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2017年10月23日
新産業を育む新興国
チーフエコノミスト
増田 貴司

 近年、新興国において新産業が生まれたり、最先端の技術やサービスが開花したりする例 が増えてきた。新興国では先進国がたどった段階的な発展過程を経ずに、いきなり最先端の 技術が普及する「カエル飛び(リープフロッグ)」と呼ばれる現象が続出している。  中国ではクレジットカードが普及する前に、スマートフォンを使ったモバイル決済が拡大。現 金が必要ないキャッシュレス決済が社会の隅々にまで広がり、シェア自転車などの新市場も 急成長している。インドでは携帯電話を所有していなくても、本人確認のための固有識別番 号にリンクした銀行口座を持っているだけで支払いができる、画期的なスマホ決済アプリが登 場した。  こうした中で新興国で開発された低価格の革新的製品・サービスが、先進国を含む世界に 普及していくという「リバースイノベーション」に注目が集まっている。新興国ではインフラが未 整備で、先進国で当たり前にあるものが欠乏している。そのため斬新な発想が生まれやすい。 法や規制が整っておらず、しがらみが少ないことも、革新的技術を使った新ビジネスの発展 にとって有利な条件だ。  リバースイノベーションを推進するため、先進国の企業が新興国で事業開発を行う事例も 増えてきた。ゼネラル・エレクトリック(GE)は医療機器新製品の 25%超をインドで開発してい る。米国のベンチャー企業がルワンダで世界初のドローン物流サービスを開始した例もある。  新興国で誕生した新産業は、規制や制度などのルールが未整備だ。企業がその市場を開 拓するには、ルール作りへの目配りが欠かせない。海外の先進的な企業は、自らに有利なル ールを形成すべく各国政府に働きかけを行っている。日本企業も主体的にルール作りへ関与 すべきだろう。 (本稿は、2017 年 10 月 18 日 日本経済新聞夕刊「十字路」 に掲載されました)