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2011年8月1日
繊維トレンド7・8月号 2011 No.89

■特別レポート

第8 回アジア化繊産業会議の概要 ―「質的向上」「環境問題への対応」「域内情報交換強化」で共通認識―

日本化学繊維協会 業務調査グループ 主任部員 鍵山 博哉

【要点(Point)】
(1)第8 回アジア化繊産業会議は、2011 年5 月12、13 日、台湾・台北で開催され、アジア9 カ国・地域の約270 名が参加した。
(2)世界の化繊生産に占めるアジア化繊産業連盟(ACFIF)加盟国・地域のシェアは、2010 年には87%まで達しており(ACFIF 創設を決定した1995 年は55%)、アジア各国・地域の化繊業界の代表が、需給問題、環境問題、合繊原料問題、通商問題などについて、率直な意見交換を行ったことは大変意義深いことであった。
(3)日本からは、特別テーマとして「アジアと世界の化合繊需給中長期見通し及び構造変化」と題し、報告を行った。この報告では、2014 年に、合繊で1,610~1,960 万トンの需給ギャップがあるとの見通しを報告したものであり、おおむね各国・地域で共通認識が得られた。そして、その対応策として、市場開拓による内需拡大の重要性を認識し、高付加価値化、差別化を目指すという方向が示された。

■ファイバー/テキスタイル

下期の市況を読む - 世界経済、回復波乱含み 新たなリスク:日本問題、中東不安、欧州危機 不確実性増す -

向川 利和 特別研究員 繊維産業アナリスト

【要点(Point)】
(1)世界経済の回復は、着実に進んでいるかにみえた。しかし、ここにきて(1)日本問題(東日本大震災と福島原発事故)、(2)中東不安(中東情勢の緊迫化に伴う原油価格高騰)、(3)欧州危機(再燃する欧州財政危機)という新たな下方リスクの発生で、不確実性が増している。
(2)最強アメリカ経済は財政・金融政策を支えとして緩やかながら回復進む。雇用情勢も徐々に改善している。足元の好転は政策頼みで、財政赤字は4 年連続1 兆ドルを超える。自立回復に向けた米経済の苦闘は正念場を迎えている。
(3)東南アジアの合繊原料価格、合繊ファイバー価格は、2010 年秋以降高騰を続け、なお高値圏にある。90年代の安い時代から居所をかえる移行期に入ったとする見方もあるが、基本は欧米景気の行方。

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北陸座談会 - 北陸産地織物業界の景況実態と下半期の見通し- 

出席者: 社団法人福井県繊維卸商協会 専務理事 河野 喜澄 氏 株式会社カツクラ 代表取締役社長 勝倉 雅己 氏 熊澤商事株式会社 代表取締役社長 熊澤 喜八郎 氏 ケイテー株式会社 代表取締役社長 荒井 由泰 氏 松文産業株式会社 代表取締役社長 小泉 信太郎 氏 丸井織物株式会社 代表取締役社長 宮本 徹 氏 司会:東レ経営研究所 繊維調査部長 寒川 雅彦

 北陸テキスタイル産地の織物業界は2008 年7 月より、生産量が減少し始め、リーマンショックの影響もあり、不況期にあった。リーマンショック前の状態にもどっていないものの縮小した設備に対して稼働率は回復してきた。国内の市況は、依然として原料高・最終製品安・デフレ傾向のねじれ現象が続く中で、原料高(ポリエステル糸のアジア価格は2009 年初めから比べると2 倍以上に上昇)が止まらない状況にあり、上昇傾向が落ち着いても高止まりする見通しが強く、特に国内では最終製品価格への転嫁が難しい中では、どの業種・業態もますますモノづくりが難しい局面になっている。  北陸産地は、企業防衛に終始する対策ではなく、円高問題、原燃料価格高騰問題、輸入糸を含む原糸調達の問題、東日本大震災の影響等を前提として、中国、台湾、韓国との競争という面から、国際競争力のある画期的な新技術の芽、新分野の新たな需要開拓、国際分業的なビジネススキームの構築等が、どれだけ出てきているのか、について、北陸産地のキーマンの方々に論じて頂いた。

PDF : 詳細(PDF:1,233KB)

一村産業 石井銀二郎代表取締役社長 インタビュー 我慢の時から、拡大期への転換点 -基礎となる2011 年度事業戦略を聞く-

繊維調査部

 リーマンショック後の世界同時不況の影響が残り、東日本大震災の影響も加わったことで、日本経済全体で不況感が根強い中、北陸の繊維産業も各社生き残りをかけて、社内制度改革や技術開発に尽力している。ここでは、北陸を代表する産元商社であり、そこから更に発展したMono 創り(Monopolize できる逸品)商社を標榜する一村産業の石井社長に、耐える時から、成長、拡大期へ向けた展望について聞いた。

