close

2012年12月1日
繊維トレンド11・12月号 2012 No.97

■ファイバー/テキスタイル

快適機能性繊維と評価方法

日本化学繊維協会 技術グループ 主席部員  大松沢 明宏

【要点(Point)】
(1)近年、さまざまな機能性を付与した高付加価値な繊維素材が開発されており、衣料用から産業用まで幅広い用途で使用されている。
(2)日本の繊維産業は世界に先駆けていち早く高機能繊維の開発に取り組み、1980 年代から本格展開してきた。2005 年にクールビズ、ウォームビズが提唱されて以降、快適性をはじめとする高機能繊維の開発は勢いを増している。
(3)これら高機能繊維の認知度や信頼性を高めるには、ユーザー業界や消費者に対してその性能・品質を客観的な評価に基づいて分かりやすく伝達するとともに、国内の規格統一とその国際標準化の戦略的推進が重要である。
(4)機能性の種類は多岐にわたるが、本稿では、快適性に関わる代表的な高機能繊維を取り上げて、その機能性について解説するとともにJIS 規格などの公的試験方法や業界統一基準に基づく評価方法を紹介する。

第51 回Dornbirn 国際化合繊会議MFC2012 報告

テキスタイルジャーナリスト 米長 粲 東レ株式会社 繊維加工技術部 塩谷 隆

【要点(Point)】
(1)ドルンビルン国際化合繊会議のコンセプトは、技術革新のあくなき追求、環境と資源維持という理念に支えられて、世界の化合繊界の発展に寄与しており、今回は過去最高の参加者を数えた。
(2)企業の事業運営は、これまでのOwnership 的な考え方から、産官学・異業種連携を含めたCorporativeという考え方で経営資源を投下し、事業を展開することがより重要になったという提言があった。
(3)報告されたテーマは、医療用途、バイオテキスタイル、ナノファイバー、スマートテキスタイル、レーヨンの多様化、テクニカル不織布、自動車資材など機能性テキスタイルに関するものが多い。
(4)本年は日本からの発表者、参加者が多く、日本の先端的な技術開発の紹介は、世界中から集まった多くの出席者の関心を呼んだ。

2013/14 年秋冬向けトレンドから見えるもの  -イタリアのファッションはルネッサンスへの回帰、イギリスの生産は自国への回帰-

株式会社インテグレード 代表取締役社長 欧州繊維専門月刊誌『Twist』在日特派員 永松 道晴

【要点(Point)】
(1)2013/14 年秋冬の糸のトレンドを占う最初の展示会、フィレンツェのピッティ イマジネ フィラティでは、夏から続いたソフトな色調が中心で、ピンポイントに輝く光の色が深くダークな色調の芯糸にちりばめられ、メランジや異繊維を組み合せたファンシータイプの糸が目立つ。風合いについては軽い透明な編み目でそよ風に揺らぐスタイルを目指している。
(2)イタリア歴史文化の真髄である複雑で豊かなインスピレーションを、込み入った編み目や華やかな色調の糸で具体化し、前を向きながらも過去も振り返って原点を確認する振り子のような印象を受ける展示会であり、来たるファッションのトレンドをルネッサンスへの回帰としてまとめたものだ。
(3)イギリスではツイードなど伝統的な織物がトレンドに乗っており、ヨークシャーなどいったん崩壊した国内のサプライチェーンを再建して「made in the UK」を訴求する動きが活発だ。その鍵となるのが紡績工程で、かつてその生産設備を国外に移したラクストンズ スペシャリスト ヤーン社が地元に戻って地場生産システム再興の要となっている。まさに生産の本国への回帰だ。

■縫製/アパレル

パキスタン・ニット衣類産業の特徴とMFA 撤廃後にみられる変化

日本貿易振興機構 アジア経済研究所 南アジア研究グループ  牧野 百恵

【要点(Point)】
(1)パキスタン・ニット衣類輸出のここ2 年の伸びは、MFA 撤廃後の淘汰を生き残った企業によってもたらされた。これらの企業に共通してみられる特徴は、縫製工が男性の出来高払いから女性を固定給で雇う方向にシフトしつつあることである。
(2)パキスタン衣類産業では、伝統的な徒弟制度と結びついて、出来高払いの男性縫製工が未だに大部分を占めている。女性縫製工を固定給で雇うには、企業側に高いマネジメント能力が必要である。
(3)パキスタン社会では、女性の労働参加については、企業側以上に家庭側の制約要因が大きい。女性縫製工はもっぱら経済的要因で働いており、家庭側にはそのことを評価していない者が多いが、貧困家計の所得と厚生水準に対する貢献度は高い。

中国市場向けブランドコンセプト設定方法 

事業開発研究所株式会社 代表取締役  島田 浩司

【要点(Point)】
(1)ブランドコンセプトは、市場から組み立てる
(2)ブランドコンセプトシート
(3)プライスレンジシート
(4)ブランドポジションシート

