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2015年6月11日
製造業の国内回帰は実際に生じているのか
~ 円安進行による国内生産シフトは限定的 ~
シニアエコノミスト
福田 佳之

・円安などを受けて製造業の国内回帰への関心が高まっている。ただし、統計で国内生産のシフトが確認されたのはつい最近になってからである。 ・製造業の国内回帰は2000年代半ばにも生じているが、その後の円高の進行などで国内回帰した工場はお荷物となった。これは当時の製造業が楽観的な環境認識に基づき各社横並びで過大な投資を行った結果ともいえる。 ・今般生じている国内生産のシフトは、円安進行による逆輸入の採算悪化が関係しているものが多い。日本の製造業の立地戦略は原則として地産地消を掲げており、為替変動が及ぼす収益の悪影響を防ぐため、世界的な生産配分の調整の一環として、機動的に国内生産を高めているに過ぎない。 ・一方、海外の労働コスト上昇の克服、安全安心の確保、海外のメイドインジャパン信仰、高付加価値化、技術流出防止などを目的とした国内回帰も見られるが、少数派である。今後も企業立地の基本方針は地産地消であり、海外投資は引き続き行われ、円安による国内生産シフトは限定的な規模にとどまる。ただし、今後の3Dプリンターの普及水準や政府の製造業支援によっては、生産や投資の国内回帰が大規模に進む可能性もある。 ・また生産の国内シフトが日本経済の人手不足に拍車をかけることが懸念される。国内経済の活性化には、サービス産業など労働不足業種への省力・省人化投資だけでなく、女性や外国人など新しい労働力の持続的な投入が不可欠である。

【キーワード】

製造業の国内回帰、Jカーブ効果、設備の更新需要、逆輸入、地産地消、ロボットの活用、メイドインジャパン、3Dプリンター、製造業支援策、人手不足

PDF : TBR産業経済の論点 No.15-06(704K)