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2011年2月5日
入札前の官民一体の受注活動を
シニアエコノミスト
福田 佳之

2025 年には 36 兆円市場に成長  最近、水ビジネスが注目を集めているが、上水だけでなく、下水関連ビジネスも見逃せ ない。新興国や途上国では、都市化の進展で電力や上下水道など都市インフラの整備が喫 緊の課題となっている。特に、メガシティと呼ばれる人口 1,000 万人以上の大都市では、 大量の下水が排出されるために、それを集中処理するシステムが必要である。  例えば中国では、都市部の汚水処理率は 2008 年時点で 6 割程度にすぎず、依然として汚 水処理場を持たない都市が中小都市を中心に存在している。下水処理で発生する汚泥につ いては河川を汚染させる恐れがあるにもかかわらず適切に処理されていない。一方、下水 を高度処理して農業用水や工業用水として活用し、国内水不足に対応する下水再利用への 関心が高まっている。  経済産業省が 2010 年の4月に発表した「水ビジネスの国際展開に向けた課題と具体的方 策」の中で、2025 年の世界の下水関連市場は 35.5 兆円と 2007 年の 15.3 兆円から大幅に拡 大するとしており、なかでも中国は 4.8 兆円と 2007 年(1 兆円)の 5 倍近く拡大するとい う。 入札前の官民一体となった受注活動が必須  日本企業は国内の都市化の進展に合わせて開発してきた下水関連技術を持つ。具体的に は、膜による下水処理や再利用、炭化汚泥や消化ガスなどのエネルギー化、老朽化した下 水道管を開削せずに更生させる非開削工法、雨水の排水処理等が挙げられる。これらの分 野での日本企業の技術水準は欧米勢に比べて高い。  このような技術を活かしてこれまで実績の乏しかった海外展開を図るには、日本企業や 政府はどのような課題に取り組むべきだろうか。  まず、官民一体となった受注活動を行わねばならないが、入札段階で官民一体となって も間に合わない。入札前の段階で日本の地方自治体等が大都市下水道の構築・運営に関す る知識やノウハウについて新興国の実情を踏まえてアドバイスを行い、その一方で彼らに 適した民間の技術を紹介していくことが望ましい。  このためには、官民連携を強化し、下水関連情報の共有と相手国キーパーソンへの働き かけを行う必要がある。こうした役割の担い手として国土交通省や GCUS(下水道グローバル センター)への期待度は高い。 日本の技術の国際標準化を主導  次に、現地企業との合弁など現地化の徹底である。その理由として、新興国・途上国で は現地企業の合弁事業でないと参入を許可しないこともあるが、現地企業をライバル視し てもコスト等の点で勝ち目なく、むしろ、現地企業と連携することで、日本の技術を活か しつつ、所得の低い新興国への浸透を図る活路が開けてくると考えられる。  最後に、国際標準化への取り組みである。日本の下水関連企業が WTO(世界貿易機関)に 加盟している国の下水関連案件を応札する場合、ISO 等の国際規格の取得が入札条件として 課されることとなっている。つまり、企業は自社技術をその国際規格に合わせない限り、 その国の入札に参加できないのだ。既に決められた国際規格がある場合、日本は国内規格 を国際規格に合わせておく必要がある。そうすることで、企業は海外を見据えた国内市場 への製品投入が可能となり、スムーズに国内から海外へと事業展開を図ることができる。  一方、国際規格が存在しない場合、日本は ISO 等の国際規格の策定交渉にすみやかに参 加して日本企業に有利な国際規格を定めて国際標準を獲得することを目指すべきだろう。 (本稿は、公益財団法人 日本生産性本部「生産性新聞」2011.2.5 日号に掲載されました)