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2014年2月14日
ものづくりとIT の融合
チーフエコノミスト
増田 貴司

 ものづくりと IT(情報技術)との融合が加速度的に進んでいる。1 月に米国ラスベガス で開催された家電見本市(CES)には、自動車メーカーが 9 社も出展した。一方、米グー グルなどの IT 企業が、自動運転車の開発や、自動車に通信機能を備えた携帯端末を連携さ せてリアルタイムで各種情報を提供するシステムの開発に乗り出している。今や、家電や IT と自動車の業界の垣根は崩れつつある。  ヒトが常時身に着けて利用できるウエアラブル端末を、製造現場の生産性改善につなが るシステムとして開発している企業がある。IT を活用して老朽化したインフラの点検・監 視や維持管理を効率化する技術の開発も活発化している。  このように多くの分野で製造業と IT の融合が進んだ最大の要因は、センサーの普及であ る。あらゆるモノや場所にセンサーが搭載され、ネットワークでその情報を収集できるよ うになったことを背景に、機器同士が通信ネットワークを介して情報をやり取りして高度 な制御や動作を行う機器間通信(M2M=マシン・ツー・マシン)が急速に発展してきた。  この結果、ものづくりと IT が接する領域に成長市場が生まれ、多くの企業がここに商機 を見いだしている。  一方、モノがネットワークでつながり、基本ソフトなどの共有インフラが活用できるよ うになると、参入障壁が低くなるほか、既存の製品やビジネスが再定義を迫られる。たと えば、自動車は単体としての存在ではなく、ネットワークを構成する情報端末の一つとい う位置づけに変わる。産業構造や業界秩序も大きく変わるだろう。  ものづくりと IT が融合する環境で製造業が繁栄を続けるには、モノ単体の高度化を目指 すのではなく、社会をつなぐ新たな仕組みを活用して顧客価値を生み出すビジネスモデル の開発が必須である。 (本稿は、2014 年 2 月 14 日 日本経済新聞夕刊「十字路」に掲載されました)