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2012年12月1日
経営センサー12月号 2012 No.148

■特別講演会抄録

『価値づくりの戦略とマネジメント─日本製造業の生きる道─』

一橋大学 イノベーション研究センター長 教授 神戸大学 経済経営研究所 名誉教授 延岡 健太郎

東レ経営研究所では、2012年10月11日、経団連会館にて「日本企業の生きる道―求められる価値づくりとは―」と題した、2012年度特別講演会を開催しました。本号では、一橋大学イノベーション研究センター長・教授 延岡健太郎氏の講演をご紹介します。 なお、ドーンデザイン研究所代表取締役/デザイナー 水戸岡鋭治氏の講演については2013年1・2月に掲載予定です。また、産業経済調査部 シニアアナリスト 永井知美の講演内容は、本誌2012年9月号「鉄鋼業界復活のカギは?」に掲載しています。

■経済・産業

2013年世界経済を読み解く10のキーワード

業経済調査部 シニアエコノミスト 福田 佳之

【要点(Point)】
(1)2013年世界経済を読み解く上で鍵となりそうなトピックについて6つのQ&A形式で解説した。その際、トピックの鍵となる用語を10点抽出した。文中では太字ゴシックで示している。
(2)本稿前半では2013年の世界経済に影響を与える先進国の動向、特に欧米について取り上げた。後半では、エネルギー問題、とりわけ生産が急増している米国シェールガスに焦点を絞って解説した。中国、インドなど新興国経済の展望やTPPなど包括的な自由貿易協定の行方など13年世界経済を読み解く上で重要なトピックは他にもあるが、他誌でもよく取り上げられることもあって本稿では割愛した。
(3)6つの質問と10のキーワードは以下の通り。
1.世界経済はこのまま低迷に向かうのでしょうか?
  キーワード①欧州の債務・金融危機、②「財政の崖」
2.欧州の債務・金融危機はいつごろ解決に向かうのでしょうか?
  キーワード③銀行同盟、④財政統合
3.米国は「財政の崖」を回避できるのでしょうか?
  キーワード⑤決められない政治
4.米国のシェールガスの生産は持続するでしょうか? 米国製造業への影響はどの程度のものでしょうか?
  キーワード⑥シェールガス、⑦米国製造業の国内回帰
5.日本や欧州など米国以外の国にとって、米国のシェールガス生産のメリット・デメリットはどういったものでしょうか?
  キーワード⑧LNG輸出、⑨シェールオイル
6.環境問題はシェールガス開発にブレーキをかけるのでしょうか?
  キーワード⑩ドリリングケミカル

PDF : 詳細(PDF:1,925KB)

■産業技術

米国発「紛争鉱物開示規則」がもたらす サプライチェーンの新たな試練 ―企業が求められる“コンフリクト・フリー”対応とは?― 

産業技術調査部 シニアリサーチャー 岩谷 俊之

【要点(Point)】
(1)紛争鉱物問題とは、コンゴ民主共和国およびその周辺9カ国で産出した鉱物資源取引がコンゴ国内の反政府武装勢力の資金源になっている現状を指す。反政府勢力の資金源を断つためには、同地域からの鉱物資源購入を止める必要があった。
(2)2010年7月、米国政府が4種類の鉱物(スズ、タングステン、タンタル、金)を対象に、上記10カ国からのものかどうかの調査を米国証券取引所上場企業に義務付ける法律を可決したことで、紛争鉱物問題は企業のリスク管理上の重大なテーマに浮上した。
(3)米国上場企業が対象といっても、サプライチェーンをさかのぼって紛争鉱物調査を実施すれば、日本企業の多くもそこに関わってくる。これは米国だけの問題ではないのである。
(4)欧州のRoHS指令やREACH規則で化学物質リスクが、そして今回米国発の形で紛争鉱物リスクが企業のCSR上の重要課題となった。このようなサプライチェーン・リスク管理上の試練は今後も続く公算が大きい。

PDF : 詳細(PDF:1,796KB)

