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2013年4月1日
経営センサー4月号 2013 No.151

■今月のピックアップちゃーと

まだまだ遠い観光立国 ~2012年の訪日外国人旅行者は過去2番目の水準だが、目標には及ばず~

■経済・産業

【シリーズ 海外文献から「今」を読み解く】 本格化する国内回帰で米国製造業は復権するのか

産業経済調査部 シニアエコノミスト 福田 佳之

【要点(Point)】
(1)最近になって、米国の機械産業や石油化学産業が海外にあった生産拠点を国内に回帰させている。
(2)国内回帰の理由として、ドル安の持続や安価なシェールガスの活用以外にも、①新興国との労働コスト格差の縮小、②アウトソーシングやオフショアリングの「隠れたコスト」の認識、③消費地生産のメリット増大が挙げられる。
(3)今後の米国の製造業は、他の先進国と比べてコスト面で優位に立ち、米国を輸出基地化することで雇用を250~500万人創出できるという予測もある。また3Dプリンターやロボットの活用で製造業はサプライチェーンを国内に戻すことで新たな雇用が国内に生まれるとの指摘もある。
(4)ただし、米国の製造業は技術者不足や裾野産業の弱体化といった問題を抱えている。製造業および連邦政府は近視眼的な視点に惑わされることなく、長期的に人材や研究開発などの投資を行う必要がある。これらの投資が継続され弱点が補強されたときに米国製造業は復権すると見る。
(5)米国では製造業の今後と課題について正しく議論できているように思われる。日本でも製造業の今後について感情に流されず客観的に議論できる場をつくることが必要だろう。

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■業界展望

世界的に業績二極化する電機メーカー ―総じて堅調な重電・インフラ系メーカー、明暗分かれる弱電系―

産業経済調査部 シニアアナリスト 永井 知美

【要点(Point)】
(1)パナソニック、シャープといった日本を代表する電機メーカーの巨額の赤字決算が喧伝されているが、全ての大手電機メーカーの業績が不振なわけではない。家電メーカー不振の一方で、重電・インフラ分野に強みを持つ総合電機メーカーの業績は堅調である。
(2)総合電機堅調、家電苦戦の背景には、事業構成とビジネスモデルの違いがある。家電メーカーが強みを持つデジタル家電分野は参入障壁が低く、競争激化と価格下落が著しいのに対して、総合電機が得意とする重電・インフラ分野は高い技術力とノウハウ蓄積が必要なため、日米欧メーカーが優位を保っている。新興国を中心にインフラ市場が拡大しているのも、総合電機メーカーにとっては追い風である。
(3)電機メーカーの業績が二極化しているのは日本だけではない。世界的に見ても電機メーカーは好不調が鮮明である。重電・インフラ系が堅調なのは海外も同じだが、日本と違うのは、弱電系にサムスン電子といった少数の勝ち組企業が存在することである。
(4)携帯端末を例に弱電系海外電機メーカーの状況を概観すると、サムスン電子の好調ぶりが際立っている。ただ、サムスン電子の主な収益源となっている携帯端末市場は成熟に向かっており、先行きには不透明感も漂っている。

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■視点・論点

消費者インサイトとウェーバーの理解社会学

東洋学園大学大学院 現代経営研究科 教授 井原 久光

マーケティングでは、顧客の求めるものは「ニーズ」や「ウォンツ」という形で「顧客の中」に隠されていると考える。そして、そのニーズをいち早く見つけて、顧客が求めているものを「商品の中」に埋め込んで商品化するという発想が商品開発の根底にある。したがって、「商品の中」にニーズもウォンツも移転することが可能であり、最終的には商品の中にもそれら(ニーズ/ウォンツ)が埋め込まれていると考えがちである。

■マネジメント

再就職後の人生の歩き方 ―ある山一営業マンの場合―

特別研究員 高橋 健治

【要点(Point)】
(1)元山一證券の部長は、51歳の時に自主廃業で失業し、地方銀行に課長として再就職、株式運用で銀行の年間利益の半分を稼ぎ出した。
(2)投信販売でも、スイス系投信会社と協力し、2,500億円を販売するなど実績が認められ、部長に昇格した。
(3)銀行退職後、その投信会社に誘われて入社、2兆7,000億円の投信を販売し、国内株式投信残高でトップとなった。
(4)激務のため講演中に倒れ、身体障害者となったが、現在も社会奉仕などで活動中。