ファストファッションの店頭陳列から見た商品設計思想 

信州大学 名誉教授 繊維学部 繊維・感性工学系 特任教授  大谷 毅 共立女子大学 家政学部 教授 宮武 恵子

【要点(Point)】
(1)ファッション事業を構想するには、a)製品空間とb)機能空間の「絞り込み」が必要である。
(2)製品空間から特定の製品群を抽出するには「SKU の集合」になるが煩雑過ぎ、コンセプトでは広義過ぎるので、中間的な概念として仮称・テーマを設定し、設計や商品陳列の作業単位とする。
(3)国際的ファストファッション事業を営む2 社をモデル化してモデルA・モデルB とし、本稿の調査フィールドとしてモデルA のX 店を選び、比較の便宜のためにモデルB のY 店を取り上げた。
(4)X 店は常時700 型、週4,000 枚入荷、16 -17 日で1 回転、売切り原則で常時「欠品状態」にあるが、モデルA 全体の在庫回転はそれほど高くない。モデルB も同様の傾向がある。かなりの流通在庫を意図的に積んでいると推定できる。
(5)グローバルファストファッションの設計部門にとって、ひと型の設計はただのルーティンワークである。特筆すべきは、年度n 週目のX 店には何を送るか、設計段階でn 週目の各店の品揃えの記述にある。
(6)本社購買と商品センターでは、アイテム・テーマ間の翻訳作業が行われる。
(7)流行追随は予測してリードタイムを確保し、生機は設計前に発注し、染色も設計前または設計と同時に行う。
(8)X やY 両店舗では商品はテーマを軸に管理され、同一テーマは週内に完売するか、あるいは政策的に売り場を移動させ、適宜、新しい型を補充し、売り場の新鮮さを確保している。

PDF : 詳細(PDF:1,052KB)

■小売/消費市場

中国の子供服市場

株式会社フランドル 上海事務所 所長 篠原 航平

【要点(Point)】
(1)2011 年(1-10 月)の中国の子供服市場シェアトップ10 ブランドには4 点の特徴が見られる。
(2)中国は広大な面積を持つ国家で消費者の嗜好も各地域で異なる。子供服の人気ブランドも地域別の差異があると考えられる。
(3)中国の人気子供服ブランドの価格帯とベビーウエア、キッズウエアの比率には3 点の特徴が見られる。
(4)中国の人気子供服ブランドは、スポーツ・カジュアルで派手・装飾的なデザインテイストが全盛。
(5)EC で支持を得る子供服ブランドには独自の傾向がある。

米国ペット産業の現状 

英字ファッション情報誌「NY Street Fashion: Multicultural Fashion & Lifestyle Magazine」シニアエディター マヤ・カワムラ

【要点(Point)】
(1)世界のファッション業界の競合が激化する中、米国ではペット産業もアパレル部門に視点が移行しつつある。ニューヨーク州立ファッション工科大学では、2009 年にペット商品開発プログラムを開校。市場の流れに沿い、高失業対策に役立つ。
(2)ペットスマート社、ペッツコ社、ペットランドディスカウント社は、米ペット関連の代表的な大型チェーン店である。
(3)ペット産業は、食品、医療関係が最も発達しているが、毎年2 月にフロリダで行われるペット商品合同産業展示会では、ペットファッション関連会社もピンクのカーベットが敷き詰められた専門部門にブースを出店し、ますますの流通網の拡張に前向きに対応している。

トラフィックチャンネルの可能性 

東京ファッションプランニング株式会社 デザイン・企画カンパニー 社長 山田 桂子

 2012年11月、カンボジアで開催された東アジア首脳会議の関連会合で、2013年東アジアの地域包括的経済連携(RCEP)の交渉開始が合意された。同交渉は、2013年の早期に交渉を開始、2015年末までに交渉完了させることを目指すことになっている。 このRCEPが実現すれば、域内の人口は約34億人と世界の人口の約半分、GDPは約20兆ドルと世界全体の約3割、貿易額10兆ドルと世界全体の約3割を占める巨大な広域経済圏が完成することになる。

【要点(Point)】
(1)2000 年以降、JR 東日本、東京メトロを中心に、関東で「駅ナカ」が拡大。11 年以降、京都市営地下鉄、JR 西日本、大阪市営地下鉄でも、続々と「駅ナカ」が開業し、着実に広がっている。
(2)「 駅ナカ」は、単に駅の空いているスペースを有効活用して商業施設を造るのではなく、既存の駅ビルでも百貨店でもない新しい形態の商業施設を目指すということから広がった。
(3)「 駅ナカ」だけでなく、空港=「ソラナカ」、高速道路のサービスエリア=「ミチナカ」と、交通拠点でファッション小売業が「新立地」の可能性に向けて動き始めている。

■知りたかった繊維ビジネスのキーポイント

化繊協会におけるポリプロピレン繊維の酸化発熱問題への取り組み

日本化学繊維協会 技術グループ 竹内 康晃

 1967(昭和42)-1970(昭和45)年ごろに発生した数件の火災事故において、ポリプロピレン繊維と綿との混用品での酸化発熱現象が火災の原因として指摘され、その対策として化繊業界(化繊協会)では1973(昭和48)年に「衣料用途でのセルロース系繊維(綿、レーヨン等)との混用品は製造しない」とする自主規制を決め、現在でもその自主規制を継続している。

■統計・資料

主要商品市況

1. 原油  2. ナフサ  3.PTA 4.EG 5. カプロラクタム 6. アクリロニトリル 7. ナイロンフィラメント、同織物  8. ポリエステルフィラメント、同織物  9. ポリエステルステープル 10. アクリルステープル、同紡績糸 11. 綿花  12. ポリエステル綿混(T/C)紡績糸および織物