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2017年12月22日
ロボットと人の協働
チーフエコノミスト
増田 貴司

 ロボットや人工知能(AI)が社会に浸透し始めた。人手不足が深刻化する中、産業の現場 において、人とロボットが同じ空間で協働する新たなシステムが次々と開発されている。 ロボット・AI(以下、ロボット)といえば、人間の作業を代替する面が注目されがちだ。しかし、 実は人間のできることを拡張・支援するための道具になるし、そのような使い方をすべきだろ う。ロボットが得意なことはロボットに任せ、人間は柔軟性や判断力、創造性を求められる仕 事に専念する方が合理的だ。ロボットを相棒として活用すれば、人間の視野を超人的に広げ、 組織の機動力を圧倒的に高めることもできる。プロ棋士の世界では、AI を1つのツールとして 活用して棋士の能力や実力を伸ばすという使い方が広がっているという。  近い将来、企業にとって業務の担い手としてのロボットと人間の組み合わせの最適化が重 要課題となるだろう。  しかし、ロボットと人が協働する社会を実現するためには、克服すべき課題が山積している。 急速な技術革新が起こった時、人類は新技術に慣れるまではその導入に慎重になるものだ。 ロボットの場合、そのハードルはさらに高い。人間はロボットに対して、人類を助けてくれる存 在であってほしいと願う一方で、君主と化したロボットに自分は「奴隷として使われるのではな いか」という恐れを抱いている。この文化的イメージが合理的な判断の妨げになる。  この難題を突破するには、人とロボットのあるべき協調関係についての心理的、倫理的、 法的研究を深めることが喫緊の課題だ。この領域は、「鉄腕アトム」や「ドラえもん」の影響で 「ロボットと人の共生」のイメージが沸きやすい日本人に優位性があると思われる。日本がこ の分野で主導権を握ることを期待したい。 (本稿は、2017 年 12 月 21 日 日本経済新聞夕刊「十字路」 に掲載されました)