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2021年4月30日
【世界経済評論IMPACTコラム原稿】
再生可能エネルギーの普及を左右する蓄電池:カギは車載蓄電池のリユース
部長(産業経済調査部)
 チーフエコノミスト
福田 佳之

2050年の日本の再生可能発電シェアを5~6割に  太陽光、風力など再生可能エネルギーによる発電シェアが世界で上昇している。再生可能発電のシェアは2019年時点で10%に到達した。今後について国際エネルギー機関(IEA)の2020年世界エネルギー見通しによると、公表政策シナリオでは2040年時点の再生可能発電シェアが47%(水力発電を除くと32%)、持続可能発展シナリオでは同72%(同55%)を見込む。日本でも第6次エネルギー基本計画の策定論議でも2050年の電源構成について、再生可能エネルギーによる発電が5~6割を占めるなど再生可能発電が大きく増えるとしている。  再生可能発電の普及促進に際して適地減少によるコスト増大や再生可能電力用の送電線不足などに加えて、再生可能発電は自然条件によって変動するため、これらの発電による変動分をならすために調整供給する電力、いわば「調整力」をどのように整備するかという問題に直面する。そして短期的な変動に対する「調整力」として期待がかかるのはリチウムイオン電池などの蓄電池である。電力余剰時に蓄えることが可能な一方で、不足時には蓄えた電力を放出することで電力変動を均すことができる。先述のIEAの見通しでは、再生可能発電を20%以上導入した場合、調整力として必要な定置用蓄電システムの発電能力は、欧州では3GW、米中インドでは合わせて20GW以上になるとした。 調整力として車載蓄電池のリユースに期待  現時点では蓄電池の製造コストは高く、調整力として配置するには採算的に厳しい。家庭用や産業用の蓄電池価格は2015年実績でKW時当たり20~30万円である。さすがに現時点では同価格はもう少し低下しているものの、現在調整力として利用中の揚水発電の設置コスト(同2.3万円)の数倍以上はある。筆者は、こうした新規の蓄電池のコスト低下を待ってから投入するのではなく、電気自動車やプラグインハイブリッド車(まとめてEVとする)などに搭載している蓄電池をリユースすればいいのではないかと考える。  世界各国がカーボンニュートラルに向けて取り組みを進める中で、EVの普及も加速するだろう。IEAの「Global EV Outlook 2020」では、EVの累積導入台数は2019年の800万台から、2030年には1.4~2.5億台に達すると予想される。仮に1台10KW時の蓄電池が搭載されているとして、世界のEV全体では1,400~2,500GW時の蓄電池容量を保有する。そのうち5~10%が毎年買い替えられるとなると、70~250GW時の蓄電池リユース市場が現れることになる。日本でもフォーアールエナジーが車載蓄電池のリユース事業に着手しており、トヨタ自動車はJERAと組んで実証事業に取り組んでいる。海外でも三井物産や 伊藤忠商事が現地の米中企業と組んで同事業を開始した。 車載蓄電池の標準化が重要  ただ車載蓄電池のリユースについての課題は山積している。廃棄蓄電池の回収などサプライチェーンの構築、容易な蓄電池取り出しや電池の劣化診断の技術確立、異なる電池をつなげて再製品化したときの品質確保、そしてリユース製品の保証と多岐にわたる。電力網との効率的な接続も取り組まねばならない。なかでも大量の廃棄蓄電池を安価かつ安定的に確保することが重要であり、そのためには前もって車載蓄電池の標準化を進めて異なる企業が製造した蓄電池を難なくリユースできるようにしておく必要がある。  今後、蓄電池の製造コスト低下が顕著となって、過去の割高な蓄電池のリユースが採算割れを起こす恐れもある。ただ蓄電池製造は大量の温室効果ガス排出を引き起こす。温室効果ガス排出削減という観点を考慮すると、調整力としての蓄電池配備についてリユースを誘導していく必要があるだろう。 (本稿は、国際貿易投資研究所(ITI)4月26日付「世界経済評論IMPACT」に掲載されました)