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2019年5月20日
繊維トレンド2019年5・6月号 2019 No.136

■特別レポート

東レ株式会社・株式会社東レ経営研究所 共催 繊維産業シンポジウム講演抄録 東レグループの地球環境事業への取り組みと新しい成長戦略

東レ株式会社 地球環境事業戦略推進室 室長 野中 利幸

 去る3月1日に、金沢市のANA クラウンプラザホテル金沢において、東レ株式会社と株式会社東レ経営研究所の共催で繊維産業シンポジウム「北陸産地の新たな成長と産業競争力強化」を開催しました。当日は株式会社日本総合研究所主席研究員 藻谷浩介様、ライフスタイルアクセント株式会社代表取締役 山田敏夫様、東レ株式会社野中利幸地球環境事業戦略推進室室長の3人の講師にご講演いただきました。本号ではそのうち、野中室長の講演内容をご紹介します。なお、山田様のご講演内容については、本誌「繊維トレンド」7・8月号でご紹介します。

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■ファイバー/テキスタイル

中国繊維産業が取り組むサステナビリティ推進

東レ株式会社 北京事務所長 寺師 啓

【要点(Point)】
(1)中国の繊維産業は、アパレルブランドの労働問題がクローズアップされた時期から、政府、業界でサステナビリティへ取り組みを開始しており、近年では労働者の人権のみならず各ステークホルダー、環境、イノベーションや市場の管理に至るまで、その対象範囲を広げている。
(2)具体的な活動推進は中国紡織工業聯合会の社会責任弁公室が担っており、サステナビリティに関連する中国政府の政策を繊維業界として具現化する一方、国連、OECDやZDHC等 国際機関・組織とも積極的な関係構築を進めている。

衛材用不織布の動向とトピックス

技術ジャーナリスト 塩谷 隆

【要点(Point)】
(1)世界で急伸中の不織布において、用途別では衛材が非常に大きな割合を占めており、各地域において、30~50%となっている。2013~2018年にかけて、衛材は年率4.2%で成長しており、その中でもアジア太平洋地域の年平均成長率が5.3%と高い。
(2)衛材用途の代表的製品はオムツと生理用品である。日本においても、インバウンド消費や輸出も含め、乳幼児用オムツ生産量は近年大きく伸びている。大人用紙オムツや軽失禁用途の需要も増大中で、これらは差別化と製品全体の高品質化が進行している。
(3)衛材分野においても、これまで進められてきた高機能性の追求、バイオ化への対応とともに、最近では、スマートテキスタイル化の進展が見られる。
(4)欧米を中心に、ワイパーを含む衛材の「水解性」(Flushability)という特性が注目されている。トイレに流してよいものといけないものを明確に区分するとともに、流してよいワイパーや衛材の設計が重要である。一方、日本では、下水道による使用済み紙オムツ処理検討が進められている。

トルコの経済と繊維産業

トルコ共和国 大統領府投資局 シニアアドバイザー 青木 雄一

【要点(Point)】
(1)トルコの経済は中期的にみると安定した成長を持続してきた。トルコ国内市場の成長・拡大とトルコからの輸出を目的とした生産拠点がビジネスチャンス。
(2)トルコの繊維産業は長い歴史、幅広い業態を背景として生き延びてきた。競争力を維持するための業態の変革の連続が今日の成長を支えている。

フィレンツェメンズファッション展示会トレンドの推移に見る 欧州繊維産業の製品・技術開発の行方

株式会社インテグレード 代表取締役社長 欧州繊維専門月刊誌『Twist』 在日特派員 永松 道晴

【要点(Point)】
(1)世界のメンズ衣料の先行きを示すことに主導的役割を担っている展示会フィレンツェのピッティイマジネウオモの過去3年のトレンド推移をたどってみると、1980~2000年初頭に生まれたSNS やTwitterを駆使するミレニアル・デジタル世代で環境問題やエコにこだわる若者を対象として、伝統的なクラシックスーツの感覚をアスレジャーやスポーツなどアウトドア用途に広げる戦略を進めていることが見て取れる。その基本コンセプトは、使用素材のリサイクルと閉鎖生産システムで、プラスチック等の廃棄物から地球環境をまもる物つくりの高度化を目指し、素材から製品流通までの全バリューチェーンを再構築してサステナブルで完全なトレーサビリティを確かなものとするという信頼性の高い生産流通システムを確立することだ。これに対応して綿やウールや麻などの天然素材の持つ特性に撥水性や通気性などの機能性を付与した化合繊素材の開発が進んでいて、カジュアル・スポーツ・アウトドア衣料分野でさまざまな新製品が紹介されている。
(2)デニム用途を中心にサステナビリティとトレーサビリティへのグローバルな対応に挑戦する企業活動と製品の紹介
1)日本:帝人フロンティア 綿・麻などの天然繊維を代替し得るポリエステル
 繊維Solotex の開発 
2)日本:旭化成 ロイカ弾性糸 Cradle to Cradle(C2C)サステナビリティ
 基準の‘Gold’認証を取得
3)オーストリア:レンツィン テンセルの先行するグローバル戦略 
4)イタリア・英国:リサイクル素材の活用を先導 
5)トルコ・パキスタン:ポストコンシューマー廃棄綿の活用 
6)インド:ジーンズ用途にグラフェン(Graphene)を採用

