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2012年1月5日
日本の強み再発見の年に
チーフエコノミスト
増田 貴司

 2012 年は日本独自の強みを意識し、それを生かして世界市場を開拓する日本企業の動き が活発になるだろう。  第1に、東日本大震災をきっかけに、人々が日本の強みを再発見した。困難な状況の中 でも秩序と礼節を守りつつ、自分の力で立ち上がろうとする強さを国民が自覚した。  第2に、世界で勝つためには日本独自の強みを活用するのが有効と気づいた。利益とは 他人と違うことに対して支払われる対価であるから、グローバル競争では「違い」をつく ることが重要だ。それには日本独自の強みを生かして差異化するのが近道である。  これを気づかせてくれたのが、日本のサービス業の海外展開だ。これまで内需型とされ てきた日本のサービス業が、「おもてなし」や「きめ細やかで丁寧」といった強みを武器に 続々と海外に進出し、成果をあげている。  第3に、アジア新興国市場でも品質への意識が高まりつつある。消費者の目が肥えたた め、「安かろう悪かろう」ではなく、ある程度の品質を備えた製品が求められるようになっ た。「品質ニッポン」のブランドや、高品質を生み出す日本の組織能力が新興国で高く評価 される時代が到来したことを意味する。  第4に、世界経済の変調は日本企業にとってはチャンスとなる。中国では不動産などの バブルの崩壊が懸念されるほか、間もなく少子高齢化が成長を圧迫し始める。欧州は財政 悪化と金融収縮、景気後退の悪循環にはまり、「日本化」しつつある。こうした中、日本は バブル崩壊後の信用収縮と長期デフレを経験済みの唯一の国だ。そうした厳しい環境下で も生き抜き、成長する術を身につけているのは世界で日本企業だけだ。  内向きの日本特殊論や自嘲気味の「ガラパゴス」論を超えて、日本独自の強みが前向き に語られる新年になることを切に願う。 (本稿は、2011 年 12 月 28 日 日本経済新聞夕刊「十字路」に掲載されました)