2022年12月16日
経営センサー12月号 2022 No.248
■産業経済
昆虫等を原料とする新たな養殖飼料の開発
―タンパク質危機回避と水産養殖業の持続性―
国立研究開発法人水産研究・教育機構 理事
生田 和正
Point |
(1) | 世界の人口増加と経済成長に伴いタンパク質の消費が急増し、近い将来需要が供給を上回るタンパク質危機の到来が懸念される |
(2) | 養殖による魚介類の生産拡大がタンパク質供給に大きな役割を果たすが、飼料原料となる魚粉の供給も頭打ちで高騰を続ける |
(3) | タンパク質危機の回避と養殖生産拡大のため、未利用資源である昆虫ミズアブを代替物として利用する研究開発が進められている |
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■技術・業界展望
mRNAワクチンをいち早く実用化した大手医薬品メーカー・ファイザー
日本化学会フェロー
田島 慶三
Point |
(1) | 世界の医薬品業界は1990~2000年代の生活習慣病治療薬から、2010年代には分子標的薬による抗がん剤、自己免疫疾患治療薬に中心が移動した。 |
(2) | 低分子生活習慣病治療薬で飛躍した米ファイザー社(Pfizer Inc.)は、分子標的薬の開発と事業育成において低分子品からなかなか抜け出せなかった。 |
(3) | 1990年代にファイザーの急成長をもたらした丸ごと開発企業を買収する戦略から、バイオベンチャーの力を活用する戦略に転換していくことが必要な時代になった。 |
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『自然に学ぶものづくり』という考え方
株式会社積水インテグレーテッドリサーチ 常務取締役
飛鳥 政宏
Point |
(1) | 自然界による驚異的な「ものづくり」 |
(2) | 「すぐに役に立つ研究」だけでは大きな発展は望めない |
(3) | 自然界38億年の設計原理がトレードオフ関係を打破し |
(4) | 持続可能なイノベーションへの無限の可能性を広げる |
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■コラム
ものづくり未来図 連載第9回
加速する「人間拡張」の研究開発
取締役 エグゼクティブエコノミスト
増田 貴司
「人間拡張」とは
人間拡張の研究が進展している。人間拡張とは、IT(情報技術)やロボット技術などを組み合わせ、人間が持つ能力や知覚、存在などを拡張させて社会課題を解決する技術概念のことである。最近急に立ち上がってきた研究分野ではなく、これまで各領域で研究されてきたものをまとめて「人間拡張」と総称して、新しい研究分野を築こうとしたものといえる。 |
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■視点・論点
RCEP活用による日本経済・企業の競争力強化と成長
早稲田大学 名誉教授
浦田 秀次郎
Point |
(1) | 地域的な包括的経済連携(RCEP)協定が10年の交渉を経て2022年1月に発効した。 |
(2) | RCEPは東アジア15カ国をメンバーとし、包括的な分野でのルールを含み、貿易・投資の自由化を推進する自由貿易協定(FTA)である。 |
(3) | 米中対立や新型コロナ禍などにより保護主義が台頭する世界貿易の中でルールに基づく開放的な貿易制度の構築に貢献する。 |
(4) | 日本経済・企業はRCEPを活用することで、競争力の向上および成長を推進すべきである |
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■ヒューマン・ディベロップメント
ニューロダイバーシティ人材とイノベーションと機会損失
―「対面型研修」で「失われた20年」を繰り返すリスク―
株式会社voice and peace 代表取締役
アナウンサー・ナレーター
赤平 大
Point |
(1) | アナウンサーである筆者にはギフテッドで発達障害の子どもがおり、発達障害がLGBTQ同様となる社会構築のため動画メディアを起業した。 |
(2) | 教育界では2005年以降、発達障害の知見を高める「対面型研修」を行ったが効果が出ず、文科省・厚労省も認識し「動画研修」を推奨している。 |
(3) | 日本は発達障害人材の未活用によって2兆3,000億円を損失しているという試算もあり、経産省は「研修で知見向上」させイノベーションを狙っている。 |
(4) | 企業で「対面型研修」を行うと、教育界での「失われた20年」を繰り返す恐れがある。 |
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経営センサー対談
異業種交流という場の提供と学び合うことの意義
人材開発部 シニアコンサルタント(MOT担当)
松岡 寛
人材開発部 シニアコンサルタント(MJ担当)
手計 仁志
人材開発部 コンサルタント(次経塾担当/進行)
内藤 陽子
Point |
(1) | 異業種交流は、業務上の共通項がない受講生同士が集まり、それ故に「経営」や「マネジメント」などの本質的な話ができる場であり、その交流から幅広い視野を得ることができる。そのような場を意図的に作り、学びと行動を結びつけ、実践の後押しをするのが研修主催者の役割である。 |
(2) | 受講生がのちのち振り返ることができる学びを得るためには、実践に対するフィードバックを受講生同士が気軽にし合える関係性が必要であり、一定の開催期間の長さは関係性構築に有効である。 |
(3) | これからの異業種交流研修において、業種、距離ともになるべく“遠い”人を集めることが、異業種ならではのメリットの最大化につながる。オンラインの活用によってそれが容易になる。一方で、集合研修では、その距離感での対話から生み出されるシナジー効果も期待できるため、研修の狙いに合わせた使い分けが必要である。 |
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■TBRカナリアレポート
今後の蓄電池普及はバッテリーメタルの価格に左右
-カーボンニュートラル実現における蓄電池への期待と課題-
近年、カーボンニュートラルの実現に当たって蓄電池の存在がクローズアップされています。例えば、自動車等の電動化や再エネ等の電力の需給調整のためには蓄電池が不可欠です。蓄電池には、さまざまな種類のものが存在しますが、エネルギー密度が高く、EVの駆動も可能なリチウムイオン電池が使われるようになっています。
■ピックアップちゃーと
住宅着工件数の減少は一過性なのか?
~近年の住宅着工の動向~
産業経済調査チーム
■お薦め名著
『定年NEXT』
―「繋ぐシニア」24人のロールモデルに学ぶ―
池口 武志 著
■ズーム・アイ
AIで知らぬ間に広がった世界
繊維・市場調査部
安楽 貴代美
この半年、業務でAIによる機械式の翻訳サービスを活用しています。100ページを超えるような英文ファイルでも、すぐに日本語に変換してくれるため、和訳された文書ファイルを開くたびに新鮮な感動を覚えています。インターネットの利用時にもいつの間にかブラウザに翻訳の機能が組み込まれ、海外のサイトでも日本語で読めるようになりました。何と便利なことでしょうか。