ファッションとテクノロジーを考える 丸井織物株式会社 -繊維工業の自動化の先-

日本教育財団国際ファッション専門職大学 国際ファッション学部 准教授 篠原 航平

【要点(Point)】
(1)丸井織物株式会社は、昭和60年代から工場の織機をネットワークで結び、現在では高い水準で生産が自動化されている。
(2)IT活用の契機となったのは織機を中心としたFAシステム(自動化)の構築。
(3)ITを活用する上で重要な要素は、現場で改善すべき点を見つけ、ITとマッチングさせることができる人材。
(4)同社の自動化のシステムは、小さな改修を積み重ねてきた継ぎ足しのシステム。
(5)熟練工の技術やノウハウといった暗黙知は、可能な限り形式知化し、可視化していく。
(6)ITの活用に際しては外注を活用している。
(7)自動化により、品質、納期、コストに対して大きな効果があった。
(8)繊維工業でITの活用が進まない理由は、経営者がITに興味がないため。

■縫製/アパレル

アジア最強のプラットフォーマー、アリババの成長戦略

株式会社牛田 代表取締役 牛田 賢

【要点(Point)】
(1)アリババグループは、2000年代、CtoC サイト“淘宝網”、BtoCサイト“淘宝商城”(後に“天猫”)、キャッシュレスでの決済サービス“支付宝(アリペイ)”などで事業を急成長させた。
(2)現在は、国内外でのECサイト、メディア・エンターテインメントサイトの運営にとどまらず、高度自動化物流、クラウドサービス、リアル店舗の運営、金融サービスなど多岐にわたる事業を展開している。
(3)リアル店舗の情報をオンライン化し顧客データを一元管理することで販売予測の精度を高めることができ、在庫の最適化、配送経路の最適化を実現できると考えている。
(4)2014年以降、百貨店、ディスカウントストア、即配サービス、食品スーパーなどに出資し、それらの企業と共に伝統的な小売業の在り方を根本から覆す壮大な実験を行っている。これを「新小売」と称し、巨額の投資を継続中である。
(5)2018年以降、パキスタンおよびトルコのEC企業、ドイツのビッグデータ関連企業、中国のマイクロチップメーカー、イギリスの金融サービス企業などを買収している。

日本市場におけるファストファッションの現状

ムーンバット株式会社 顧問 山田 桂子

【要点(Point)】
(1)ファストファッションがブームとなったのは、2008年だった。象徴的な存在だった、H&M銀座店が2018年7月に閉店。日本市場におけるファストファッションも転換期を迎えている。
(2)H&Mはデジタル戦略に出遅れたこともあり、成長が鈍化。ギャップは、日本から撤退したオールドネイビーが好調で別会社化するが、ギャップ自体は低迷。
(3)オンラインと実店舗を統合したインディテックス、日本市場から海外へとシフトするファーストリテイリングは、今後も成長が見込まれる。

■新市場/新商品/新技術動向

「UNITED CREATIONS 041 with UNITED ARROWS LTD.」を立ち上げ -ユナイテッドアローズの試み-

フリージャーナリスト 土井 弘美

【要点(Point)】
(1)041プロジェクトと組み、「チャリティではない」障害や病気を持つ人々を起点とした服づくりをスタート
(2)所属部門を超えた16名の有志が、ヒヤリングからスタートして形にしていった
(3)第一弾は2018年4月に受注スタート、一定数の注文があれば作るクラウドファンディング型のECサイトで販売
(4)第二弾は2019年2月に販売スタート、ユナイテッドアローズのオンラインストアで販売している

■キーポイント

OECDデューデリジェンスガイダンス

日本化学繊維協会 常務理事 杉原 克

 最近、企業のデューデリジェンスが注目されている。デューデリジェンスは聞き慣れない言葉だが、due(当然の) diligence(義務)で、企業が行うべき当然の義務という理解になる。

■統計・資料

主要合繊糸・綿・織物の相手国別輸出入統計

1.ナイロンフィラメント(N-FY)の輸出 2.ポリエステルフィラメント(P-FY)の輸出 3.ポリエステルステープル(P-SF)の輸出 4.アクリルステープル(A-SF)の輸出 5.ポリエステル長繊維織物の輸出 6.ポリエステルフィラメント(P-FY)の輸入 7.ポリエステルステープル(P-SF)の輸入