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2005年7月1日
繊維トレンド7・8月号 2005 No.53

■海外動向

アジア諸国の繊維品貿易動向

日本化学繊維協会 業務調査グループ 主任  鍵山 博哉

1. 2004年のアジア主要国の繊維品輸出をみると、中国は大幅に輸出を拡大。ポストATCにおける一人勝ちを予想させる伸びである。 2. 韓国、台湾は中国向け輸出の伸び悩みに加え、第3国市場での中国との競合で厳しい環境となった。 3. タイ、インドネシアは主力の欧米向けが堅調に推移し、前年実績を上回った。ただし、2005年以降は欧米市場における中国との競合が懸念材料である。 4. 東アジア域内の繊維貿易フローをみると、中国の絡んだ貿易が大幅に増加する一方で中国以外の貿易フローは縮小している。アジアの繊維貿易における中国の重要性が一層高まっており、今後、東アジアにおいては中国との貿易関係が需要なファクターとなろう。

国際的マネジメントシステム導入による経営 CMS2000システムを導入した株式会社ダイドーリミテッドの事例

坂口 昌章   客員研究員 有限会社シナジープランニング 代表取締役

1. 繊維産業は歴史的に見ると、川上の紡績業などからアパレル、小売業へと主役が移行している。ダイドーリミテッドも、川上からスタートし、アパレル製造卸を経て、商品企画、生産、販売まで一貫して行うSPA業態を目指した。 2. イギリスの紡績技術を導入し発展した日本の紡績業も、人件費の高騰や為替の変化により、次々と生産拠点を海外に移転した。ダイドーリミテッドでは、メイド・バイ・ダイドーを目指し、中国で技術を継承するために全面的に生産部門を中国に移転した。 3. 「どの国で作るか」から「どの企業で作るか」という時代に変化すると、企業の客観的な評価、格付けが必要になる。ダイドーリミテッドでは、品質、環境、社会的責任、安全・衛生・健康をトータルにマネジメントする「CSM2000システム」導入に取り組み、成果を挙げた。 4. 国際標準規格は対外的に自社をアピールする要素が強いが、社内的にも業務の文書化、マニュアル化が進み、日本人と中国人が同じ価値観を持てるようになるという効果がある。日本特有の暗黙知は海外や若い世代には通用しない。異文化コミュニケーションという意味でも、国際標準規格の導入は意義がある。

日中比較に見る中国の会社制度と経営リスクマネジメント

税理士法人中央青山  簗瀬 正人

【要点(Point)】
(1)中国会社制度の特徴:董事会への権限集中と少数持分者(中国側)への過度の保護
(2)外資企業事業規制:許認可主義による事業範囲、経営の制約
(3)その他の諸規制:外国為替管理、通関他

下期の市況を読む -原油高、きしむ合繊・糸・わた価格-

向川 利和 特別研究員 繊維産業アナリスト

【要点(Point)】
(1)下期の世界経済は減速する見通しが強い。牽引役の中国は昨年の9.5%から今年8.5%へ、アメリカも段階的利上げで巡航速度(昨年4.4%から今年3.9%へ)に減速する。BRICs全体は高成長だが、個々には問題含み。
(2)繊維市況は原油高で、合繊原料とファイバー価格にきしみが出ている。アジア市場全域で供給過剰感の強いポリエステルは、市況の改善が進まない。とりわけ、合繊の一大市場であった中国が「自給化を達成しつつある」ため大きな買い手でなくなったことが、アジア市場全体の合繊需給緩和を定着させたことが大きい。
(3)中国での設備増強が続く石油化学など他の素材も、いずれ供給過剰に転じ合繊と同じ道を辿る可能性がある。

シリーズ「ファッション・リテイリングの最新動向」 第6回 米国市場における新たな消費階級分化

株式会社小島ファッションマーケティング 代表取締役 小島 健輔

 100年に一度の世界同時不況の中、単価の安さなどからアクセサリー(服飾雑貨)の重要性が見直されている。ここではニューヨークで開催されるレディースアクセサリーの見本市展示会Accessories TheShow について、現地でファッション情報誌のエディターを務めるカワムラ氏にご紹介いただく。

