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2012年8月23日
その地域ならではの必然性
チーフエコノミスト
増田 貴司

 国内産業の空洞化懸念が高まる中、地域経済の活性化がこれまで以上に重要なテーマと なった。地域の活性化策を考える際に、見落としてはならないグローバルな潮流が 2 つあ る。  1 つ目は都市化の進展だ。2008 年に世界の人口の半分以上が都市部に住むようになり、 今後も新興国で急速に都市化が進む。2025 年までにアジアで人口 1000 万人超の都市圏が 新たに 5 つ誕生する見通しだ。  これらアジアの都市圏は産業を育成するため、外国企業を積極的に誘致する政策を推進 している。これは企業にとって、海外に有望市場が生まれると同時に、生産拠点の好適地 が多数出現することを意味する。  2 つ目の潮流は情報通信技術の発展だ。技術革新により今後通信費が一層安くなり、人間 は様々なソフトウェアを使って、距離を越えて緊密につながるようになる。この結果、ど こにいてもこなせる仕事が多くなり、企業は各国・地域の特長を生かした国際分業を一段 と進めやすくなる。つまり、企業は立地場所を、人は住む場所をかなり自由に選べる時代 が到来する。  2 つの潮流がもたらす帰結は明らかだ。グローバルな都市・地域間の競争が激化し、その 土地ならではの魅力が問われるようになる。  低炭素、エコ、スマートなどの題目を掲げて、政府の立地補助金の獲得を狙う自治体は 多い。しかし、ライバルが新興国の都市群であることを踏まえると、政府の補助金以外に 企業がそこに必然的に立地する魅力を持たなければ、地域に産業は根づかない。  目指すべきは、「ここでしか作れない(開発できない)」と内外の企業に思わせるような 産業集積の形成、そして革新の担い手となる創造性あふれる人材が住みたくなるような環 境づくりだ。これらを成し遂げた地域のみが繁栄の切符を手にするに違いない。 (本稿は、2012 年 8 月 21 日 日本経済新聞夕刊「十字路」に掲載されました)