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2021年8月16日
【TBRカナリアレポート】No,21-06
動き出したデジタル課税
デジタル化とグローバル化に対応した国際的な法人課税が導入へ
部長(産業経済調査部)
 チーフエコノミスト
福田 佳之

 GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)と呼ばれるITを使ったプラットフォームを事業基盤とする企業が台頭していますが、彼らが負担する法人税は低いとの指摘があります。日本経済新聞の分析によると、GAFA4社の法人税負担率は平均15%程度と、主要な製造業の半分程度の水準にとどまっているということです。  GAFAに代表されるIT企業は、競争力の源泉である知的財産などを低税率国の関係会社で保有することが多く、例えば、グーグルやアップル、フェイスブックは、欧州本部などの拠点を法人税率が12.5%と低水準のアイルランドに置いています。一方、法人課税に関する現行の国際ルールでは国内に支店や工場などの物理的な拠点がない外国企業に対して原則として課税することはできません。  つまりグローバル経済やデジタル経済の進展に伴ってITなどの多国籍企業がいわば課税逃れをしています。こうした状況に対して、国際社会では現状に対応した適正な課税のあり方、つまりデジタル課税について議論を続けてきました。OECDは、2019年に彼らが稼いだ利益の一定分、つまり彼らの保有する知的財産が利益貢献した分に関する税収について、物理的な拠点がない国に対して当該国での売上高に応じて再配分する考え方を提示しており、20年には課税対象業種をオンライン広告、検索サービスなどとする青写真をまとめています。この青写真によると、デジタル課税制度導入による世界全体の法人税収の増加分は50億~120億ドルと試算しています(図表)。このようなOECDの課税方針に対して、対象とする業種区分のあいまいな点に加えて特定企業への狙い撃ちだという一部の国の反発もあって議論は遅々として進みませんでした。  2021年のバイデン政権の登場でデジタル課税に関する議論の流れが変わりました。バイデン政権は、デジタル課税の国際共通ルールとして、利益率と売上高の規模を基に絞り込んだ企業、世界の100社程度に限定されますが、これらを課税対象とする新たな案を提示しており、これをOECDが踏襲する形で進んでいます。  なお、デジタル課税についての国際的な議論の遅れに業を煮やしたフランスやインドなどは独自のデジタル課税をすでに実施しています。新型コロナウイルス対策で新たな財源が必要であり、彼らのデジタル課税はもはや欠かせないものとなっています。そのため、彼らが国益の観点からOECDの議論にすんなりと従わない恐れもあります。  2021年6 月の主要7 カ国(G7)財務相会合を経て7月の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、法人税の最低税率を少なくとも15%まで引き上げることに加えて、利益率が高い多国籍企業に対し、課税権の一部を市場国で分担する「デジタル課税」が大枠合意されました。具体的には、売上高200億ユーロ(約2.6兆円)、利益率10%を超える世界の多国籍企業(100社程度)を対象として10%を超える利益を「超過利益」とみなして、市場国に超過利益の20〜30%に課税できる権利を与えます。早ければ2023年から実施予定ですが、実施されれば法人税の国際課税は百年ぶりの大転換を迎えることになるでしょう。

「TBRカナリアレポート」では、東レ経営研究所の研究員が時事的なトピック等について解説します。
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PDF : TBRカナリアレポート No.21-06(450KB)