close

2011年9月20日
東日本大震災後のものづくりの課題 ~企業はどこに活路を見いだすか
チーフエコノミスト
増田 貴司

・企業が目覚しい現場力を発揮して、サプライチェーンの復旧が急速に進んだため、日本の景気は震災後の落ち込みからV字回復しつつある。しかし、海外経済の変調と国内ビジネス環境悪化による産業空洞化を踏まえれば、V字回復後の景気浮揚力は限定的となろう。 ・マクロ経済環境や国の政策の現状から判断する限り、日本経済の将来に明るい展望を描きにくい。しかし、3.11以降の企業の動きを観察すれば、たくましい自律革新の動きが見られる。特に、日本企業の行動に次の3つの変化が生じている。 (1)円高対応または新興国市場を開拓する目的の海外生産シフトやM&Aの活発化。 (2)過剰な多品種少量生産や過剰品質を見直す動きや、本質的でない部品を特注品から標準品に切り替える動きの増加。 (3)国内勢同士の競争で体力をすり減らすのではなく、主戦場である海外市場での競争力強化に力を注ぐために、国内の事業を再編する動きの加速。 ・震災後の電力不足は、日本が省エネ分野の強みに磨きをかけ、世界に冠たる節電大国として成長するチャンスである。すでに多くの企業が節電、省エネ、創エネ、蓄エネ関連分野で新事業の強化に乗り出している。 ・戦後最大の苦境だというのに、政治の混迷と政策不在が続く日本の現状は、国民経済の存亡の危機に違いない。だが、震災後の環境急変を機に、多くの企業はかねてから課題と認識していながら先送りしてきた経営革新や成長戦略に、覚悟を決めて取り組み始めた。政治への失望感が企業の革新を加速している側面に注目すべきだ。ここにこそ日本経済復興への原動力が宿っている。

【キーワード】

産業空洞化、ビジネス環境悪化、現場力、サプライチェーン強化、BCP、復元力(レジリエンシー)、生産拠点分散、新興国シフト、グローバル化、省エネ・創エネ・蓄エネ、企業の自律革新

PDF : TBR産業経済の論点 No.11-09a(521KB)