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2010年7月9日
日本人のエコ意識と消費刺激策
チーフエコノミスト
増田 貴司

 省エネ性能の高い住宅の新築およびリフォームを対象に、最大 30 万円相当のポイントを 助成する住宅版エコポイント制度の利用が活発化してきた。今年5月の申請件数は2万2000 件を超え、うち約 2 割が新築だという。  環境対応型の新築住宅は高額なため、この程度の補助では人気は出ないとの見方も多か ったが、優遇策が足元の住宅販売回復の一因となっている。住宅リフォーム需要の刺激効 果はさらに大きく、断熱性を高める内窓の商戦が空前の盛り上がりを見せている。家電量 販店など新たな販売ルートが需要掘り起こしに貢献している。  住宅版エコポイント制度が予想以上の成果をあげている背景には、日本人特有のエコ意 識があるのではないか。諸外国では、いくら環境にやさしい商品でも金銭的な損得計算で 実利が伴わなければ売れない。しかし日本人の場合、少々割高な商品でも「地球に優しい」 という言葉が琴線に触れ消費に向かうという、まれな国民性があると思う。  この日本人ならではのエコ意識の存在を如実に示した事例の一つが、太陽光発電の家庭 への普及を促すために 2009 年 11 月に導入された固定価格買い取り制度である。日本のこ の制度は、ドイツなどの制度と比べると買い取り価格や期間、対象電力の範囲などの点で 金銭的メリットが小さいため、あまり普及しないと専門家は予想した。  だが、実際には同制度の利用は予測をはるかに上回り、09 年度下期の日本の住宅向け太 陽電池出荷は発電能力ベースで前年同期比 3.2 倍に激増した。  日本では、エコ関連消費刺激策は金銭的なインセンティブが小さくても、うまく導入す れば合理的な予想を超えた需要掘り起こし効果を生むことがあるようだ。財政余力のない 日本で費用対効果の高い景気刺激策を考える上で、この点はもっと注目されていい。 (本稿は、2010 年 7 月 7 日 日本経済新聞夕刊「十字路」に掲載されました)