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2009年9月9日
なぜ東アジアは先進国の景気に左右されるのか
~ 「デカップリング論」と東アジア地域の貿易・生産構造の変化 ~
シニアエコノミスト
福田 佳之

・昨秋からの世界同時不況は東アジア経済にも波及し、同地域の輸出が不振に陥ったが、地域別に見ると先進国向けよりも域内向けの輸出の減少が大きい。 ・不況入り前は、東アジアの景気は欧米と連動して低下・後退しないという「デカップリング論」が叫ばれていた。その理由として、東アジア地域では対先進国貿易シェアが低下する一方で、域内貿易のシェアが高まっていたことが挙げられる。 ・東アジアの域内貿易の特徴として、部品・加工品中心の貿易が行われている。一方、域外貿易については、中国を軸に資本財・消費財を供給している。 ・域内の生産構造に目を移すと、近年、電機産業を中心に輸入中間財、特に同じ東アジア地域からの輸入中間財の投入シェアが増加しており、生産工程が域内全域に拡大していることが分かる。つまり、米国など先進国向け消費財・資本財を生産するにあたり、東アジアは国境をまたがって部材など中間財を調達しており、生産と輸出が域内で密接な関係になっているということだ。 ・このような東アジア地域の貿易・生産構造の変化は効率性の向上による生産拡大と域内外経済の連動性を高めることとなった。世界経済の高成長時代にはリンクして高成長を続けるが、いったん成長がストップすると、打撃を受けやすい。 ・最近の新興経済国の力強い景気回復と先進国の景気回復の遅れという状況を捉えて実はデカップリングが生じているのだと主張する論者がいるが、東アジアの構造変化を考慮すると東アジアは自立的に成長し続ける要因に乏しく、上辺だけの現象であると判断せざるを得ない。 ・東アジア経済の復活には、バランスのとれた貿易・生産構造を築くと同時に域内内需の振興が必要である。なかでも低いレベルにある個人消費の拡大こそ重要であり、社会保障の拡充や生活関連インフラの投資増で個人消費拡大を後押しする必要がある。 ・東アジア内需の拡大は日本経済にとって強力な成長エンジンとなりうる。そのために、日本は東アジア地域との連携を深め、ハード・ソフト両面で東アジア内需拡大のための支援を行うべきである。

【キーワード】

デカップリング、工程間分業、アジア国際産業連関表、中間財、家電下郷、社会保障、インフラ、東アジア内需

PDF : TBR産業経済の論点 No.09-07(155KB)