close

2001年9月1日
経営センサー9月号 2001 No.33

■経済・産業

骨太の方針で日本経済は再生できるか  -不必要な痛みは小さく、改革の進め方に工夫を-

高橋 健治  産業経済調査部長チーフ・エコノミスト

 6月に発表された「骨太の方針」は、7つの構造改革プログラムとともに、不良債権処理を優先、2~3年以内に解決することを目指している。このため、当面、日本経済は集中調整期間と位置づけている。しかし、景気が後退色を強めている現在、不良債権処理を急ぐことはリスクが大きい。また、処理をしても資金が成長分野に流れ、経済が立ち直る保証もない。このため、民営化、規制緩和、新産業創出など、雇用、需要面の構造対策を同時に進め、不良債権処理に伴う不必要な痛みをできるだけ小さくするよう工夫すべきである。

ロンドン便り 減速感増す欧州経済 

東レ株式会社 常務取締役 ヨーロッパ地区全般統括 葛馬 正男

地価下落をどう見るか  -グローバル化に伴う「土地の輸入」で国際価格にサヤ寄せ- 

増田貴司  産業経済調査部主任研究員シニアエコノミスト 

 日本の地価は、1990年代以降、約10年間下がり続けている。 過去、地価の上昇は経済成長ペースにほぼ見合っていたが、80年代後半に地価バブルが発生し、92年以降その是正が始まった。 しかし、今の地価下落はバブル崩壊とは関係のない、別の構造的な要因によるものだ。その要因とは、(1)土地神話の崩壊(地価上昇期待の消失)、(2)生産年齢人口減少による土地需要の減少、(3)グローバル化に伴い日本の地価が国際価格にサヤ寄せされつつあること、の3点である。特に(3)は重要だ。従来国内でしか作れなかった高付加価値製品の生産まで中国などアジアへの移転が可能になったことや、農産物の輸入が急増していることを背景に、土地の需要が減っている。いわば「土地の輸入」が始まったことで、土地が余り、地価が下がっているのである。 地価下落は少なくともあと2、3年は続こうが、今や地価を平均値で論じることの意味は乏しい。土地の価格の多極化、個別化が急速に進んでいるためである。 地価下落が続く以上、土地は保有しているだけでは価値を生まず、有効に利用して初めて価値が生まれる。土地の流動化を進め、有効活用を促進することが、日本経済再生の鍵である。

欧米小売業界  -大型化・グローバル化進展、日本進出も相次ぐ-

永井 知美 産業経済調査部 産業アナリスト

 米コストコ、仏カルフールなど欧米有力小売企業の日本参入が相次いでいる。日本の大手小売企業が消費不振、競争激化で業績が低迷しているのに対して、欧米有力小売企業は、優れた経営戦略を背景に大型化・グローバル化を進展させてきた。アメリカでは百貨店の地位低下の一方でディスカウントストアのウォルマートが躍進、ヨーロッパでは大手の寡占化が進展、有力企業が積極的に海外進出している。消費不振の日本に進出するのは、所得水準が高く魅力的な市場であるうえ、規制緩和、地価下落で参入が以前に比べ容易になっているためである。小売業は国際的な競争の時代を迎えている。

急ピッチで進むリサイクル社会形成に向けた法律・制度の整備  -個別リサイクル法を束ねる循環型社会形成推進基本法の制定- 

綾 敏彦 産業経済調査部 主幹

 地球温暖化問題の高まりや廃棄物対策の行き詰まり懸念を受けて、今やライフスタイルや経済活動を早急に見直し、資源の消費を抑制するとともに最大限に循環させる社会の実現が急務となっており、それに向けた法律・制度の整備が着々と進んでいる。2000年5月には、持続可能な社会の実現に向けて、環境政策の中核となる「循環型社会形成推進基本法(略称、循環基本法)」が制定された。この基本法は、わが国の廃棄物対策およびリサイクル対策の両輪を総合的に推進することを目的としており、7つのリサイクル関連法を束ねる理念法の役割を果たしている。個別のリサイクル法を管轄する各省では、リサイクル過程の経済性を確保すべく様々な優遇・支援措置を設けて静脈産業の育成に積極的に取り組んでいる。

