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2001年11月1日
経営センサー11月号 2001 No.35

■経済・産業

特別講演会抄録 「需要創出の経営」

株式会社NTTドコモ 会長 大星 公二

 「iモード」は競争市場の中から、経営の必要に迫られて誕生した。1996年当時社長であった大星氏は、携帯電話の販売が加速し予測をかなり上回るものであったため、計画より早期に増加率がサチュレートすると予測した。また利用者が低利用層に拡散し、競争で料金も下げてきたので、1加入当りの収入が逓減し始めた。さらにネットワークや小型端末でリードしていたのがキャッチアップされ、サービスに差がなくなってきたため、端末機価格の激安競争が始まり、差異化の必要に迫られた。このような状況から「音声以外のメイル・データ・画像通信」へ新たな市場を創出するべく戦略転換を図り、タイミングよくインターネットが出現したので、これとリンクして B to C、B to BのIT市場を創出するのに成功した。

到来した失業率5%超時代 -今、労働市場に何が起きているか-

高橋 健治  産業経済調査部長チーフ・エコノミスト

 完全失業率5%超時代が到来した。これまで業績好調で、雇用拡大部門であったIT関連産業が、逆にリストラを開始したことも雇用悪化に拍車をかけている。再就職活動の難しさから、再就職活動を諦め、非労働力化した人も含めると、実際の失業者はもっと多くなる。就業者の中では、自営業主や、家族従業者が減少、雇用者では製造業、大企業の雇用減少が続いている。年齢別では、若年労働者の失業率が高水準であるが、これは、就職難による不本意な就職が理由と見られる。今後、構造改革でさらに雇用環境が悪化する懸念があり、ワークシェアリング等も検討する必要があろう。

景気の行方と構造改革の正しい進め方 -デフレ脱却が最優先、需要創出を柱に改革手順の再編成を-

増田貴司  産業経済調査部主任研究員シニアエコノミスト

 日本の景気は、米国経済減速、IT不況の深刻化の影響で下振れしていたところへ、同時テロ事件の影響が追い打ちをかけ、先行き懸念が高まっている。テロの影響で、米国の景気後退局面入りが確定的となった。この結果、米国景気の回復頼みである日本にとって、不況の出口は再び遠のいた。弊社改定見通しでは、2001年度の日本経済は▲1.1%のマイナス成長、2002年度はゼロ成長と予測している。景気は2002年秋には方向としては上向きに転じようが、その後も浮揚力は乏しいだろう。 今や日本はデフレスパイラルの危機に陥っており、小泉内閣発足当時とは経済情勢が全く異なる。この結果、「構造改革の痛みは受け入れるが、マイナス成長にはしない」、「国債発行枠30兆円を今年度も守る」という以前示された基本方向がうやむやとなり、構造改革の基本理念がぐらついたまま放置されている。デフレスパイラルの危機下で、不良債権処理や財政支出削減を強行すれば、不必要な血が流れ、かえって構造改革が遅れてしまう。経済情勢を無視した「自虐的構造改革」に勝算はない。今はデフレからの脱却を最優先すべきであり、需要創出につながる施策に集中すべきだ。この観点から構造改革の実施手順を早急に再編成すべきである。

鉄鋼業界 -世界的な再編の動きが日本にも波及-

永井知美 産業経済調査部 産業アナリスト

 鉄鋼業界で再編の動きが相次いでいる。2000年8月に新日本製鐵と韓国・浦項綜合製鉄、2001年1月に同じく新日鉄と仏ユジノールが包括提携したのに続いて、2001年4月、NKKと川崎製鉄が経営統合で合意、高炉大手5社体制が32年ぶりに崩れることとなった。背景には、世界的な鉄鋼需要鈍化・市況悪化に加え、有力ユーザーである自動車業界の再編がある。設備過剰など日本の鉄鋼業界の抱える問題は多く、今後も再編の動きが続くとみられる。

世界一のIT先進国を目指すわが国の政策 -人材育成の強化が基本-

綾 敏彦 産業経済調査部 主幹

 低迷する経済を立て直す原動力として、政府や産業界は情報通信技術(IT)に強い期待を寄せており、「高度情報ネットワーク社会形成基本法(通称:IT基本法)」が制定された(2000.11成立、2001.1施行)。また、IT立国を21世紀の国際競争力開発の切り札とすることを目的として、昨年11月にIT戦略会議が打ち出した「IT基本戦略」では、5年以内に世界最先端のIT国家になるという壮大な目標を掲げた。そこでは、国民の情報リテラシーの向上とIT人材の育成が重要な鍵を握っている。

