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2011年2月1日
繊維トレンド1・2月号 2011 No.86

■全般

第1回 日中韓繊維産業協力会議について

繊維調査部

 昨年2010 年11 月26 日、横浜ロイヤルパークホテルにおいて、標記第1 回 日中韓繊維産業協力会議が開催された。  これまで日本繊維産業連盟は、中国紡織工業協会との「日中繊維産業発展・協力会議」、韓国繊維産業聯合会との「日韓繊産連年次合同会議」を個別に開催してきたが、ここ数年の貿易自由化に向けた動きや環境変化など、三カ国に共通する課題が明確になってきたことを受けて、今回初めて三カ国間で開催したもの。

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■ファイバー/テキスタイル

上期の市況を読む  - 2010 年の回顧と2011 年の展望-

繊維調査部 特別研究員 繊維産業アナリスト  向川 利和

【要点(Point)】
(1)リーマンショック後の世界経済は大きく変化し、先進国のデフレ・新興国のバブルという2 極化が鮮明になっている。先進国は、昨年後半からの減速がはっきりしてきたが、中国など新興国は順調な成長が続く見通しだ。
(2)“アジアがけん引する世界経済” に変化はない。中国とインドは引き続き元気だし、タイは政情不安を乗り越え再び成長軌道に乗った。インドネシアも黄金の5 年間が始まると強気の経済見通しを発表した。台湾産業界も中国に接近し、「CHIWAN」旋風の予兆すらするし、日本がすくむ中、韓国は駆ける。
(3)繊維市況は、国際商品全面高の中で、歴史的な高値圏で動いている。リーマンショック、欧州金融不安と続いた波乱の中で発生した超金融緩和とドル安を受けて、商品相場は「過剰流動性相場」の世界に入った。

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北陸座談会 - 長繊維織物業界の現状と2011 年の見通し-

出席者: 社団法人福井県繊維卸商協会  専務理事 河野 喜澄 氏 ケイテー株式会社  代表取締役社長 荒井 由泰 氏 株式会社カツクラ  代表取締役社長 勝倉 雅己 氏 松文産業株式会社  代表取締役社長 小泉 信太郎 氏 熊澤商事株式会社  代表取締役社長 熊澤 喜八郎 氏 司会:東レ経営研究所  繊維調査部長 足立 敏樹

 北陸産地の織物業界は、生産統計が示すとおり、スポーツ・アウトドア分野向けナイロン長繊維織物が先行し、少し遅れて同分野向けポリエステル長繊維織物が持ち直し、続いてアセテート織物を含む婦人衣料向けも前年比増産基調に入った。  織物工場は現状の生産設備に対して久々にフル稼働に近い水準にある。また、撚糸やサイジング業界のスペースも満杯であり、期近の発注を受けても対応できない状況にある。     一方、アパレル等先からの発注が更に超期近や小ロット多品種オーダーになっていることもあって、生産コストは上がっているものの、単価面では依然厳しい。更に円高問題もあって、韓国やインドネシア等のテキスタイルが輸出市場において価格優位に立つなど先行き予断を許さない状況にある。  そこで今回は、《(1)》産地の現状、《(2)》産地が抱える問題点、課題、《(3)》来期以降の見通しについて、福井産地を代表する方々に解説いただいた。