知っていますか?「プライマリーバランス」 -公債費を除いた歳出と公債金収入以外の歳入の収支-

 小泉首相は、財政健全化策として、2002年度の国債の新規発行額を30兆円以下とすることを目指していますが、中期的な財政運営目標としては、プライマリーバランスの均衡を目指す方針を掲げています。 プライマリーバランスの均衡とは一体どういうことなのでしょうか。

■マネジメント

ナレッジ・アセスメントの活用事例  -企業革新を生み続ける「活力ある個」による新しい価値創造を 

富士ゼロックス株式会社 KDIグループ長 木川田 一榮 

動きはじめた企業年金の構造改革  -新企業年金2法の成立とその影響- 

東レ厚生年金基金 常務理事 入谷 隆治

 閉会を目前にした第151回通常国会で、企業年金にかかわる2つの新たな法案が成立した。「確定給付企業年金法」と「確定拠出年金法」、このよく似た名前をもつ2つの新法の成立が企業年金にどのような影響を与え、また各企業がどのような対応を図ろうとするのか。本稿では「確定給付企業年金法」の内容を中心にそのポイントを整理し、あわせて企業年金の現場を預かる立場から、今後企業が取り組む課題について探ってみたい。

情報公開法の施行  -「第三者情報」に関する企業の留意点とは何か- 

弁護士 松崎 昇

情報公開法*1の施行(第三者情報の情報源として)  平成11年5月7日に成立した情報公開法が、それから2年弱の準備期間を経て本年4月1日から施行されました。既に、都道府県、市などの情報公開条例により、大多数の地方公共団体の行政情報については公開が進んでいるとはいえ、国の行政情報について公開が義務づけられたことには大きな意義があります。  ここでは紙数が限られているので、情報公開法にもとづいて入手できる情報のうち、行政機関が第三者(個人・企業等)から取得した情報(以下「第三者情報」と呼びます。)に関して、企業が留意すべき点を考えてみます。

■人材

e-ラーニングが企業研修を変える!

守村 太郎 人材開発部 研究員

 ここ数年の、インターネットを中心とした情報技術の飛躍的な進化(IT革命)により、教育・人材育成の分野もITを活用した仕組みが開発・導入され始め、「e-ラーニング」として急速に普及し始めた。 今回は、「e-ラーニング」のメリットを、利便性、コスト面だけでなく、企業文化に与える影響なども含め、多面的に考えてみた。

今注目されるファミリー・フレンドリー企業 -ベネッセコーポレーションの事例に学ぶ- 

川畑 由美 人材開発部 研究員

1.今注目されるファミリー・フレンドリー企業 1999年、ベネッセコーポレーションは第1回ファミリー・フレンドリー企業 労働大臣優良賞を受賞した。 「ファミリー・フレンドリー」とは日本では耳慣れない言葉であるが、欧米では80年代から急速に広がってきた概念である。大まかにいえば「育児や介護など労働者の家族的責任に配慮すること」「仕事の事情を常に優先させるのではなく、仕事と家庭の事情の折り合いをつける」といった意味を持つ。

ロマンのある町おこし 

土谷 晴子

 北イタリアのトレンティーノとヴェネト州の間に、小さな8つの村からなる人口1万人に満たないプリミエーロ町(広域自治体)があります。この地は風光明媚なビレッジであり、古い時代は交易の街として、ドロミテ・アルプス探訪の地として栄えた、アルプスとイタリアの境界の地でありました。その小さな町が、1996年イギリスのエリザベス女王とフィリップ殿下がある企画のため訪れられるという栄誉に服しました。

■統計

国内主要産業動向(鉱工業生産/卸売物価/消費者物価/貿易/原油/為替/百貨店/量販店/自動車/VTR/カラーTV/パソコン/半導体/住宅着工/機械受注/公共工事着工 完全失業率(全体、性別)/完全失業率(年齢別)/有効求人倍率/完全失業率(求職理由別)

■TBRの広場

東レ経営研究所2001年度特別講演会/第51回科学講演会のご案内