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2010年8月1日
NEWater、飲みたくないですか?
主席研究員(市場調査担当)
岩谷 俊之

 一昨年、海外出張をテーマにズーム・アイを書いた私。今回も海外出張ネタでまいります。今回の舞台はシンガポール。いま注目の「水ビジネス」に関する仕事で、私は昨年10月にシンガポールに出張してきたのです。  ご存知のようにシンガポールはとても小さな国で、面積は日本の淡路島くらいしかありません。従って自国の淡水資源量や貯水能力は乏しく、これまでは隣国マレーシアから水を買ってしのいでいました。しかし、マレーシアが水価格の大幅値上げを通告してきたことで水問題は国家的課題となり、国を挙げて水自給率アップの取組みが始まったのです。国内貯水能力を増強するのはもちろん、海水淡水化施設を建設し、さらに水をリサイクル利用する画期的なNEWater(ニューウォーター)専用プラントを国内に何カ所も整備しました。  さて、NEWaterとは何でしょう? 今申し上げたようにこれはリサイクル水です。アルミ缶廃棄物をリサイクルして新しいアルミ缶にするように、“水の廃棄物”をリサイクルしたもので、ズバリ言えば下水処理水を高度浄化した水なのです。原水が下水処理水ということは、処理する前は…はい、当然「生下水」です。生下水を下水処理場で処理し、その処理水をさらに専用の浄水工場でピカピカのきれいな水に再生したもの、それがNEWaterというわけです。あれ? 飲みたくないですか?  日本では下水処理水を再利用するという例は非常に少なく、大半は川や海などにそのまま放流しています。しかし考えてもみてください。地球上の水資源のほとんどは海水で、ごくわずかな淡水資源も大半は氷河か地下水です。川や湖のような地表の淡水資源なんて地球上の水の0.01%以下。水の惑星といわれる地球ですが、実は地表淡水資源というのはものすごく貴重なものなのです。  下水処理水は川に放流できるくらいの立派な淡水です。海水よりもずっと容易に、しかも安いコストで飲料水レベルにまで浄化できます。水不足に悩むシンガポール政府がこの貴重な淡水資源を活用しようとするのは当然でしょう。下水処理水の高度浄化・再利用は今やシンガポールだけではなく、同じように水資源に乏しい中東などでも採用されており、水ビジネスにおける注目分野の一つになっています。  シンガポール出張ではNEWater専用の浄水工場も見学し、実際に試飲もさせてもらいました。何しろ南国シンガポールは暑くて喉が渇きます。“出来立て”の冷えたNEWaterがことのほか美味しい。ガブガブ飲ませていただきました。  シンガポールの小学生たちもみんなこの工場を見学し、NEWaterを飲み、さらにお土産用のペットボトルをもらって帰るそうで、私もペットボトルを2本もらってきました。貴重なNEWaterです。大事に日本に持って帰り、会社の上司・同僚たちに飲ませてみました。しかし何を浄化した水なのかを私が説明すると、急に尻込みする人が…。飲みたくないですか?  現在、世界の水ビジネスにおいて最も重要な技術と見なされているのは「膜」で、NEWaterの専用工場でも浄水膜が大活躍しています。中でも心臓部といえるのが逆浸透膜によるろ過プロセスですが、ここにはもちろん東レ製の逆浸透膜も多数採用されています。シンガポールの水供給を支える東レの技術。東レの膜が浄化したNEWaterというわけで……。まだ、飲みたくないですか?