close

2012年11月20日
IFRSとどう関わるべきか 
― 「IFRSに関するアジア調査出張」で見たしたたかな中国、賭けに出た韓国 -
チーフアナリスト
永井 知美

・金融庁企業会計審議会は、2012年を目途に、上場企業の連結財務諸表に国際会計基準(IFRS)を強制適用するかどうかを判断するとしていたが、東日本大震災後、製造業を中心に適用延期論が強まったことなどから、2011年6月、IFRSの適用時期や範囲等の見直しに着手した。 ・2012年7月、金融庁企業会計審議会は、IFRS適用をめぐる約1年間の議論を踏まえ「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方についてのこれまでの議論(中間的論点整理)」を公表した。単体財務諸表の取扱いと中小企業への対応については一定の方向性を示したものの、強制適用すべきか否かの判断は先送りした。その他の事項に関しては両論併記にとどまっている。 ・2011年12月、筆者は金融庁企業会計審議会委員として「IFRSに関するアジア調査出張」に参加、中国と韓国の会計基準設定主体、証券規制当局、証券取引所、業界団体、企業、投資家、監査法人の方々のお話を伺い、意見交換するという貴重な機会を得た。 ・中国はコンバージェンス、韓国はフルアドプションと、対照的なスタンスをとりながらも、それぞれの立場から国益を最大化しようと努めている。中国が強大な国力を背景にしたたかな会計外交を展開しているのに対して、フルアドプションに踏み切った韓国の先行きには危うさも感じられた。 ・IFRSの特徴は原則主義、資産負債アプローチである。米国の会計基準設定主体との差異を解消するコンバージェンス作業等により、今後も内容が変わると見られる。 ・今回の視察で明確になったのは、IFRSの原則主義は問題が多いこと、多くの企業にとってIFRS適用はデメリットの方が大きいと思われること、会計基準のアウトソーシングは危険だということである。 ・IFRS適用には海外子会社との基準の一本化などのメリットもある。メリットの方が大きいと思う企業は適用すればよい。ただ、IFRSは行き先のわからない電車のようなものであり、どこへ着こうと企業が責任を取らなければいけない。IFRS適用のメリット・デメリットは企業によって異なる。日本はIFRSを任意適用にとどめるべきだろう。

【キーワード】

IFRS、金融庁企業会計審議会、上場企業、強制適用、中間的論点整理、IFRSに関するアジア調査出張、中国、韓国、会計基準設定主体、証券規制当局、証券取引所、監査法人、投資家、コンバージェンス、フルアドプション、原則主義、資産負債アプローチ、任意適用

PDF : TBR産業経済の論点 No.12-07(504KB)