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2011年1月18日
「技術力」だけでは売れない
チーフエコノミスト
増田 貴司

 日本メーカー製の電子部品は、機能は優秀だが高価なために過剰品質といわれ、事業で は苦戦を強いられてきた。しかし、ここにきて世界におけるスマートフォン需要の拡大に 伴い、日本の高機能液晶パネルなどの基幹部品に米アップルなどから大量の注文が入り、 息を吹き返している。  もちろん日本の技術力が評価されてスマートフォン特需を取り込めたことは喜ぶべきこ とだ。しかし、これをもって日本メーカーが従来型の事業モデルに安住し、変革を怠ると すれば先は危うい。なぜなら世界の競争環境が変化する中で、高度な技術力とコストダウ ンだけで勝負するという日本の従来型の戦い方は限界が見えてきているからだ。  デジタル化の進展で、先端技術を要する工業製品でも短期間でコモディティー化(市況 商品化)し、新興国企業でもそれらの製品をすぐに低コストで量産できる時代が到来した。 もはや、高い技術力のみを武器にした高付加価値戦略では、勝てたとしても一瞬で、持続 的な競争優位は望めない。  今、日本企業に一番必要なのは、高度な技術力を収益につなげるビジネスモデルの創出 である。平たく言えば、自社の優れた技術・製品をどうやって売るのかという仕組み(売 る仕掛け)をつくることである。  日本企業が技術開発で世界の先頭を走っている自動車用リチウムイオン電池や発光ダイ オード(LED)照明などの分野でも、実用化の序盤戦で日本勢が健闘するのはほぼ確実だ ろう。しかし、そこで重要なのは、すぐ後に訪れるコモディティー化と価格低下が進む市 場の成長期に、日本勢がどこでどのように収益を獲得するかであり、そのための仕掛けづ くりである。  現状、高い技術力だけが他社との差異化策という日本企業はまだ多い。技術訴求とは違っ た、新たなビジネスモデルづくりの成功事例が数多く出てくることを望みたい。 (本稿は、2011 年 1 月 14 日 日本経済新聞夕刊「十字路」に掲載されました)