ドメスティックからグローバルへのビジネス転換 -ジャパンクリエーションとジャパンテックスを考える-

客員研究員 有限会社シナジープランニング 代表取締役 坂口 昌章

【要点(Point)】
(1)展示会には、求評会タイプと見本市タイプがあり、それぞれ目的と内容が異なっている。かつての日本の繊維流通では問屋が流通をコントロールしていたため、見本市は存在しなかった。海外の見本市が一物一価であるのに対し、日本の問屋流通では一物多価が基本である。
(2)日本の狭い業界間では、企業を訴求する必要はなく、商品のみを簡易なブースで展示することは必ずしも企業イメージダウンにはつながらない。一方、海外見本市では、ブースの演出は即企業イメージに直結する。
(3)ジャパンクリエーションが初めて開催された時には、全国の産地メーカーが一堂に会するだけでサプライズだった。欧州の展示会では、サプライズを継続するために、トレンド情報発信を絶えず行っている。展示会にサプライズがなくなると魅力もなくなり衰退が始まる。
(4)企業の情報発信は、WEB サイトの普及に伴い、質量共に拡大しているが、日本企業の多くは情報発信の対象として海外企業を想定していない。業界マスコミや評論家がランキング等を行わないため、格付けもなされず、海外のバイヤーから見ると、日本にはどこに何があるか分からない混沌とした状態となっている。
(5)ビジネスとは、コミュニケーションを基盤に行われる経済行為であり、グローバルビジネスとは言語も文化も異なる相手とのコミュニケーションが基本になっている。多くの日本企業は精神的に鎖国状態であり、ビジネスの前提となるコミュニケーションを取るのが苦手である。展示会もコミュニケーションという視点で見直す必要がある。

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■縫製/アパレル

バングラデシュ・カンボジア縫製業の現状と課題(前編)

日本貿易振興機構アジア経済研究所 貧困削減・社会開発研究グループ 明日山 陽子 日本貿易振興機構アジア経済研究所  アフリカ研究グループ 福西 隆弘 日本貿易振興機構アジア経済研究所  貧困削減・社会開発研究グループ長 山形 辰史

【要点(Point)】
(1)バングラデシュとカンボジアは若い低所得国である。縫製業はそれぞれ、1980 年代、1990 年代に、欧米向け輸出にけん引されて始まった。
(2)発展のきっかけは、MFA で欧米諸国から輸出クオータをかけられた東アジア縫製企業の進出であった。しかし、両国にもクオータがかけられるようになった後も発展は続いた。
(3)2005 年にMFA が撤廃され、自由競争体制に移行した後も欧米への輸出を中心に、両国縫製業は成長を続けている

シリーズ 日本ファッションアパレルの課題と今後の展開 第12 回 国際化に向けた日本のファッションビジネスの経営問題 

信州大学 名誉教授 繊維学部 特任教授 大谷 毅

【要点(Point)】
(1)たとえば、東京銀座のパリ・ミラノラグジュアリブランド店で高額シルク製品が売れる一方で、日本のシルクの蚕糸絹業金融支援を「きもの」に限定する。シルクが典型的国際商品ゆえにそうなるのであろうか。
(2)日本人ゆえにパリ・ミラノのクチュールメゾン事業に進出できないというのは誤りで、ラグジュアリブランド事業は人種を問わない。ただしクリエイションとそれを市場でカネにするノウハウが必要になる。
(3)ファストファッション事業では、短いリードタイムで設計製造販売を行う一方、生産数量確保のため、グローバル事情での多店舗展開・チェーンオペレーションが必要になる。
(4)グローバルな市場では、品質への要求は地域や国で異なり、日本の基準が世界で通用するわけではない。日本の品質基準が自由な発想を妨げることもある。また、過剰品質、不要品質となる。
(5)日本の商社は糸へん出身が多いが、いまや子会社・関係会社群のポートフォリオ経営であり、具体的な取引への関心が薄く投資銀行化するゆえに、日本のファッションの国際化にはなじまない。よって初心に返り、製造業者が自ら国際行商を進める必要がある。
(6)ファストファッションの事業では売上は円換算で兆に乗せる規模にあるにもかかわらず、設計製造販売の短サイクルを維持、スピードをいのちとする。大規模企業官僚制特有の逆機能の除去という視点なしにそのマネジメントの核心は解明できない。日本のファッションビジネス事業者にもっとも参考になる部分かもしれない。なお、本稿のベースとなった議論の詳細は、http://gtmb.shinshu-u.ac.jp に掲載する予定である。

■小売/消費市場

2010 年の米繊維・アパレル業界を振り返って

英字ファッション情報誌「NY Street Fashion: Multicultural Fashion & Lifestyle Magazine」 シニアエディター マヤ・カワムラ

