぞれBRICsのB(ブラジル)とR(ロシア)を取り上げ、その投資環境と企業の進出動向を概観することにしたい。

ポスト2008(北京五輪)を見据えたアジア全域での事業展開がカギ  -ASEAN地域で活躍する日系企業の現状と展望(後編)-

福田 佳之 産業経済調査部エコノミスト

【要点(Point)】
(1)中国沿海部の日系企業は高まる投資リスクから生産拠点の分散・シフトを考慮に入れる必要があり、その候補先として、中国内陸部と後発ASEAN地域のCLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)諸国が挙げられる。
(2)中国内陸部は物流問題、反日運動、そして人民元切り上げ問題を抱えており、現時点ではシフト・分散先として難しいとみられる。
(3)ベトナムは外資系企業に対する政策や政府の態度が不透明なものの、安価かつ高レベルの労働力が得られやすく、分散先として有望である。一方、ミャンマーは外資系企業が活動するための環境整備が不十分で、本格的に進出するのは先のこととなろう。
(4)今後の中国市場とASEAN地域市場はさらに拡大していくと同時に、中国の働きかけもあって両地域の一体化が進むとみられる。
(5)日系企業はポスト2008のアジア全域の経済緊密化をにらんだ拠点再編をさらに進め、現地企業のヒトの現地化や権限委譲など内部体制をグローバルなものに変えていく必要があろう。

旅行業界 -足元の旅行需要は堅調、有望市場は中高年-

永井 知美 産業経済調査部 産業アナリスト

【要点(Point)】
(1)足元の旅行需要は、海外旅行の回復を背景に堅調に推移している。
(2)2005年の旅行需要も、海外旅行と外国人の訪日旅行を中心に順調な伸びが予想されている。
(3)ただ、旅行業界を取り巻く環境は、パッケージツアー価格の下落、旅行会社を通さない旅行の増加などを背景に厳しい。
(4)旅行会社にとって中高年市場は有望である。パッケージツアー好きの同世代に向け、特徴ある商品を作って需要を掘り起こすことが求められる。

■視点・論点

「学力低下」と「大学全入時代」をつなぐもの -市場化する社会と教育の流動化-

日本経済新聞社 論説委員   柴崎 信三

「ゆとり」改革の誤算  小中学校を中心に教科内容を従来の3割削減するなど、学習の軽量化を目指したいわゆる「ゆとり教育」への改革は1990年代に始まり、学校週5日制の完全実施に合わせた2002年度の新学習指導要領の施行で仕上げられた。改革を動かしたのは、戦後の日本社会が形成してきた「一律平等」の原理に基づく競争の弊害を指摘する声が社会の各層から強まったことである。知識の詰め込みを競う受験教育の過熱が学校と若者の意識をゆがめるという声は父母や教育現場ばかりでなく、教育行政を取り仕切る文部省(当時)やメディアまでを包む世論となった。

■マネジメント

人材派遣から雇用創出へ -農業支援に見るパソナのチャレンジ-

株式会社パソナ 取締役常務執行役員 営業総本部 雇用開発担当   山本 絹子

【要点(Point)】
(1)日本の労働市場では若者を中心に定職につかないフリーターやニートが急増する一方で、リストラによる中高年の失業者が増えている。
(2)転職支援を行うパソナでは、新しい雇用を生み出す分野として創出分野である農業支援に乗り出した。若年層や中高年を対象に、インターンシップに取り組んでいる。
(3)近年、都市の再開発により都心のビルの空室率が目立つようになるが、ビルの再利用の一環として空きビル農業ができる。
(4)近い将来、農業の雇用創出に向けて、農業法人への人材派遣・人材紹介など、就農サポートを行う。

反日デモで揺らぐ日中ビジネス -日本企業に必要とされるリスクマネジメントとは-

フリージャーナリスト   中島 恵

【要点(Point)】
(1)日本と中国の経済関係は年々緊密化しているが、「政冷経熱」と言われ、政治的には冷え切った関係にある。
(2)反日デモの背景には日本の国連安保理入り問題、教科書問題、戦争責任問題など複合的な理由があり、複雑化している。
(3)中国に進出する日本企業は約1万6,000社を数える。日本企業はチャイナリスクを再認識し、リスクマネジメントを強化していく必要がある。

■人材

技術経営(MOT)教育のためのケース教材(1) あなたなら、このケースどうする? -東レスエード調人工皮革”エクセーヌ”の欧州事業戦略-

竹内 伸一  特別研究員 ケースメソッド教育研究所 代表

【要点(Point)】
(1)技術経営の実践能力を高めるための教育では、実例に基づくケース教材を用いた討議型の授業方法が有効である。
(2)ただし、その際に使用されるケース教材が「成功物語」としての色を濃くもっていると、効果的な訓練が行われにくくなる。
(3)今回、試行錯誤を経て筆者らが作成したケース教材を紹介することで、読者のみなさまからのご評価をいただきたい。

3つの上手 -プロ人材としての心構え-

渕野 富士男  取締役 人材開発部門長

 今年もまた新入社員が入ってきた。希望と不安を抱えた彼らにとって、入社3年間はとても大事である。配属された最初の上司や先輩から多大な影響を受ける。特に仕事の癖や人とのつきあい方、仕事観、会社観、人生観まで左右される。「三つ子(入社3年)の魂、百まで」である。会社という組織を通じて大きな夢を開花してほしい。その願いを込めて組織で元気に生きる「3つの上手」を贈りたい。これらは新人のみならず、市場価値を持つプロ人材、換言すれば顧客に満足と感動を与える人材に求められる要件とも言える。

■経済用語解説

ちょっと教えて!現代のキーワード  「株式分割」「ネット家電」

■お薦め名著

『ひとつの顔』 柳 宗玄 -顔の多様な意味-

■ズーム・アイ

分解の手引き

安楽 貴代美

 特に自慢はできないが、私にはとても好きなことがある。それは電化製品の『分解』だ。正確に言うと、分解と洗浄と組立である。といっても、対象はテレビのリモコンや、調理器具、照明器具など小さくて身近なものに限られており、要領は簡単。まず手頃な機械を見つけ、あらゆるネジをすべて外してバラバラにし、構成部品の一つ一つを水で洗う(場合によっては手洗い洗剤も使用)。完全に乾ききるまで辛抱強く待ち、再度元のように組み立て直す。

■今月のピックアップちゃーと

”クレジットカードが日本で一番通用するのは北海道”って本当?

■TBRの広場

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