パリ プルミエールヴィジョンを定点観測地として見えてくるもの

株式会社インテグレード 代表取締役社長 繊維月刊誌『Twist』(World Textile Publication Ltd. 発行) 在日特派員 永松 道晴

【要点(Point)】
(1)世界の繊維製品の消費シェアが中国・ロシア・ブラジル・インドなど新興諸国に移りつつあり、しかも2008年のグローバル金融危機から2010 年の繊維素材国際価格の暴騰という絶え間ない変化と危機を経ながらも、新たにプルミエールヴィジョンを率いることになったCEO フィリペ・パスケは、出展企業数と参観来場者数を大幅に増やすことに成功した。
(2)彼は『創造の源は糸でありファイバーである』をモットーに、衣料関係者のみならず、自動車やインテリアなどファッション以外の産業関係者がインスピレーションを求めてプルミエールヴィジョン参観に来るように、繊維機械など他の産業界との連携を進めている。
(3)オーガニックやエコ素材に加えて、従来はスポーツ用途向けだった機能素材が多くのラグジュアリーなファッションコレクションに加えられて、展示会場における提案商品として欠かせない要素となりつつある。
(4)2008 年以来の混乱から抜け出すため、各国の出展企業はクラシックという原点に戻って、製品のバックにある地場の歴史と伝統に根ざしたストーリーで人々の本物志向を触発し、2011/12 秋冬のメジャー トレンドとして「英国伝統」への回帰となった。
(5)この国際的混乱に巻き込まれずに生き残るためには「自らの強み」で勝負すること、つまり物づくりの基本を地場に戻すことでサプライチェーン管理を徹底することが必要との流れが出てきた。
(6)2010 年後半以来の原料価格高騰を受けた今年2 月の展示会では、ウールや綿で品質の差別化を維持して多少の値上げを通すか、合繊の混率を上げることで値上げを避けるか、まだ方向は見えていない。9 月の2012/13 秋冬ものでの各社の対応が注目される。

安全と防護のためのテキスタイル

テキスタイルジャーナリスト 米長 粲

【要点(Point)】
(1)自然災害、異常気象、犯罪被害から健康と安全を守るための機能を付与したテキスタイルはProtectiveTextile と称され世界的に関心の高い分野である。
(2)日常の生活や作業の安全を守る保護具は防じんマスクや防じん服、安全帽、保護手袋、安全帯、保護メガネなどが規格に沿って実用化されている。
(3)原発事故で注目されている放射線遮蔽衣料と器具は、各種放射線や微粒子物質を遮蔽する鉛含有のテキスタイル製品や米国のRST 社の開発したナノファイバーベースの万能防護衣料“Demron”、DuPont 社のフラッシュ紡糸式マイクロファイバーベースの“Tyvek” などがあり、最近は軽量で有害物質が透過、付着しにくい不織布製品が普及している。

ミラノで開催されたIL SALONE DI MOBILE とファッション

デザイナー 小川 健一

 私はデザイナーで、物作りが大好きです。イタリアで主に服やアクセサリーのデザインの仕事をしていますが、実家が大工で私自身、土木科を卒業していることもあって、インテリアや建物にも大変に興味があります。  今年の4 月、ミラノにおいて恒例の世界最大規模のインテリアデザイン展「IL SALONE DI MOBILE」が開催されました。世界中の業界関係者が集まりいつもホテル不足が問題となる程盛況な展示会です。FIELA という展示会場がありますが、それでは足りずミラノ市のあらゆる公共施設(通り、駅、広場、劇場など)も展示会場になり、ミラノ市を挙げての大イベントになっています。  特に今回は「MILANO MODO DESIGN」と銘打ってインテリアデザインとモードという取り組みを大々的に行っていましたので、その様子を報告します。

ジェトロのファッション産業支援事業について

日本貿易振興機構(ジェトロ)生活文化産業部 ファッション産業課 課長 荒居 万里子

【要点(Point)】
(1)4 月に新設されたジェトロのファッション産業課では、さまざまな支援ツールを活用して国内のテキスタイル、アパレル分野の中小企業の海外展開を積極的に後押しする。
(2)本年5 月の「Premium Textile Japan」展に併せて、中国の有力アパレル企業のバイヤーを招聘し、日本のテキスタイル企業との商談をアレンジ。中国市場の可能性は大きいものの課題が多いことも確認された。
(3)10 月の「インターテキスタイル上海」にJFW と共催でジャパン・パビリオンを出展し、中国バイヤーとの商談をアレンジする。上記の経験を踏まえ、「中国テキスタイル市場開拓マニュアル」の作成や事前のビジネスセミナーの開催を予定している。

■縫製/アパレル

ベトナム縫製産業の現状と課題

関西大学 経済学部 准教授 後藤 健太

I.主要短繊維糸・織物の相手国別輸出入統計 II.主要合繊糸・綿・織物の相手国別輸出入統計

【要点(Point)】
(1)ベトナムの縫製産業は1986 年の「ドイモイ」政策の導入を契機とし、特に90 年代に西側諸国向け輸出を通じて発展した。
(2)縫製品輸出においては日本が重要な役割を担ってきたが、近年は米国が最大の輸出先となり、日本向け生産に影響を及ぼしている
(3)ベトナムの縫製産業の生産・流通形態は、生地などの資材を輸入し、バイヤーがリードするCMT 委託加工型が中心である。
(4)同国の縫製産業の発展は、優秀で安い労働力という有利な初期条件に端を発するが、今後の成長には生産性の向上が不可避である。

