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2012年9月5日
製造業の海外シフトと国内立地の意義
- 海外進出促進は空洞化回避につながるか -
チーフエコノミスト
増田 貴司

・企業の海外進出が急ピッチで進み、空洞化懸念が強まっているが、空洞化をめぐる議論はイメージ先行で混乱している。現状では深刻な空洞化は起こっていない。日本企業は海外進出を拡大すると同時に、国内事業も拡大する姿勢を堅持している。 ・多くの日本企業は一定の国内生産を維持することに積極的な意義を認めている。震災後の日本での立地に魅力を感じる外国企業も散見される。 ・「企業の海外進出が増えると、国内の雇用も増加する」という考え方が主流になりつつある。これに伴い、政府の空洞化回避策の新潮流として、「企業の海外進出支援を通じて国内の空洞化を回避する」政策が採用され始めた。 ・上記の政策が成功するためには、前提条件が必要だ。①海外進出した企業が本社機能や研究開発部門を国内に残し、海外で稼いだ利益を国内に還流させて国内で投資するという前提、②日本企業の海外工場での最終製品の生産が増えるほど、それをまかなう先端部材の日本からの輸出が増加する構造が今後も維持されるという前提、の2つである。これらの前提が満たされる保障はない。 ・企業の海外進出を支援するだけでは、企業は強くなっても、国内の空洞化回避に必ずしもつながらない。企業が国を選ぶグローバル化の時代の国家経営は、国内を魅力ある投資環境に整備し、その国土で企業に存分に活動してもらう努力なしには成り立たない。

【キーワード】

6重苦、空洞化、国内立地、国内と海外での事業展開、国内生産の重要性、海外進出と国内雇用、現地(第3国)調達比率の高まり、日本企業誘致に注力する韓国・台湾

PDF : TBR産業経済の論点 No.12-04(430KB)