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2009年11月1日
繊維トレンド11・12月号 2009 No.79

■特別レポート

香港:知識集約型ファッションビジネスへの転換

中国上海東華大学服装学院教授 東レ経営研究所客員教授 楊以雄 中国上海東華大学服装学院 孫駸駸 鹿児島国際大学経済学部地域創生学科准教授 東レ経営研究所客員教授 康上賢淑

香港の繊維産業はもともと中国大陸から移転された綿紡織企業からスタートした。移転された企業は宝星紡織、怡生紗厰、会徳豊紡織、聯泰紗厰、東南紡織、新華紗厰、金星紡織など7社もあり、それに対して、香港地元の紡織企業は1947年大南紡織がわずか5,000錘で起業したのが始まりで、翌年には半島紗厰(後に香港紡織と名称変更)、偉倫紡織、南洋紡織、九竜紡織工業、南海紡織が相次いで創業した。このように戦前の香港の紡織産業は、台湾と同様、「皆無」に等しかった。ところが、戦後数十年間、元来労働集約型であった同産業は香港の基軸産業として大きな役割を果たすようになり、今日では、既に素材型の紡織業から知識集約型ファッションビジネス、アパレルビジネスへと大きく転換している。本稿では、その変化を下記の6つのコラムに分けて分析し、その転換の要因と結果を明らかにしたい。 

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■海外動向

アジア主要国の繊維品輸出動向

日本化学繊維協会業務調査グループ主任部員 鍵山博哉

【要点(Point)】
(1)2008 年後半の世界同時金融危機の影響から、アジア諸国の繊維品輸出は、2008年はおおむね伸び悩み、2009年に入ると軒並み前年実績割れとなっている。
(2)世界の主要な輸入市場である欧米では、供給国としてアジアがそのシェアを急速に高めたが、中でも中国への集中が進む一方、韓国、台湾、アセアン先進国などの中高コスト国から、ベトナム、バングラデシュなど低コスト国へのシフトが見られる。
(3)アジア域内の繊維貿易は近年着実に拡大している。今後、アジア域内の経済連携の動きが進むことで、繊維貿易フローの変化が予想される。

産権交易所を活用した中国市場戦略

坂口昌章客員研究員 有限会社シナジープランニング 代表取締役

【要点(Point)】
(1)中国の産権交易所は、物権・債権・株権・知的所有権など各種の財産権を扱う機関である。年々取扱量が増えており、広域化と統一化、専門化が進んでいる。
(2)2009年に、新たにメディア、芸術、エンターテイメント等の文化産業関連サービス機関として「上海文化産権交易所」が創設され、日中経済総合研究所内に日本事務所を設置した。
(3)産権交易所の活用により、日本企業は中国に現地法人を設置し、自らビジネス展開を行う以外にも、ビジネスの権利を譲渡するという方法が考えられるようになった。特に、日本に蓄積された情報、ノウハウ、コンテンツを中国語圏でビジネス展開することは大きなビジネスチャンスとなる。
(4)中国の非上場、非公開の株式市場は試行段階であり、新三板市場(店頭株式市場)と産権交易所のそれぞれがその役割を担っている。産権交易所の機能を活用することで、これまで難しかった中国での資金調達にも新たな道が開かれたと言えよう。

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China News 日中企業家フォーラム イン 南京

横川美都研究員

2009年8月5日から3日間、南京にて「中日企業家論壇 中日企業家フォーラム」が開催されました。上海から“動車”と呼ばれる高速電車で2時間弱、中国の知り合いも住んでおり以前から「遊びにいらっしゃい」と言われながら、なんとなく足を運ぶことがなかった南京でのフォーラム。声をかけてくださった北京でお世話になっている会社社長に「旅費も宿泊費もすべて主催者側が負担するし、またとない機会だからぜひ参加してみなさい」と勧められたこともあり、参加させていただくことにしました。 今回は、人民日報傘下の経済新聞『国際金融報』と江蘇省江寧区人民政府の主催で開催された本フォーラムについて報告します。

