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2016年2月19日
不利な条件を成長機会に変える
チーフエコノミスト
増田 貴司

 このところ「進化した人工知能(AI)やロボットが人間の仕事を奪う」ことへの警戒感が世界 的に強まっている 。世界経済フォーラムの調査によれば、AI やロボットの技術革新によって 人類は 2020 年までに差し引き 500 万人以上の職を失う可能性があるという。  だが、いくら人間の職を確保するためとはいえ、ブルドーザーを放棄して人力による整地作 業に回帰することが現実的ではないように、結局は AI やロボットを受け入れるしかない。任せ られることは任せ、人間は人間ならではの仕事を見いだして、それに従事するよりほかに進 む道はないだろう。  ただ、新技術を受け入れることがいずれは不可避であると分かっていても、現実には既存 の産業や雇用を守るために、新技術の導入・活用を遅らせようとする社会的な力が働き、こ れが変革の妨げになりがちだ。これは万国共通の悩みである。  しかし、この点において、少子高齢化、生産年齢人口減少、人手不足問題が世界一深刻な 日本(とりわけ地方)は、AI やロボットを導入することのハードルが世界一低く、逆に地域の課 題解決のためにこれらの新技術を活用する動機は世界一強いはずだ。例えば、スマート農機 の導入による農作業の省力化、無人運転農機の導入、過疎地域における自動運転による送 迎サービスなどは、地方に強烈なニーズがあるテーマである。  つまり、日本の地方はAIやロボット分野でイノベーションを起こすのに世界一有利な条件を 持っていると言える。地方創生のためには、これまで不利な条件とされていた環境を、新技術 を活用した様々な事業を世界に先駆けて積極的に取り入れることにより、大きな成長機会に 変えていくといった発想が重要であろう。 (本稿は、2016 年 2 月 19 日 日本経済新聞夕刊「十字路」に掲載されました)