知っていますか?「デフレスパイラル」

 デフレスパイラルとは、物価下落と景気後退(需要減少)の悪循環が生じる状態のことです。「モノが売れない→値引きをする→まだ売れない→在庫が積み上がる→減産する→企業収益が悪化する→雇用調整・賃金抑制が進む→消費が一段と落ち込む」といった具合に、物価下落と需要減少の負の連鎖が進む現象です。らせん(spiral)状に落ちていくイメージから、このように言われます。

■マネジメント

Producing Globalization -「グローバリゼーション研究プロジェクト」に関する中間報告-

マサチューセッツ工科大学(MIT) 教授 スーザン・バーガー

 1989年にマサチューセッツ工科大学(MIT)から出版された『Made in America』を東レ経営研究所元代表取締役社長依田直也博士が中心となって東レ経営研究所が翻訳を担当しました。それ以来12年にわたり、東レ経営研究所はMITの調査について協力関係を築き、繊維産業に関する情報交流を行っています。『Made in America』では、繊維産業についてスザーン・バーガー教授がまとめられました。   本年6月下旬、同教授がMITの「グローバリゼーション研究プロジェクト」の一環として、現在の日本の産業を視察するため来日、東レ石川工場、丸和織物、小松精練、オンワード樫山を訪問され、日本の繊維産業に関する意見交換が行われました。ここでは、東レ本社で行われたバーガー教授の「グローバリゼーション研究プロジェクト」に関する中間報告のプレゼンテーションの概要を紹介します。

電子取引上のトラブル急増に対応する法改正 

弁護士 松崎 昇

第151通常国会で、これからの電子取引に備えた法改正が2件成立しました。 「不正競争防止法の一部改正法」と「電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法特例法」がそれです。 1. 不正競争防止法の一部改正法 (2001年末までに施行) (制定の背景) インターネットに接続されているコンピュータを識別するための名称をドメイン名といいます。「△△.○○.co.jp」というような形式で表示されます。

■人材

日米ビジネスマンの自己啓発についての考察 

武蔵大学 経済学部 教授 横田 絵里

 自己啓発に対する日米ビジネスマンの関心度はともに高い。しかしその関心の背景は大きく異なる。アメリカのビジネスマンにとっての自己啓発は、自分のキャリアアップのためのものである。自分の価値を最大限に高めるために何をすべきかという意識の高さは、会社の仕事に役立つ能力開発をめざす日本のビジネスマンの意識とは異なっているといえよう。

変革時代のリーダーシップ 

酒巻 洋行 人材開発部長

 世阿弥が風姿花伝において、「男時(おどき)、女時(めどき)」の表現で、時代にも勢いのある時と勢いのない時があるといっている。時代の価値観は絶えず変化している。ちょうどエンジンが、吸入、圧縮、爆発、排気のサイクルを繰り返しながら新しいエネルギーを生んでいくのと同じである。確かに時間的には21世紀になったが、世界は今閉塞感に覆われている。しかし次の飛躍への圧縮の期間でもある。

顔の見えるコラム 

増田 貴司

 昔から、「男の顔は履歴書だ」とよく言われる。リンカーンも「40歳になったら自分の顔に責任を持て」という言葉を残した。筆者は今41歳だ。だが、お前は自分の顔に自信がもてるかと問われると、残念ながらYESと即答できない。ご覧のとおり、最近の本誌は、本文記事のみならず本欄も執筆者の顔写真つきだ。読者から親近感をもたれるよう、「書き手の顔の見えるレポート」にしたいという編集サイドの意図は理解できるし、賛同もできる。だが、自分のことになると話は別だ。免許証の自分の写真も直視したくない筆者にとっては、本誌で自分の顔写真を見るのは耐え難い。

■統計

国内主要産業動向(鉱工業生産/卸売物価/消費者物価/貿易/原油/為替/百貨店/量販店/自動車/VTR/カラーTV/パソコン/半導体/住宅着工/機械受注/公共工事着工) 完全失業率(全体、性別)/完全失業率(年齢別)/有効求人倍率/完全失業率(地域別)

■TBRの広場

参加者募集「ナノテクノロジー戦略研究会」