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ヨーロッパのファッション情報

デザイナー 小川健一

世界的にファッション業界の不況が続くなか、デザイナーの発信する商品や店頭の商品と、消費者の求めるものとの乖離が指摘されて久しいが、その影響はファッションの手引きであるファッション雑誌にも、価格の下方改定という形で見受けられる。一方で、消費者の変化に合わせることで、生き残りを図る企業もある。今回は、ミラノコレクション前後を中心に、ヨーロッパのファッション動向を紹介する。

『ファッションは西洋から』という概念を打ち破る欧米のアジア系デザイナー達

ニューヨーク州立ファッション工科大学 准教授 川村由仁夜

これまで、「ファッションは西洋から」という概念が一般的であったが、近年その壁を越えるアジア系などのデザイナーの活躍が目覚しい。今回は、非西洋各国のデザイナーの活躍と、今後の課題について紹介する。

■国内動向

シリーズ 日本ファッションアパレルの課題と今後の展開 第5回 ミラノ“プレタポルテ”コレクションに至るスティリスタのクリエーション

信州大学名誉教授 繊維学部特任教授 大谷毅

【要点(Point)】
(1)“プレタポルテ”事業を行うミラノ・パリのラグジュアリブランド・メゾンには、アトリエ部門に優越するストディオ部門があり、次期製品のデザインの一切の統括に関してスティリスタ(英語で言うクリエーティブディレクター)が全権限を持っている。
(2)スティリスタは周囲にアシスタントデザイナーを置き資料収集や調査・描画活動をさせ、スティリスタ自身のクリエーションが枯渇しないための装置をもっている。
(3)クリエーションは“プレタポルテ”製品設計の原点すなわち1 次設計であり、次期コレクションに留めるべき感覚的外形を見出すために必要な、インスピレーションを獲得するための作業である。
一般の製造の研究開発費に相当するクリエーションコストは、上代を通じて顧客に転嫁される範囲にとどめなければならない。
(4)スティリスタはインスピレーションによりターゲット顧客の製品着用時のシルエットを想定する。
その製品設計は段階的に詳細になるが、製造に必要な情報のすべてをあらかじめ設計図で描くことはあえてしない。
(5)スティリスタの描いた1次設計通りに最終製品になり、購入した顧客がスティリスタが描いたシルエットを再現し、結果的に満足すること・・・。スティリスタのインスピレーションが顧客の再現するシルエットに結びつく確からしさが、メゾンのブランド価値・good-will である。

内外テキスタイル景気の問題点と来年の見通し -鈍い需要回復、サバイバル競争激化にどう対処するか-

小山英之特別研究員

【要点(Point)】
(1)今回の世界テキスタイル不況は、循環不況でスタートし、昨年秋から今春にかけて需要が急速に縮小、各国業界は一斉に大幅減産と価格ダウンによる採算の悪化を余儀なくされた。しかし、今年の4月以降、各国間の稼働状況に差が生じ、例えば中国業界は、輸出の不振を内需用縫製生地の好調でカバーし、若干の生産回復の傾向が表れたのに対して、日本の繊維産地は世界の中で最も深刻な減産に陥っている。
(2)来年の世界テキスタイル景気は、世界経済の持ち直しを背景に穏やかな回復を示すものの、サバイバル競争の激化等の構造不況要因が強まり、国際競争力の強弱によって各国間の景況に一段の格差が拡がるであろう。日本のテキスタイル業界は、内需の消費低迷及び低価格志向が継続し、川下アパレル・小売業界の衣料品需給の悪化も加わって、L字型の底這いの低空飛行を余儀なくされよう。
(3)以上のような状況から、内外のテキスタイル業界の本格的景気回復は、2011年に持ち越される公算が強く、我々は単純に一般経済の景気回復を待ち焦がれることなく、自らの抜本的な経営改革努力によって採算をキープし、この苦難を乗り越えなければならない。この嵐を克服した暁には、かなり見通しの良い状況が見えてくるであろう。

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シリーズ 高コスト先進国における企業生き残りのKey Factor - 第12回 衣料品専門店業態の動的内部変化とバリュー・イノベーター-

