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2011年12月1日
繊維トレンド11・12月号 2011 No.91

■ファイバー/テキスタイル

イタリアが発信する2012/13 年秋冬向け糸素材のトレンドと そのモノづくりを支えるイタリア繊維産業クラスターの現状と問題点

株式会社インテグレード 代表取締役社長 繊維月刊誌『Twist』(World Textile Publication Ltd. 発行) 在日特派員 永松 道晴

【要点(Point)】
(1)最近の世界の政治経済情勢を反映してか、ファッションのトレンドも安定と変化、現実と幻想、自然と人工というような二極化したコントラストにどうバランスを取るか、それを素材と風合いと色とで表現しようとする意識が働いているようだ。2012/13年秋冬向けでイタリア人はどのように対応しようとしているか観察しよう。
(2)今年3 月にミラノで開催された2012/13年秋冬に向けた織り糸・編み糸の展示会Filo、引き続いて7月にフィレンツェで開かれたPitti Filatiは一貫したトレンドの上に構成されている。それは高騰する天然繊維原料への対策、ラグジュアリーファッションアパレルに機能性とエコ素材が組み入れられる傾向を受けて、素材のハイブリッド化が加速していることだ。
(3)ラグジュアリーブランドで使われているカシミヤやシルクなどの高級天然素材に化合繊やリサイクル素材を巧みにブレンドして、若い中間富裕層をターゲットにした対象市場を拡大する動きが目立つ。それには高品質・速い流行の変化に即応・短納期・低価格の4要素が必要で、これこそイタリア地場でしかできないという自信がうかがえる。これは一度中国に流出した生産を本国に取り戻す動きだ。
(4)このようにイタリアの繊維のモノづくりを支えているのがBiella やPratoなどの繊維産業クラスターだ。しかしながらそのモノづくり体制はかなり疲弊していて、このままラグジュアリーブランドが‘Made in Italy’の品質を維持できるかの瀬戸際に立たされている。イタリアの繊維産業クラスターが抱えている問題はそのまま日本のモノづくり産業にも当てはまることで、今後の非常に重い課題だ。

Dornbirn 国際化合繊会議 MFC2011 報告

テキスタイルジャーナリスト 米長 粲

【要点(Point)】
(1)欧州の繊維技術は、テクニカルテキスタイルを指向した革新技術の開発と情報発信の中心的役割を果たしている。
(2)最大の関心事は、限られた再生可能な資源の活用と二酸化炭素排出などを抑えた環境の保持である「サステナビリテイ」の概念に基づいたモノづくりと技術革新である。
(3)開発テーマは、医療用途、繊維・ポリマーの表面加工、バイオマステキスタイル、スマートテキスタイル、レーヨンの多様化、導電繊維などが多い。
(4)第50回の記念大会を迎えたドルンビルン国際化合繊会議は、世界の化合繊の技術開発の中心的な役割として今後ともその活動が期待される。

■縫製/アパレル

パキスタンの衣類(縫製)産業の課題 ―労働者・雇用形態を中心に―

日本貿易振興機構 アジア経済研究所 南アジア研究グループ 牧野 百恵

【要点(Point)】
(1)MFA撤廃後のパキスタン衣類、とりわけニット衣類輸出は、競争相手のインドやバングラデシュに比べて伸び悩んでいる。
(2)パキスタン衣類産業が国際競争力に欠ける要因は、製造(原材料、労働)コストの高さにある。
(3)労働コストの高さは、出来高払い男性縫製工が主流であるという労働者・雇用形態の特徴と密接に関連しているようである。

中国のOL服/通勤服市場 

株式会社フランドル 上海事務所 所長 篠原 航平

【要点(Point)】
(1)中国のOL服/通勤服市場は、現在揺籃期にある。その成長の要因は消費者のライフスタイルの変化にあると考えられる。
(2)中国のOL服/通勤服や、フォーマルオケージョンの服は、カジュアルウエア主体。“正装” というより“盛装” のテイストを。
(3)中国でOL服/通勤服ブランドとして支持を広げるICICLE。しかし支持される理由はOL服/通勤服というコンセプト1 つにあるのではない。
(4)中国の消費者は、日本以上に商品や購入体験に求めるものが大きい。日系企業は日本での成功体験を中国にフィットさせることが大切。