【要点(Point)】
(1)2010 年にオバマ政権が「国家輸出戦略(National Export Initiative)」を立ち上げ、設置された輸出促進閣僚会議(Export Promotion Cabinet)には、国務長官、農務長官、労働長官、商務長官、貿易通商代表、中小企業庁長官、輸出入銀行頭取等がメンバーに入っている。
(2)グローバル社会の中でのアメリカの対外貿易政策の協議は、環太平洋戦略的経済連携協定(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement)の枠内での話し合いと同時に、米繊維アパレル業者はベトナムや中国に焦点を当てている。米商務省が輸入製品に特別関税を課する法案(H.R.2378 案)が下院で可決した。
(3)米繊維アパレル産業は中小企業が多く、大企業の輸入に圧倒され、政府に依存せねば生き残れないことを認識。それらの中小企業を積極的に援助する目的で、米通商代表部は既に繊維担当部署を設置し対応に当たっている。

シリーズ 高コスト先進国における企業生き残りのKey Factor

第13 回 垂直統合型衣料品専門店チェーン小売商をめぐる認識と実在 I -背景編- 青山学院大学 経営学部 マーケティング学科 准教授 香港城市大学 商學院 客員准教授 東 伸一

【要点(Point)】
(1)現代の小売流通の成長セクターである衣料品専門店の主要プレイヤーの間では、垂直統合型オペレーションと積極的な国際化が顕著になっている。
(2)それら衣料品専門店チェーン小売商全般に対する俗称になっているのがSPA という用語である。
(3)日本で広く普及しているSPA という用語であるが、海外では同じような意味で用いられることはない。また、SPA 概念の曖昧性によって、大まかにいって3 つの問題が生じている。
(4)ひとくちにSPA として単純化して理解されることの多い衣料品専門店チェーン小売商の個別事例に目を向けると、垂直統合化の目的は共通であるが、そこに至るための機能編成の在り方は大きく異なっている。

ガールズイベント

東京ファッションプランニング株式会社 デザイン・企画カンパニー 社長 山田 桂子

【要点(Point)】
(1)ガールズイベントとして軌道に乗っているのは、神戸コレクション、東京ガールズコレクション、原宿スタイルコレクション、福岡アジアコレクション、ガールズアワードの5 つとなっている。
(2)ガールズ= 20 代女性にとってガールズイベントは、「オシャレを楽しむ」インドア派のためのイベントとなっている。
(3)ガールズイベントは、ファッションをうたうイベントでありながら、人気ブランドのラインアップは重視されていない。

■知りたかった繊維ビジネスのキーポイント

機能性繊維素材の国際標準化

日本化学繊維協会 技術グループ  竹内 康晃

《国際標準化の意義》  2009 年度に経済産業省が設置した「今後の繊維・ファッション産業のあり方に関する研究会」において、様々な日本の繊維産業の方向性が示されたが、その中に国際標準化の推進が挙げられている。  日本の繊維産業は世界に誇る高い技術力を有しており、特に、高機能繊維に関しては日本国内だけでなく、国際的な競争力を維持してきたが、リーマンショック後の消費低迷が長期化する厳しい経済環境の中で、低価格の海外品との競争に打ち勝つためには、消費者・ユーザー業界におけるニーズの把握と、そのニーズに沿った素材の快適性・高機能性の積極的なアピールが重要である。

■統計・資料

I.日本の合繊各社の主要海外繊維生産拠点リスト(2011 年1 月)

東レ/帝人/旭化成/三菱レイヨン/東洋紡/ユニチカ/セーレン/東邦テナックス

II.日本の紡績各社の主要海外繊維生産拠点リスト(2011 年1 月)

日本/韓国/台湾/アメリカ/中国/インドネシア/タイ/インド

ダイワボウ/シキボウ/クラボウ/ニッケ/日清紡/近藤紡績所/トーア紡コーポレーション