close

2011年8月1日
経営センサー7・8月号 2011 No.134

■特別レポート

EV 革命最前線

東京大学総長室アドバイザー 村沢 義久

【要点(Point)】
(1)震災と原発事故に苦しむ日本で、今EV 革命は着実に進んでいる。
(2)大手自動車メーカーは廉価版EV 投入を発表し、改造EV は性能向上を加速させ、21 世紀の「下から経済」の担い手として進化を続けている。
(3)太陽光発電とEVのコラボレーションへの取り組みも始まった。

■経済・産業

ユーロ圏は南欧債務問題をコントロールできるのか? -2012年に向けたユーロ圏経済の展望-

みずほ総合研究所株式会社 シニアエコノミスト 中村 正嗣

【要点(Point)】
(1)ユーロ圏は全体としてみれば、緩やかな景気回復が続く状況。
(2)しかし、域内の景気動向は大きく乖離。ドイツでは既に実質GDP が景気後退前のピーク水準まで回復した一方、ギリシャでは依然として明確な景気回復の兆しを伺えず。
(3)今後もドイツ等主要国に牽引されたユーロ圏景気の回復が続く見通しだが、南欧債務問題という景気下振れリスクを抱え、楽観はできないところ。
(4)南欧諸国の財政健全化は容易ではなく、ユーロ圏の支援継続が必要だが、支援に反発する声が広がりつつあり、政策対応は今後も紆余曲折する可能性が残存。

 

人口減少社会と高度人材不足、そして大震災

馬田 芳直 調査研究部門 理事

【要点(Point)】
(1)日本は2005年から人口減少に転じており、増加に転じる気配はなく、人口減少と高齢化による需要減少が続く。しかしながら、世界全体で見れば人口増加基調にある。
(2)日本企業はグローバル化と新規需要創造・イノベーション等で内需減少をカバーして、成長しなければならない。
(3)国内で労働力は不足しないと考えられるが、グローバル化、新規需要創造を推進する人材(高度人材)の需給に大きなミスマッチがあり、日本人の高度人材が大幅に不足することが懸念される。
(4)高度人材の育成の必要性は認識されてはいても遅々として進んでおらず、長期の視点に立った主体的な取り組みが必要である。

PDF : 詳細(PDF:1,646KB)

 

大震災を乗り越える新しい調達システムの構築を目指して

一般財団法人 機械振興協会 経済研究所 研究副主幹 近藤 信一

【要点(Point)】
(1)調達コスト削減による収益性向上の担い手として調達部門への期待が高まっている。しかし、調達部門の取り組みは部分最適・短期的取り組みにとどまり、調達の本来的機能を強化するような全体最適・中長期的取り組みは十分でない。
(2)発注サイド企業は、VE活動や共同研究を川上領域から行える企業、多工程一括受注が可能な企業、『部品パートナー』企業を求めている。受注サイド企業は、発注サイドと改善活動を行っている企業は多いが、VE 活動や共同開発を行っている企業は中堅企業か、優良中小企業にとどまっている。
(3)発注サイド企業とVE活動や共同開発をできる受注サイド企業は、潜在的には多いと思われる。発注サイド企業には、受注サイド企業、特に中小企業の潜在開発能力を引き出すことが求められる。
(4)大震災はサプライチェーンの寸断をもたらし、強靭と思われていた国内調達システムの脆弱性を露呈させた。サプライチェーンの再構築には、中小企業の潜在的技術優位性を引き出して、より強靭な新しい調達システムを構築するべきである。

■産業技術

合成生物学 -その可能性と課題-

増田 真 産業技術調査部 リサーチャー

【要点(Point)】
(1)合成生物学は、欧米では“Synthetic Biology” と呼ばれ、現在のバイオテクノロジー領域における研究トレンドの一つとなっている。
(2)合成生物学は、生物機能を活用した技術(バイオプロセス技術)によるものづくりにおけるイノベーションの創出や、環境配慮型ものづくりシステムの実現などにおいて高い可能性を秘めている。一方、その研究は緒についたばかりであり、産業応用に向けての技術的ハードルは高く、新しい技術ゆえに未知のリスクが潜んでいることも否定できない。
(3)合成生物学の研究推進や産業応用にあたっては、技術的課題以外にも生命倫理、社会的受容(パブリック・アクセプタンス)、情報の受発信の在り方などの社会的要因も大きく影響する。

PDF : 詳細(PDF:1,635KB)

■視点・論点

「キャリア自立」にひそむ危うさ

慶應義塾大学SFC 研究所キャリア・リソース・ラボラトリー 上席所員(訪問) 古畑 仁一

「キャリア自立」とは何か 「キャリア自立」(「自立型キャリア形成」)という言葉が流行っている。「キャリア自立」とは、会社や組織に依存せずに自分のキャリアを自分が主導的に責任をもって形成していくというキャリアの考え方である。