■視点・論点

健全なる抑止力の存在

エコノミスト 松下 滋

マクロ経済にあっては中央銀行 日本においても米国においても、「経済の政治化」が行き過ぎると、ろくなことはない。必ず後から大きなつけが回ってくる。バブルの崩壊が、その典型例だ。金融危機や債務不安が、後々経済に与える深刻な打撃は計り知れない。金融緩和の行き過ぎは必ず将来のリスクになる。米欧においても同じである。経済・社会の持続的な発展のためには、「経済の政治化」の行き過ぎを監視し、抑止力が働くシステムをつくっておかなければならない。

■マネジメント

審査員から見たISO9001/ISO14001などの効果的な活用法 (第3回〈最終回〉) ―コンパクトなISO自己適合宣言と簡易マネジメントシステム―

特別研究員 山下 重二

【要点(Point)】
(1)前回はISOマネジメントシステムをステップアップする具体策について述べたが、今回は視点を広げ、ISOマネジメントシステムの認証登録にこだわらないコンパクトでコストの安い
 ・ISOマネジメントシステムの自己適合宣言
 ・ISOマネジメントシステム以外の簡易マネジメントシステム
 ・自社独自のマネジメントシステム
について考える。これらは、顧客など利害関係者から‘ISO認証登録’を要求されていないが、自主的に自社の経営管理体制を強化し、費用対効果も考えて成果を上げたい場合に有効である。
(2)ただ、これらの方法は‘ISO認証登録’という客観的担保を持たないだけに、マネジメントシステムの内容を明確にして確実に運用し成果を上げ、適合宣言の基礎となる適合性評価活動を客観的に明確にするなど、継続的改善が安易にならないよう留意することが肝要である。自社が自己適合宣言した内容を、第二者または第三者に確認を求める方法もある。

PDF : 詳細(PDF:1,420KB)

■環境・エネルギー

ニセモノは自然エネルギー分野にも

東京大学 総長室アドバイザー 村沢 義久

【要点(Point)】
(1)山中教授のノーベル賞受賞に水をさすような、「iPS細胞を使った」と称する虚偽手術事件が報道された。
(2)私の専門分野である再生可能エネルギー関連でも、多くの「ニセモノ」や「マガイモノ」が横行している。
(3)エネルギー自体は正直であり自然科学の法則に従っている。虚言・妄言を行うのは人間である。

■アジア・新興国

産業競争力強化を図るブラジル経済

公益財団法人 国際金融情報センター 中南米部長 桑原 小百合

【要点(Point)】
(1)最近のブラジルの景気低迷は、2011年半ばまでの通貨高や労働コストの上昇が製造業の収益を悪化させ、投資を抑制したこと、政府・中銀による景気過熱抑制策が予想以上に民間消費を冷やしたことが主因である。
(2)根底には、未整備なインフラ、高率で複雑な税体系や高金利、低い国内貯蓄率といった、構造的な問題がある。
(3)ブラジル政府は、産業の競争力と持続的な成長の実現のため、道路、鉄道、港湾、空港、水路などのインフラ整備に本格的に取り組み始めた。政府の計画執行能力がどのように発揮されていくか、注目される。

■人材

人材育成の視点 事業の「明日」を創造するワークショップ ―東レ・樹脂営業力強化プログラムの事例紹介― 

株式会社スコラ・コンサルト 《いい会社づくり戦略経営ラボ》 プロセスデザイナー 野口 正明

【要点(Point)】
(1)「明日の準備」をすることなしに、いま企業が直面する閉塞感や言いしれぬ不安感を打ち破ることはできない。
(2)日常の業務とは異なる時間・空間を確保し、明日を担うミドル層で未来像について真剣勝負の対話をする「場」を持つ。
(3)その「場」はシナリオどおりに進むことよりも、メンバーの主体性を重視する。思いがけない創造が誘発されることも少なくない。

■経済用語解説

ちょっと教えて!現代のキーワード 

「米国製造業の国内回帰」「ビッグデータ」

■お薦め名著

『ストレッチ・カンパニー』  ―継続的成長をいかに実現するか―

グレアム・K・ディーンズ/フリッツ・クルーガー 著 梅澤 高明 訳

■ズーム・アイ

イノベーションの原点は料理にあり?

産業技術調査部 増田 真

たまにではありますが、私は料理をします。といっても、凝ったことをするのではなく、あり合わせの材料で何が作れそうか考えたり、少し変わったことを試すのが好きなのです。