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■環境・エネルギー

地域主導の自然エネルギーの拡大 ―長野県飯田市の挑戦―

京都大学大学院 地球環境学堂 教授 松下 和夫

【要点(Point)】
(1)固定価格買い取り制度(FIT)の導入により自然エネルギー、とりわけ太陽光発電は予想以上に普及している。
(2)しかし自然エネルギーの拡大には、発送電分離や送電網の整備に加え、地域の主体性を生かし、地元に利益が還元されるような仕組みをつくることが課題である。
(3)長野県飯田市では、FITの導入以前から自然エネルギーの普及を通じた地域の発展の観点から独自の先進的取り組みを進めている。

■アジア・新興国

アジアにおける環境共同体の形成は可能か ―環境リーダー教育の現場視点から―

九州大学 東アジア環境研究機構 特任准教授 篠﨑 真美

【要点(Point)】
(1)地球の環境破壊、特にアジアの環境破壊は経済開発という名のもとに、人間のみならずあらゆる生命の存在をおびやかす待ったなしの段階にきている。
(2)「持続可能な開発のための教育の10年(ESD)」により、2005年から来年2014年まで国際的な取り組みが行われており、日本では環境省「環境人材育成のための大学教育開発事業」と文部科学省「戦略的環境リーダー育成拠点形成プログラム」が推進されている。
(3)アジア環境共同体の実現がアジアの環境問題解決のためには必要であり、アジアにおける環境にみる日本の強みは、1)環境技術力と環境技術イノベーションの創出、2)環境問題汚染の歴史から学んだ知見である。
(4)アジア環境共同体の実現に向けて、1)国際間の基本的立場、価値、制度を公平にもつ、2)自由の権利、基本的人権をもつ、3)国益、歴史、宗教を関与させず、4)環境倫理をもつという4点の課題を克服する道筋を、今後の日本政府に期待する。

■人材

人材育成の視点 強い組織と弱い組織を分けるもの ―その違いと組織蘇生の条件―

東洋学園大学 現代経営学部 客員教授 兼 東レ経営研究所 特別研究員 渕野 康一

【要点(Point)】
(1)組織は生き物である。強くなったり弱くなったりしながら、常に変化している。組織は栄枯盛衰を繰り返す。
(2)現代の日本社会は組織社会であり、競争社会である。その中で「強い組織」と「弱い組織」は確かに現存する。その違いは何か?
(3)組織を観る視点をいくつか提示しながら、組織の成立条件や「強い組織」の共通点、「弱い組織」を蘇生する方策を探る。

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■経済用語解説

ちょっと教えて!現代のキーワード 

「中央銀行の独立性」 「改正高年齢者雇用安定法」

■お薦め名著

『膨張する監視社会』 ―グローバル化する個人識別システム―

ディヴィッド・ライアン 著 田畑 暁生 訳

■ズーム・アイ

来るか!大彗星

産業技術調査部長 松井 滋樹

2012年は金環日食が話題となりましたが、2013年は彗星の当たり年になるといわれています。まずは3月から4月にかけてパンスターズ彗星が、そして年末にかけてはアイソン彗星が見ごろを迎えます。なかでもアイソン彗星は満月と同程度までの明るさとなると期待されており、史上最も明るく輝く大彗星の1つになるのではないかとまでいわれています。近年は南半球中心に観測される大彗星が多く、日本で見ることができる大彗星としては1996年の百武彗星、1997年のヘール・ボップ彗星までさかのぼらねばなりません。約15年前、北の空にぼんやりと輝くヘール・ボップ彗星を見た方も多いのではないかと思います。まだデジカメが普及途上で、天体撮影にはフィルム式のカメラが優位であった当事、その姿を写真に残そうと、四苦八苦しながら撮影した写真が私の手元に今も残っています。