■マネジメント

元気なモノづくり中堅企業に学ぶ トップインタビュー(第13回) 後発組から業界3位に躍進しさらに積極的な海外進出を果たす

ひかり味噌株式会社 代表取締役社長 林 善博 氏

【要点(Point)】
(1)伝統的な味噌製造業界のなかで、ひかり味噌は戦後スタートの後発組だが、大手スーパーチェーンのPB商品製造受託による技術などのノウハウの蓄積、他食品メーカーへの原料提供などによって安定的利益を得、成長路線に乗った。
(2)無添加・有機味噌を開拓。いちはやくアメリカの有機認証であるOCIAの認証も取得して、この分野のパイオニアとなった。
(3)2008 年には業界3位となり、2010年9月にはCI も一新。有機・無添加味噌ジャンルで斬新なパッケージの新商品群を発売した。
(4)アメリカ・ヨーロッパ・東南アジアの3地区を軸に、積極的に海外進出を行っている。

■アジア・新興国

現代インド最新事情(6) 二つのコミュナル暴動 -インドの宗教ナショナリズムの歴史と現状-

東京大学 名誉教授 中里 成章

【要点(Point)】
(1)インドの宗教対立やそれが引き起こす「コミュナル暴動」は比較的新しい現象で、19世紀後半以降顕著になるにすぎない。前近代のインドの宗教の特質はむしろ、ヒンドゥー教とイスラム教が混淆する「習合」にあった。
(2)現代のインドでは「ヒンドゥー・ナショナリズム」とか「コミュナリズム」と呼ばれる右翼的な宗教ナショナリズムが盛んになり、ヒンドゥーとムスリムの間で大規模な「コミュナル暴動」が発生している。それは前近代の遺物などではなく、組織化された近代的な政治的暴力の発動として見るべきものである。
(3)インドの宗教ナショナリズムは、最近新しい展開を示すようになっていて注目を集めている。新しい動きを代表するのはグジャラート州のモディ首相である。

■ワーク・ライフ・バランス

東日本大震災を機に働き方の見直しが始まった -電力不足は働く人の幸福感アップにつながるか-

宮原 淳二 ダイバーシティ&ワーク・ライフ・バランス推進部長

【要点(Point)】
(1)震災を機に想定外のことが発生した。ディズニーリゾートからは子どもが消え、消費を控える“自粛ムード” が蔓延し、世の中の流れが一変した。
(2)日本人は昔から“横並び意識” が強く、周囲と歩調を合わせる国民性がある。今夏、電力不足を機会に多くの企業・団体がサマータイムや夏季休暇の延長等に取り組んでおり、皆で“助け合い” の精神が発揮される。
(3)過去にもサマータイム制度の導入については、何度も議論されたが、インフラの未整備や残業時間の増加などを懸念する声もあり立ち消えていた。今回の震災を機に、働き方の見直しは進んでいくと思われる。
(4)戦後、驚異的な経済復興を遂げた日本は、幸福追求の手段でしかない所得向上が自己目的化してしまった。画一性と勤勉さが賞賛され、余暇や文化・芸術を楽しむことに対する後ろめたさを感じるライフスタイルになってしまった。
(5)今夏の電力不足を機に、“本当の幸福感とは何か”、等お金では買えないものを見つける好機だと捉えている。一過性に終わらせることなく継続的な取り組みを注視したい。

PDF : 詳細(PDF:1,600KB)

■人材

人材育成の視点 変革に取り組むリーダー

福田 貴一 人材開発部 シニアコンサルタント 株式会社スコラ・コンサルト プロセスデザイナー 塩見 康史

【要点(Point)】
(1)業績の悪化、頻発する不祥事などにより存亡の危機にある状況下、次から次へと現場に改善・改革を求めるもなかなか変革の糸口がつかめなかった社内。そこで一人の取締役が行ったのは経営メンバーが本音で話し合えるような場作りだった。そしてその場から出てきたのは「変革へのスピードが急でついていけない」という上級部長からの本音だった。
(2)変革は、リーダーが旗を振るだけで起きるものではない。現場の声を聴き状況を見て、社員・メンバー一人ひとりの行動を引き出し、“仕事のし方の変革” に向けてその行動をつなげることが重要となる。
(3)次第とそのことに気づき、模索しながら取り組みを進めるリーダー。その姿を組織風土変革のポイントに照らして考察する。

PDF : 詳細(PDF:1,610KB)

■経済用語解説

ちょっと教えて!現代のキーワード 

「ソブリンリスク」「発送電分離」

■お薦め名著

『マイクロトレンド』 -チャンスは小さなトレンドに潜んでいる!-

M.J. ペン E.K. ザレスン 著 三浦 展 監修 吉田 晋治 訳

■ズーム・アイ

うれしい気持ちの連鎖反応

内藤 陽子 繊維調査部 兼 人材開発部

毎朝、駅までの道のりに、幅70~80cm 程度の狭い歩道を歩く場所があります。自動車もそれなりに通る車道の脇で、その距離20m ほど。昼は閑散としているのですが、朝の人通りは多く、駅から学校に向かう高校生の集団と、近くにある幼稚園と保育園にお子さんを送っていくお母さんたちが、私が向かうのとは逆方向にせわしない様子で自転車を走らせていきます。

■今月のピックアップちゃーと

「都心回帰」現象は終焉? ~大都市圏への転入は減少へ ~