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2012年10月1日
新分野でもガラパゴス化?
チーフエコノミスト
増田 貴司

 東日本大震災後、政府や自治体の復興計画にスマートシティ構想が組み込まれ、官民に よる取り組みが進展している。スマートシティとは、情報通信技術や環境技術を用いて電 力網や社会インフラ全体の効率化・最適化を目指す街づくりのことだ。  さらに、今年 7 月から再生可能エネルギーの全量固定価格買い取り制度が導入されたこ とで、諸外国に比べ遅れていた日本の再生可能エネルギーへの取り組みが本格的に始動し た。これを受け、多数の企業がメガソーラーや風力発電の事業に乗り出した。  スマートシティや再生可能エネルギー関連の投資の拡大は、当面の景気を押し上げる。 同時に、震災からの復興で新たな街づくりや社会インフラの整備に直結するだろう。だが、 それだけで満足してはいけない。日本で開発したスマートシティや新エネルギー関連のモ デルをアジア新興国など海外に輸出し、国際競争力のある事業に成長させることを目指す べきだ。  そのために注意すべきは、国内の先進プロジェクト向けの高機能な商品開発に集中する あまり、「高品質だが日本でしか通用しないモデルになってしまうこと」(いわゆるガラパ ゴス化)に陥らないようにすることだ。  国内向けの高機能モデルからいくつかの機能を間引いた廉価版を海外に売り込む方法で は、海外市場を攻略できない。はじめから海外市場を見据えた開発をしなければ、技術開 発競争では先んじても、世界市場では落ちこぼれる。このことを過去数年で日本企業は学 習してきたはずだ。  だが、現状を見ると、国内の復興需要や補助金に注目するあまり、日本向けの高機能商 品の開発を優先している企業が多いように見える点が気がかりである。過去の苦い教訓を 忘れて、期待の新分野でもガラパゴス化のわなにはまることは避けなければならない。 (本稿は、2012 年 9 月 28 日 日本経済新聞夕刊「十字路」に掲載されました)