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2013年11月15日
自動車に忍び寄るコモディティー化
チーフエコノミスト
増田 貴司

 近年の製造業を取り巻く重要な環境変化の一つに、急速なコモディティー(汎用品)化 がある。機能や品質などで差異化できなくなり、価格が唯一の差異化要素になる現象のこ とだ。IT(情報技術)の発達で模倣が容易になったことや新興国メーカーの台頭などを背 景に、最先端の製品でも短期間でコモディティー化するようになった。  薄型テレビなどのデジタル家電がすぐコモディティー化するのに対し、自動車は 2 万点 以上の部品を調整しながらつくり込む「擦り合わせ型」製品のため、そうにはなりにくい と従来考えられてきた。だが、その自動車にもコモディティー化の予兆が見える。  第 1 に、インドのタタ自動車が 2009 年に約 22 万円の超低価格車を発売して以降、各社 が安くつくる技術を磨き、じわじわと低価格化が進行している。  第 2 に、自動車の設計・生産方式が変わりつつある。独フォルクスワーゲンは、自動車 のさまざまな性能をあらかじめモジュール(構成要素)に割り当て、それらをブロックの ように組み合わせてつくる「レゴ式」と呼ばれる方式を本格的に導入し始めた。現場力に 依存せず、どこでも誰でも同じクルマをつくれるようにすることが狙いだ。  第 3 に、世界の自動車市場は新興国主導で拡大し、17 年には 1 億台を超える見通しであ る。経験的に家電製品などでは、市場規模 1 億台に達する頃にコモディティー化する例が 多い。  第 4 に、最近の国内自動車市場の堅調を支えているのは、維持費を含めた価格が安い軽 自動車だ。消費者が自動車購入時に価格を最も重視する傾向が強まっている。 コモディティー化が進むと、機能面でいくら優れた新製品を出しても、価格競争に巻き 込まれ、利益の創出につながらない。製造業にとっては製品の枠を越えた事業モデルの開 発が急務である。 (本稿は、2013 年 11 月 15 日 日本経済新聞夕刊「十字路」に掲載されました)