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2010年12月13日
製造業もサービスに活路あり
チーフエコノミスト
増田 貴司

 最近、製造業企業が製品の保守・リースやソリューション(課題解決)提案といったサ ービス事業に進出する動きが活発化している。  この背景には、モノ余り時代の到来というビジネス環境の変化がある。優れた工業製品 を生産できる国は昔は先進国だけだったが、今では新興国を含む多くの国の企業が低コス トで工業製品を量産できるようになった。このため世界中にモノがあふれ、汎用品だけで なくハイテク製品までもが短期間でコモディティー化し、低価格競争に巻き込まれてしま うようになった。  この結果、先進国の製造業が収益力を高めるには、「モノの価値」ではなく、「モノを通 じて実現するサービスの価値」で勝負することが重要になってきた。いいモノを作って売 るだけでなく、サービスで心の琴線に触れるような価値を生み出して顧客の満足度を高め ることが、競争力の源泉になる時代が来たのである。  これは日本企業にとって試練のように見えるが、実は大きなチャンスとなる。なぜなら、 サービスこそが日本の得意分野だからだ。日本の強みといえば、我々は高品質のものづく りや先端技術を思い浮かべがちだ。だが、実は世界の人を一番ひき付けているのは、かゆ いところに手が届く、繊細で気持ちのいい日本のサービスであるとの指摘は多い。  きめ細やかで親切、丁寧な、日本流の「おもてなし」のサービスが海外のビジネスで強 力な武器になりうることは、近年のコンビニ各社や、家庭用防犯サービスや宅配便などの 海外進出の成功事例によって証明されている。日本人にとっては当たり前のサービスが、 海外では特別なものとして人々に感動をもって受け入れられている例は数多い。  製造業もこの日本固有の強みであるサービスをうまく取り入れることで、他国がまねで きない価値を創出することを目指すべきであろう。 (本稿は、2010 年 12 月 2 日 日本経済新聞夕刊「十字路」に掲載されました)