青山学院大学 経営学部 准教授 東伸一

【要点(Point)】
(1)特定の小売ビジネスモデルや小売ミックスのデザインが普及し、社会的な共通認識がそれらに対して形成されることで業態カテゴリーが生成する。
(2)しかし、業態カテゴリーは類型化のための静的コンセプトであると同時に、変化するタスク環境のもとで事業を繰り広げる小売企業の戦略を強く反映するため、確立した業態カテゴリーであってもその内部に、フロントエンドあるいはバックヤード、更には双方の編成様式において新たな形態をとる革新者が登場する。これら革新者によって業態内部にダイナミズムがもたらされたり、新たな業態が萌芽したりする。
(3)業態内部のダイナミズムが最も顕著に認められるもののひとつが、衣料品専門店チェーン小売企業である。
これらの企業のうち、明確な店舗コンセプトと広く深い品揃えに価格訴求力を備えた企業は、バリュー・イノベーターとして市場内でのプレゼンスを高めている。
(4)スペインを本国市場とするインディテクス社は、世界市場における衣料品専門店チェーンの代表的バリュー・イノベーターである。マーケティング思考とは縁遠かった製造企業が、ある事件をきっかけにマーケティングを導入し、そこから世界有数の小売企業へと成長してゆくプロセスにおいては、同社の卓越した垂直型マーケティング・システムの構築による貢献が大きかったと考えられる。しかしながら、同 時に同社の成長は、企業要因、マネジメント要因、更には環境要因が経路依存的に相互作用していたことの影響を強く受けていることも事実である。

環境低負荷型染色加工技術の着眼点V

森本技術士事務所 技術士(繊維) 森本國宏

 

【要点(Point)】
(1)染色加工事業所での排水処理設備は、40年前の「水質汚濁法」制定後年々規制が厳しくなっており、そのために追加的処置がとられている。更に原料の織編物にも多くの変化があった。特に昨今の弾性糸使用素材では、多くの合成糊剤や、油剤が使用され、それに伴う排水処理が困難をきたしており、その対応へのポイントを示唆する。
(2)公共下水道の普及により染色加工事業所も、下水道放流に切替が進んでいるが、自社処理よりコスト高になる。節水と同時に排水の再利用法が求められる時代になっている。排水のMBR による再生水技術を紹介する。

世界市場におけるファストファッションの位置付けと出店規模別分類

東京ファッションプランニング株式会社 デザイン・企画カンパニー 社長 山田桂子

 東レセハン株式会社から、不織布に関する今後の市場展開について、レポートをいただきましたので、ここでご紹介します。

【要点(Point)】
(1)今やファストファッションは、ラグジュアリーブランドを凌ぐ売上高と店舗網を確立している。
(2)Inditex、GAP、H&M の3 社は売上規模1兆円超。ユニクロは「2020年、5兆円目標、4,000店」を掲げ、トップ企業への道を進もうとしている。
(3)日本未上陸のファストファッション企業の中に、まだまだ有力な企業がある。特に、アメリカ発、イギリス発に注目。

■新市場・新製品・新技術動向

クロスプラス「エコマルシェ」 - GMS を主戦場とするエコロジーブランド-

フリージャーナリスト 土井弘美

【要点(Point)】
(1)「エコマルシェ」はエコデザイナーとしての第一人者である岡正子氏のディレクションによるもので、クロスプラスが今春夏シーズンから立ち上げた。
(2)販売チャネルはGMS。オーガニックコットンを中心素材としてまとめ、ディテールにも凝った商品に仕上げている。
(3)ただし、モノづくりにこだわった分若干価格帯が上がり、売上的には厳しい局面を迎えており、現在は来春夏を目指して再構築中。
(4)クロスプラスは、この9月より百貨店に進出、新たな販路を開拓しつつある。

■知りたかった繊維ビジネスのキーポイント

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坂口昌章客員研究員 有限会社シナジープランニング 代表取締役

■統計・資料

主要商品市況

1.原油 2.ナフサ 3.PTA 4.EG 5.カプロラクタム 6.アクリロニトリル 7.ナイロンフィラメント、同織物 8.ポリエステルフィラメント、同織物 9.ポリエステルステープル 10.アクリルステープル、同紡績糸 11.綿花 12.ポリエステル綿混(T/C)紡績糸及び織物