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2021年2月18日
【TBRカナリアレポート】No,21-01
世界の原油需要の長期見通し
コロナ禍の落ち込みから回復した原油需要は低下の道をたどるのか
部長(産業経済調査部)
 チーフエコノミスト
福田 佳之

 英国の石油企業であるBP社が2020年9月に発表した「BPエネルギー見通し2020年版」では、今後、原油需要は新型コロナウイルス感染拡大以前の水準には戻らず、2019年が需要ピークであった可能性を示したことで衝撃を与えています。  しかし、このBP社の予測は、炭素価格が大幅に上昇し、CO2 排出が2018年比70%削減されるRapidシナリオ(2050年日量4,700万バレル)と、さらに社会的行動が変容してCO2排出が同95%削減されるNet Zero シナリオ(同2,400 万バレル)に沿ったものです。これらのシナリオでは、自動車の燃費改善と電動化が原油需要の低下を招くとしており、とりわけ自動車移動における移動手段としてのロボタクシーの普及が電動化をけん引するとしています。  一方、国や企業が従来の取り組みを続けるBAU シナリオ(18 年比CO2 排出10%削減、2050年日量8,900万バレル)では、原油需要はひとまず20年代前半において19年水準までほぼ回復し、その後30年まで横ばいとなるものです。BP社は決して、いずれのシナリオにおいても19年が需要ピークとなると考えたわけではありません。関係者がパリ協定の達成に向けて積極的に取り組んだ結果として、原油需要が低下するとみていることに注意が必要です。  なお、他の機関の原油需要見通しをみると、BP社のBAU シナリオよりも原油需要は落ちていません。BP社のBAU シナリオでは2030年以降徐々に低下していくとしていますが、石油輸出国機構(OPEC)が20年10月に発表した「世界原油見通し2020年版」では、コロナ禍から回復した原油需要は2040年まで緩やかに増加していき、40年時点において日量1億930万バレルでピークを迎えます。その後、2045年にかけて若干低下するとみています。また、11月に発表した国際エネルギー機関(IEA)の「世界エネルギー見通し2020年版」の公表政策シナリオ(従来の取り組みを継続)では、原油需要は2040年まで増加して日量1億410万バレルを記録するとしています。ただ、IEAは積極的な再エネ投資などが実施されて2070年のCO2実質排出ゼロを実現する持続的発展シナリオも公表しており、同シナリオでは、今後の原油需要はコロナ以前に戻るどころか下落することとなり、2040年時点で日量6,620万バレルになります。  20年9月に中国の習近平主席が、11月に日本の菅首相が、それぞれ2060年、2050年のCO2 排出実質ゼロを目指すことを表明しています。米国のバイデン新大統領も2050年までにカーボンニュートラルにすることを公約として掲げています。現在、世界各国は、コロナ禍からの回復において脱炭素社会構築に向けてCO2 排出実質ゼロとグリーン投資拡大に向けてかじを切るのかどうかが問われており、世界はどちらの長期見通しのシナリオをたどるのか分水嶺に差しかかっているといえるでしょう。

「TBRカナリアレポート」では、東レ経営研究所の研究員が時事的なトピックス等について解説します。
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PDF : TBRカナリアレポート No.21-01(486KB)