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2015年7月23日
未来切り拓く情熱に火を
チーフエコノミスト
増田 貴司

 様々なモノがインターネットでつながる IoT(モノのインターネット)の時代となり、産業を取り 巻く環境は大きく変化している。今年 6 月に政府が閣議決定した「日本再興戦略 2015」では、 「ビジネスや社会の在り方そのものを根底から揺るがす、『第四次産業革命』とも呼ぶべき大 変革」が進んでいるとの認識が示された。  変革期の今は、新時代を切り拓(ひら)く大胆な挑戦に踏み切ることが重要だ。だが、伝統 的な日本人の未来観がその妨げになりがちだ。日本では、未来は待てば向こうからやってく るものと考える傾向が強く、自ら未来を創り世界を変えようとする発想が乏しい。これに対し、 アメリカには未来を語り、未来を引き寄せようとする文化がある。それはグーグルやゼネラ ル・エレクトリック(GE)の行動に典型的に表れている。  こうした文化的な差異を乗り越えて、日本産業が国際競争力を維持するためには、社会の 中に「未来を切り拓き、世界を変えたい」という情熱をたきつけ、挑戦を促す仕組みや仕掛け を意識的に埋め込んでいく必要がある。ハイリスクだが重要度の高い開発テーマや難事業に 対して、賞を設けた公開型のコンペティション(競技会)を開催するなどの策を講じるべきだ。  日本にも「ロボコン」と呼ばれるロボットコンテストがあるが、これは若者にものづくりの面白 さを教えるという教育目的が主眼で、実用化や事業化、新産業創出とは距離がある。米国防 総省の国防高等研究計画局(DARPA)が主催する災害救助用ロボット競技大会(ロボティク ス・チャレンジ)や、宇宙ロケット開発などに賞金を設けて競わせる米国の非営利組織 X プラ イズ財団などを参考にして、未来を切り拓くイノベーターの登場を促す競い合いの場をたくさ んつくるべきだ。 (本稿は、2015 年 7 月 23 日 日本経済新聞夕刊「十字路」に掲載されました)