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2004年11月1日
経営センサー11月号 2004 No.67

■経済・産業

人口減少時代のマクロ経済展望

日本銀行 調査統計局 経済分析担当 佐藤 嘉子 

【要点(Point)】
(1)間近に迫っている人口減少とそれに伴う年齢構成の変化は、今後、労働市場の変化、貯蓄率の変化を通じて、マクロ経済に大きな変革を迫ることになる。
(2)労働市場では、就業者数の減少、一人当たり賃金の当面の上昇、総賃金の減少が想定される。また、家計貯蓄率は、今後緩やかに低下していくことが想定される。
(3)人口動態により経済成長率は、2010年代中頃以降で、毎年およそ1%ポイント押し下げられると試算される。また、就業率や出生率などに極端な仮定を置いたとしても、人口動態の経済成長率の下押し圧力はかなりの程度回避されるものの、完全には回避できない。

復調してきた日本の個人消費 -キーワードは「ライフスタイル」「こだわり」と「気まぐれ」-

福田佳之 産業経済調査部 エコノミスト

【要点(Point)】
(1)個人消費は2003年後半から外食、教養娯楽などの選択的支出を中心に、堅調さを持続している。これは消費者マインドの改善によるところが大きい。
(2)2004年の消費の特徴として、デジタル家電ブームと猛暑効果があげられ、デジタル家電ブームは同製品の世帯普及率を高め、消費にプラスに寄与したが、猛暑効果は限定的であった。
(3)原油高や税制改正・年金改革の影響というリスクが顕在化すれば、消費は今後腰折れする恐れがある。
(4)個人消費を年齢別に見ると20代、30代の消費は、「ライフスタイル」に合致した、個人の「こだわり」を前面に出したものとなっていることが明らかである。
(5)概して個人消費は「気まぐれ」であり、営業時間の延長やインターネット通販の拡充もそれに拍車をかけている。
(6)企業は現代人の複雑な消費行動を取り込むために、潜在的ニーズを顕在化させ柔軟に対応する努力を続けなければならない。

先進高度医療技術の最前線

飯田 汎 特別研究員

【要点(Point)】
(1)一層の寿命延長とQOL(QualityofLife:生活の質)を求める世界一の長寿国日本の先端医療分野は時代の活力を生み出す産業として期待されている。
(2)死因第一位である“がん”に対する国民意識が変わりつつあり、PETという早期発見の技術が注目されている。初期“がん”では内視鏡手術による切開・剥離法、ガンマナイフの導入、抗がん剤治療、免疫療法など治療技術の進展で生存率も向上している。
(3)ITによる先進医療も目覚ましく、電子カルテが医療の高度化を実現し、いかなる場所でも専門医の診断が受けられる遠隔医療技術に期待が集まっている。
(4)ロボット外科手術、内視鏡の進歩など高度機器の発展、再生医療、低侵襲手術システムなどの外科手術やテーラーメイド医療が医療分野に新たな道を開きつつある。
(5)近年のヒトゲノム解読以降のゲノムインフォマティクスの発展が、第二のバイオ医薬の開発を促進し、新たなビジネスチャンスが期待されているが、わが国のオリジナル医薬の開発とともに、少な過ぎるバイオベンチャー起業の促進が課題となっている。

■視点・論点

環境問題と企業の評価・信用、そしてCSR

同志社大学  総合政策科学研究科 客員教授 太田 元

 環境問題は人間しか起こさない、起こすことができない。その人間も、長い生命系の歴史の中で生まれてきたのであって、生命系を壊して生きることはできない。にもかかわらず、壊し続けている。産業革命以降、破壊のスピードが速まり、地球温暖化問題ひとつとってもこのまま行けば生命系の存続、人間の存続は怪しい。  人間の存在は不思議である。われわれは生命系、生態系を必要としている。生命系、生態系はわれわれを必要としているのだろうか。早い話が、自然は人間を必要としてはいないようである。しかし、われわれは自然を必要としている。それも自分にとって都合の良い自然を必要としている。自然を大切にしようというので、自然に親しみ、自然を理解し、自然を保護する活動が盛んになってきた。

■マネジメント

確実に中国に浸透する資生堂 -急がないビジネス戦略の実践論を聞く-

安楽 貴代美 繊維調査部

【要点(Point)】
(1)資生堂の中国本土進出は営業展開上常識と思われる上海からではなく、北京から始まった。国際都市上海と比較して、ほとんどゼロからのスタートとなる北京であったが、長い時間をかけた交流から、信頼関係を育て、合弁企業設立に至る。
(2)中国人女性のための現地に根ざした製品を目指して商品開発を行い、消費者とじかに接するため独自の販売網を構築。店頭での成功が今日のブランドイメージを確立した。
(3)中国の市場としての成長性に加え、豊富な資源(漢方薬・人材・各種ノウハウ等)にも注目。販売網の拡大と再編を始めとして、更なる展開を計画している。

■人材

人脈から「知脈」へ -富士男の面白リーダーシップ論(6)-

渕野 富士男  取締役 人材開発部門長

【要点(Point)】
(1)「高度知恵社会」とは、情報や知識を「知恵」に高め、新しい知的価値を創造する社会である。仕事や人生を豊か面白くにするためには「知恵」がいる。知的生産性を上げるには、「知恵」を集める必要がある。
(2)一人の「知恵」には限界がある。「知恵」と「知恵」を重ねあってこそ、面白い独創的な企画や成果が出る。「知恵」を結集するには、単なる人脈を「知脈」に変える必要がある。
(3)本誌連載中の「面白リーダー」は、「知脈」のパワーを最大限活かして、仕事や人生を更に豊かに面白くしようとする。今回は「面白さ」を左右する「知恵」に注目して、「知脈」の意義やその生かし方を掘り下げてみたい。

人事歳時記

北原 正敏 特別研究員

 キャリア開発論が花盛りである。なぜだろう。1つには企業が組織のニーズを優先させた能力開発体系から、社員の特性を活かし、両者にとってwin・winの結果になるように教育体制を抜本的に見直そうという意識があり、一方、社員にしても終身雇用はいまや死語で“キャリア”が形成できたらより充実した仕事、より高い報酬というオアシスを求めて(実は錯覚が多いが・・・)、いつでも今の会社を飛び出してやろうという気持ちがある。また、世間も、やれエンプロイアビリティーだ、ポータビリティーだと、あたかも転職推奨論ばかりである。はたしてそれで良いのか?

■経済用語解説

ちょっと教えて!現代のキーワード  「出生率」「HDD」

■ズーム・アイ

教育も自己責任か

永井 知美

 デフレ、デフレと叫ばれて久しいが、着実に価格水準を切り上げている分野がある。教育費である。  グラフに見るように、他の分野の価格下落が止まらないのに対して、右肩上がりのカーブを描いているのが教育費である。確かに、娘が通う私立中学校の授業料は毎年上がっているし、塾や予備校が価格競争に突入したという話も聞いたことがない。  大学の授業料を調べてみて驚いた。国立大学の初年度納入金が大幅に値上げされているのである。昔々、私が在学していた頃は30万円台前半だったのが、2004年度には倍以上の802,800円になっている。1975年度には86,000円だったというから、まさにデフレ無縁のインフレ街道をひた走ったわけである。  どうしてこんなに上がったのか。財政難が大きな理由のようだが、私立大学と比べて不公平という変な理屈もあるようだ。学費が安い国立大学があるから進学できた人もいただろうに、腑に落ちない言い訳ではある。

■今月のピックアップちゃーと

日本からの国際特許出願は急増  ~世界知的所有権機関の国際特許出願件数~

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