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2016年12月20日
民間による宇宙開発への期待
チーフエコノミスト
増田 貴司

 これまで宇宙開発は国主導で進められてきたが、近年は民間主導の宇宙事業が脚光を浴びつつある。  米国では、早くから宇宙産業振興に関する法整備が進み、民間事業を後押しする施策がとられてきた。これを受けて、IT(情報技術)分野で成功を収めたベンチャー企業が続々と宇宙事業に参入している。わが国でも、2016 年には宇宙二法(宇宙活動法、衛星リモートセンシング法)が成立するなど、民間の参入を後押しする法整備が進み始めた。  民間による宇宙事業開発が世界的に増えてきた背景には、情報通信技術の進歩の結果、民生の安価な汎用部品が宇宙開発に十分使えるレベルになったことが挙げられる。  従来、宇宙産業には専用に開発した部品が使用され、これが高コストの要因となっていた。だが、今や民生汎用品を使うことにより、コスト削減と開発期間の短縮化、小型化、高性能化を実現できるようになった。  さらに、民間による宇宙開発には、国のプロジェクトにはない長所がある点も見逃せない。国主導の宇宙開発では、使う部品を設計段階で決めて申請する必要があるため、古い技術しか使えず、斬新で画期的な技術を採用できない。また、国の予算に関しては、目的外使用が禁止されているため、途中で方向転換や大幅な仕様変更ができないほか、事業開始前に認識できなかった新しいアイデアに資金を振り向けることもできない。これに対し、民間プロジェクトであれば最新の技術を使用でき、予期せぬ展開にも柔軟に対応できる。  宇宙開発において民間が担うべき領域は今後ますます広がっていくに違いない。優れた技術力・発想力をもつ民間事業者の新規参入を促すための環境整備に取り組み、わが国の宇宙産業の裾野を拡大していくことが重要だ。 (本稿は、2016 年 12 月 20 日 日本経済新聞夕刊「十字路」に掲載されました)