close

2010年6月1日
技術で勝って事業で負けることは日本のものづくりの必然か
~大量普及と高収益を両立させるビジネスモデルとは~
シニアエコノミスト
福田 佳之

・DVDプレーヤーやDRAMメモリーなど日本生まれの製品が2000年代以降世界で大量に普及している。対照的に、これらの製品における日本企業の世界シェアは急速に低下している。 ・日本企業の競争力が低下した背景に、擦り合わせ型製品がモジュラー型に転換したことを受けて欧米と新興国企業がモジュラー型製品について国際分業したことが挙げられる。一方、日本企業は垂直統合型のために生産コストが相対的に高く、保有する多量の特許も攻勢をかける新興国企業への盾とならなかった。 ・DVDメディアでも日本勢は不利な立場に立たされているが、その中で唯一高収益を実現した企業が存在する。三菱化学メディアである。同社は色素材料や製造レシピ等を販売する製造プラットフォームビジネスを新興国企業に展開し、大量普及と収益拡大を達成した ・三菱化学メディアはDVDメディアの国際規格への自社技術の刷り込みに成功し、ブラックボックス化した色素材料などからビジネス全体をコンロトールする仕組みを作った。 ・インテルやノキアが強い理由は、バリューチェーンの特定階層のブラックボックス化と標準化を駆使したビジネスモデルを展開していることにある。さらに彼らはライバル企業の標準化の企てには徹底的に争い、決してライバル企業に技術の改版を許さない。このような知財マネジメントを実施している企業は日本では見当たらない。 ・日本企業は新興国企業と争うのではなく、そのパワーを活用するべきであり、そのためには、大量普及と収益拡大を図る仕掛けを作るソフトパワーを身につけるべきだ。 ・特に、部品・材料メーカーは特定階層の知的財産を独占しやすく、プラットフォームビジネスを展開しやすい立場にある。日本の部品・材料メーカーは今こそ受身姿勢から積極的なプラットフォームビジネスに転換すべき時ではないか。 ・末尾に小川紘一・東京大学特任教授へのインタビューを掲載した。

【キーワード】

擦り合わせ、モジュラー、フルセット垂直統合、マイコン、ファームウェア、国際標準、規模の経済、知財マネジメント、DVDメディア、AZO系色素、スタンパー、製造プラットフォーム、ブラックボックス、Write Strategy、互換性、チップセット、マザーボード、基地局、改版権、インターフェース、ソフトパワー、産業政策

PDF : TBR産業経済の論点 No.10-05(732KB)