■小売/消費市場

シリーズ 高コスト先進国における企業生き残りのKey Factor 第16回 世界の衣料品小売流通の30年 Ⅱ

青山学院大学 経営学部 マーケティング学科 准教授 東 伸一

【要点(Point)】
(1)1 近年の衣料品小売流通における変化潮流のひとつは、専門店チェーンの台頭とそれらの国際展開の拡大であるが、その主役となる小売企業の多くは1960年代あるいは70年代までには(その前身が)創設されていた。
(2)急成長を遂げてきた主要な衣料品専門店チェーンの間では、いわゆる「ファストファッション」を強調する小売事業モデルが目立っているため、その「創造的模倣」のベンチマークとなるラグジュアリー・ブランド市場へのネガティブな効果が想定されるが、実際には後者の市場も昨今、世界市場において急速な成長を経験している。
(3)主要な衣料品専門店チェーンによる国際化プロセスは、ひとつの転換期を迎えている。新たな進出先市場に埋め込まれた特性の異質性・複雑性を前に各社の成長戦略は小売店舗ブランドのポートフォリオ化や卸売販路の開拓など、これまでとは異なる指向を示し始めている。
(4)それら専門店チェーンの大規模中間市場における地位も決して安泰ではない。主要チェーンの国際化を通じた規模拡大によって各社が必要とする優良サプライヤーの生産能力の獲得を困難にしている。そればかりでなく、大手サプライヤーの中には自社企画商品による直販経路の開拓やインターネット小売業者、物流業者などとの提携を通じた新販路の構築を目指すものも見られる。これは専門店チェーン形態に対する新たな競争者の出現の前兆であるかもしれない。

これからのブランディングを考える ―キーワードは、「ワンアイテム」「エディトリアル」「ソーシャル」―

東京ファッションプランニング株式会社 デザイン・企画カンパニー 社長 山田 桂子

【要点(Point)】
(1)前回までの「ファッション・マーケティングの定義の見直し」を踏まえ、今回は3 つのキーワードで、これからのブランディングを考える。
(2)1つめのキーワードは「ワンアイテム」。1つのアイテムに特化してスペシャリティを高め、顧客の高いマインドシェアを獲得している。
(3)2つめのキーワードは「エディトリアル」。個々の商品自体の大きな革新はないものの今までにない売り方やサービス、新たなテイスト切り口やゾーン切り口を、「編集」的着眼で創出しようという方向性を指す。
(4)3つめのキーワードは「ソーシャル」。環境保全を含めた社会貢献に寄与する業態とは何かを模索する。

PDF : 詳細(PDF:1,453KB)

■新市場/新製品/新技術動向

シリーズ 高齢化社会と繊維 第2回 福祉用具レンタルの現場から見る望まれる繊維製品とは 株式会社ヤマシタコーポレーション

フリージャーナリスト 土井 弘美

【要点(Point)】
(1)ヤマシタコーポレーションは、病院やホテルのリネンサプライからスタートし、福祉用具のレンタル・販売に先駆的に取り組んできた企業。この業界のリーディングカンパニーである。
(2)同社は、洗浄・消毒、3カ月に1回の訪問による状況確認やメンテナンスなど「目に見えない部分」に力を入れた誠実なサービスを提供しており、福祉用具専門相談員の職能団体「一般社団法人全国福祉用具専門相談員協会(通称:ふくせん)」を立ち上げるなど、業界全体のレベルアップにも貢献している。
(3)介護分野では、機能素材の普及は限定的。その理由は、主にコスト的な問題にある。
(4)今後、拡大していく介護関連分野では、新たな素材開発やデザインも含めた新製品の開発が待たれている。

■知りたかった繊維ビジネスのキーポイント

アジア低コスト国の繊維品輸出の急拡大

日本化学繊維協会 業務調査グループ 主任 鍵山 博哉

 2011年に入り、ベトナム、インドネシア、バングラデシュ、カンボジアといったアジアの低コスト生産国からの繊維品輸出が増加している。とりわけ、後発発展途上国(LDC)であるバングラデシュ、カンボジア等の輸出が、衣類を中心に急拡大している。

■統計・資料

主要商品市況

1. 原油  2. ナフサ  3.PTA 4.EG 5. カプロラクタム 6. アクリロニトリル 7. ナイロンフィラメント、同織物  8. ポリエステルフィラメント、同織物  9. ポリエステルステープル 10. アクリルステープル、同紡績糸 11. 綿花  12. ポリエステル綿混(T/C)紡績糸及び織物