【要点(Point)】
(1)今、米国市場では80年代を上回る好況の下、貧富と感性の2重の階層分化(二極化)が進行している。
(2)階層の二極分化に伴い、高級百貨店と、低所得者向けのダラーストアが急伸している。
(3)中産階級の崩壊とともに、中級~大衆デパートメントストアがこの4年間で業績を6掛近く落としている。
(4)消費スタイルの階層分化は、価格面だけでなく感性面の二極化を促している。

マルコポーロ賞受賞記念論文 第1回 今 再び注目されるイタリア・ビジネスモデル

小林 元 特別研究員 繊維産業アナリスト

【要点(Point)】
(1)日本の繊維産地の再生のモデルとして、今再びイタリアモデルが取り上げられている。
(2)それには以下のような理由がある。
・ イタリアモデルが生まれた背景には、1960年代ヨーロッパ市場で起こっていた消費者が個性的なモノを求めるという変化があり、これと同じようなことが、今日本市場で起こっている。
・ そうした市場の変化に対応するために彼らは、多品種中量産型の高級既製服(プレタポルテ)のビジネスモデルを作り上げたが、このモデルこそ今日本の産地が目指すべきものである。
・ イタリアのモノ作りは、地方産地の伝統文化に根ざしている。地方の再生が叫ばれ、日本の伝統文化にもとづくジャパンブランドをかかげたモノ作りの必要性がいわれる今、イタリアのビジネスモデルから学ぶことは多い。

■国内動向

アパレルと環境配慮 -不要衣料品は可燃ごみから脱出できるか-

ファイバーリサイクル研究会 代表幹事 木田 豊

1. アパレルの使用済み廃棄量は、年間100万トンを超え量的に家電4品種よりも多いが、アパレル・リサイクルの着手進展は遅々としている。 2. リユース、リサイクル率は約10%で大部分は焼却されている。今年は「京都議定書」が発効、CO?削減の観点からもアパレル・リサイクルを見直す必要がある。 3. アパレル製品の輸入浸透率が90%に達した現在、国内製品だけを対象としたルールではなく、国際的に通用するアパレル・リサイクルのグローバルスタンダードを作り出しジャパンクオリティとして日本から発信すればアパレルの国際競争力強化にもなる。 4. リサイクルし易い商品といえど、ファッション的にも満足できる商品でなければならない。このため従来感性面に重きをおかれた専門職の人材育成にも環境啓発教育が必要である。 5. 小規模ではあるが、先進事例がありアパレル製品のリサイクルアップは不可能ではない。可燃ごみからの脱出を図り業界の存在感を高めたい。

生活価値観消費学 -年代・世代を超えて、生活価値観で生活者を区分する-

伊藤忠ファッションシステム株式会社 情報フォーラムチーム チーム長  小原 直花

● 情報が多岐に亘る現在は年代・世代を超えた生活価値観で生活者を区分することもひとつの切り口になってくる。 ● 生活価値観を把握することは、生活者のニーズを掴み、消費の目的意識の背景を知ることにつながる。 ● 『正統な誇り高き自信家』『自分中心的努力家』『まっとう良識人』『楽観的マイウェイ派』の特徴を知ることで、アプローチ方法の違いが見えてくる。

■新製品・新技術動向

ナノテクノロジーによる繊維加工技術”ナノマトリックス” 

東レ株式会社 繊維加工技術部 部長 丁野 良助  東レ株式会社 繊維加工技術部 商品開拓室 室長 桑原 厚司  東レ株式会社 テキステイル開発センター加工技術開発室主任部員 関 昌夫

1. 「自己組織化」という現象に着目し、単繊維1本1本を機能性材料で被覆する"ナノマトリックスR"加工技術を開発した。 2. この技術を適用した新製品として、"ルージュオフR"、"アンチポランR"NTを上市した。

■知りたかった繊維ビジネスのキーワード

ブランド ~その本音とビジネス戦略~

坂口 昌章  有限会社シナジープランニング 代表取締役

 ファッション以外の分野でもブランドが注目されている。企業名そのものがブランドとして認知されるコーポレートブランドである。コーポレートブランドが認知されることにより、株価が上がるなど企業の資産価値が上がる。ファッション分野のブランド商品も企業名とブランド名が等しいケースが多い。しかし、ファッションブランドの場合は、単に企業イメージの問題ではなく、ブランド商品を購入する消費者心理に強く作用する。

■統計・資料

主要商品市況 

 I.主要短繊維糸・織物の相手国別輸出入統計   II.主要長繊維糸・織物の相手国別輸出入統計