シリーズ 日本ファッションアパレルの課題と今後の展開 第15 回 Esmod Parisのある実務家教授に師事した留学生による上海CMT工場の起業 

信州大学 名誉教授 繊維学部 特任教授  大谷 毅  宝塚造形芸術大学 教授   宝塚造形芸術大学 専門職大学院 デザイン経営研究科長  菅原 正博

 

【要点(Point)】
(1)パリ・ミラノのモード系学校の教育課程、教員の業績、学生の能力は、いずれもパリのクチュールメゾンに蓄積された業務縫製(CMT)基準で事実上テストされ現状に至っている。
(2)個々の創造性を重視するも併せて客観的な成果を求めて、前掲基準で客観化するルールが定着している。
(3)上海CMT 工場経営者のEsmod Paris 留学成果は、(1)クラスメートによる取引先紹介、(2)仏語による業務推進を可能にすること、(3)真の品質とは何かを体得させ品質に対して自信を持たせること、(4)教育課程で培われた世界観・文化観・歴史観・産業観などにある。
(4)stylisme 教育の成果は事業の現状認識に反映され、事業戦略の模索に有用に機能する。
(5)日本では家庭縫製に端を発する壮大な学問組織に圧倒され、高等教育機関における国際水準でのモード教育は必ずしも根付いていない。この状況は日本のテキスタイル・アパレル事業にプラスにはならない。

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■小売/消費市場

米ブライダル産業の現状

英字ファッション情報誌「NY Street Fashion: Multicultural Fashion & Lifestyle Magazine」 シニアエディター マヤ・カワムラ

【要点(Point)】
(1)昨年7 月にチェルシー・クリントンさんの挙式後、米国では結婚ブームが始まり、英国のロイヤルウエディングで更に拍車がかかった。
(2)ニューヨークのハイファッション・デザイナーのヴェラ・ウォンを筆頭に、ニコル・ミラー、オスカー・デラレンタ、キャロライナ・ヘレラなどはブライダルコレクションに力を注いできたが、ジェークルー、アンテイラー、ザリミテッドなど大型チェーンストアもブライダルに参入。
(3)レプリカの制作、販売も盛んで、ケイト妃の婚約指輪、ウエディングドレス、ベール等、ブライダル関連商品の需要はウナギ登り。
(4)一般庶民の挙式はブライダルエキスポのようなイベントに参加するカップルが増えている。

ファッション・マーケティングの定義を見直す

東京ファッションプランニング株式会社 デザイン・企画カンパニー 社長 山田 桂子

【要点(Point)】
(1)ファッション・マーケティングは、メガトレンド、マーケットトレンド、ジェネラルトレンド、コレクショントレンドの4 項目を分析することが根底となる。
(2)ファッション・マーケティングとは、消費者の購買心理に影響を及ぼす6 つの要因を分析することだ。
(3)今後役立つマーケティングポイントとして、人口減少社会、高度情報化社会、EC 市場の伸長、新たな販促手段を取り上げる。

■新市場/新製品/新技術動向

シリーズ 高齢化社会と繊維 財団法人 テクノエイド協会 福祉の現場で、多種多様に広がる繊維の世界

フリージャーナリスト 土井 弘美

【要点(Point)】
(1)福祉用具の範囲は広く、JIS 規格で400 種以上もある。その中でもベッド、車椅子、歩行器、床ずれ防止用品が非常に多く使用されるトップ4。
(2)ユーザーニーズが細分化しているため、大量に開発・生産・販売する仕組みは必ずしもなじまない。
(3)衣類やマット、タオルなどの繊維製品をはじめ、一部に繊維製品が使用されているものまで加えると、繊維を使用している福祉用具の種類はきわめて多い。
(4)使用されている繊維素材は、吸汗即乾、抗菌消臭、触感冷感等の機能性を持つものが中心となっている。
(5)日本の介護システムは欧米のそれと異なって人的介助を前提としているため、利用者のニーズに適した福祉用具の発展はいまひとつ。

■知りたかった繊維ビジネスのキーポイント

香港ファッションウィーク2012 春夏展 開催

繊維調査部

 第18 回 香港ファッションウィーク2012S / S展(香港貿易発展局主催)が7 月4 日から8 日まで香港コンベンション・エキジビションセンターで開催された。香港企業に加え、日本、中国、インド、パキスタン、トルコなどから1,302 社が参加、昨年の1,313 社から減少したが、出展国はアラブ首長国連邦など3 カ国増となった。日本からは岡山の13のジーンズカジュアルブランドを集めた“岡山ファッションプロジェクト” 他、計16 社が出展。展示会では、ファッションショーや各種セミナーの開催に加え、産学連携の取り組みなどが紹介された。中国本土のOEM、ODM 企業からは、生産背景の提案が見られ、香港企業からはデザイン力やブランド力を背景に更に付加価値を加えた提案が見受けられた。

■統計・資料

Ⅰ.主要短繊維糸・織物の相手国別輸出入統計 Ⅱ.主要合繊糸・綿・織物の相手国別輸出入統計