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2018年8月24日
「組み合わせの妙」が大事
チーフエコノミスト
増田 貴司

 業種の垣根が崩壊しつつある。主要なモーターショーには自動車関連メーカーだけでなく、電機やIT(情報技術)企業が数多く出展するようになった。国際家電見本市では、とうの昔に家電はわき役となり、幅広い業種が自動運転や人工知能などをテーマにした展示を披露している。  電機産業の業界団体、電子情報技術産業協会(JEITA)も2017年に会員規約を改定し、業種にこだわらず、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」事業に関わる企業の入会を促し始めた。  業種の壁が崩れ、異業種間の競争と協業が増えてきた背景には、デジタル化の進展がある。デジタル化が進むと、初期の固定費を償却したあと、製品やサービスの生産を1単位追加する限界費用が劇的に低下する。これにより、異分野からの参入が容易になると同時に、既存のビジネスの収益構造は大打撃を受ける。  この結果、あらゆるビジネスはもはや一つのセクターにとどまるのでなく、他分野との協働(コラボレーション)を行う必要が出てきたのだ。  構造変化の本質を見据えれば、今求められているコラボレーションは、商品開発を行う際に自社に足りないピースを外部から安く効率的に手に入れるタイプの協業ではない。誰でも容易に新規分野に参入でき、簡単に技術にアクセスできる時代に突入した以上、既存の競争軸で効率的に開発を行うためのコラボでは、早晩過当競争に巻き込まれて利益を出しにくくなる。  今目指すべきコラボは、従来の延長線上の商品開発を効率的に進めるためのものではない。他社との協業により従来とは異なる土俵で新たな価値を提供する事業を開発し、競争の軸をずらすタイプのコラボが重要だ。一見縁遠い、離れた分野の企業同士の組み合わせの方が、大きな成果を生む可能性があるだろう。 (本稿は、2018年8月24日 日本経済新聞夕刊「十字路」 に掲載されました)