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2013年6月14日
復活したご用聞き
チーフエコノミスト
増田 貴司

 インターネット通販の拡大、ビッグデータの解析など、情報技術(IT)の活用が進む小 売業の世界で、「ご用聞き」が復活しつつある。  例えばセブン-イレブン・ジャパンでは、高齢者や「買い物弱者」を対象に、買い物代行 をしながら、食事を作って定期的に届ける配食サービスを行っている。商品の配送に宅配 業者を利用する場合もあるが、コンビニ店員が直接各家庭に届けることが奨励されている。 顧客と顔を合わせて会話をする中で、ご用聞きをして、「ついで買い」を促すことができる。  東京急行電鉄は沿線エリアで、自宅にいる顧客に食材や日用品を届けるほか、暮らし全 般に関わるサービスを提供するご用聞きを行っている。ホームセンター大手のカインズは、 電球の交換など、専門業者を呼ぶほどではないが、少し手間のかかる作業を顧客の家に出 向いて代行するサービスを提供している。  これらはいずれも高齢化社会を見据え、主としてシニア層の需要を取り込む目的で導入 したサービスである。だが、ご用聞き復活の理由はそれだけではない。  こちらから訪問して顧客と接点を持ち、そのニーズを先取りしたい。顧客の不便を一度 にできるだけ多く解消できるようなワンストップ型の新サービスを生み出したい。顧客の ために一人で多様なサービス対応ができる人材を育てたい― 。こういった意図でご用聞き に注目する企業が増えているのだ。  その証拠に、法人向けサービスでも新型のご用聞きが登場している。KDDI や NTT は、 中小企業向けにオフィスの IT 環境の面倒をまるごとみるワンストップ型サービスを展開、 営業マンがオフィスの照明や内装まで手がける「何でも屋」を目指している。  IT 全盛時代に、顧客との関係を構築する手段として、伝統的なご用聞きが見直されてい ることは興味深い。 (本稿は、2013 年 6 月 14 日 日本経済新聞夕刊「十字路」に掲載されました)