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2012年4月1日
広まれ!オヤジの味「パパごはん」
上席シニアコンサルタント
塚越 学

 最近、オフクロの味ならぬ、オヤジの味が広がりつつあるのをご存知でしょうか。育児に積極的なイクメンの広がりから、東京ガスとタイアップし「パパごはんプロジェクト」が発足し、日々Facebook にパパごはんの画像が次々とアップされているのです。  パパごはんは単なる男の趣味料理とは違います。  男の趣味料理は、自分の満足のために、心ゆくまで時間をかけ、高い食材とキッチン器材を使って、レシピに従い一品一品、料理が出来るまで家族を我慢させて、食べ終わっても自分では後片付けをしなかったりします。まるで長時間労働の中、過剰品質の仕事を積み上げる職場の働き方にも似て、自己満足のこだわりの世界と言えそうです。  一方、パパごはんは職場で言えば、プロジェクトマネジメントに似ています。クライアントのニーズ(妻と子どものお腹のすき具合)に従い、締め切り(30 分以内)までに、限られたリソース(冷蔵庫の在庫や安くて良い食材)を使って、効率的に(何品かを同時に)行い、成果(家族の笑顔と満足)を挙げて、振り返り(後片付け)を行うことで次につなげるのです。  私は、次男が生まれる前後1 カ月の育休で毎日三食作っていました。職場復帰した夜、帰宅すると夕食を作り終えた妻が納得いかないという顔で私に詰め寄ってきました。「料理中に、長男がキッチンに入ってきて『ママ何しているの?』と言うから、『料理してるのよ』と答えたら、長男がなんて言ったと思う?」と言うのです。「え、何?」と聞くと、妻はこう答えました。「『パパの真似っこ?』だって。失礼しちゃうわ!」。   なるほど、料理をしばらくパパが作っていたので3 歳の長男からすれば、産後、久しぶりにママが料理をすればそういう発想になるかもしれません。妻には悪いですが、それを聞いた私は心の中でガッツポーズをとりました。オヤジの味が浸透しているという感触をつかんだからです。  私も最初から料理ができたわけではありません。次男を妊娠中のとき、パパ友の料理研究家が出したパパ料理本を目にしたのがきっかけでした。モーレツサラリーマンだった彼は長女の誕生で料理に目覚め、日本初の「パパ料理研究家」として男の趣味料理とは違う「パパごはん」という分野を作ったのです。しかし、残念なことにその長女は難病にかかり、1 年間の闘病生活ののち、今年1 月に入って他界しました。わずか9 歳という短い生涯でした。1 回1 回の食事を大切にした彼は長女と濃密な9 年間を過ごせたに違いありません。  彼のように娘に先立たれないまでも、子どもは必ず巣立っていきます。子どもとの食事はあと何回あるでしょう。「パパおいしい!」という言葉に幸せを感じるのはあと何回でしょうか。そう考えると、1 回でも多くの料理を作ったり、族で食卓を囲む時間を増やしたいと思います。幸せは日常に転がっていますが、いつまでも転がっているのではなく期間限定であることが多いのです。  仕事を終え、パパごはんを作るために乗り込んだ電車の窓から煌々と光り輝く高層ビル群を見るたびに職業柄、「日本の父親たちのワークライフバランスを1 日も早く実現しなくては」と強く思わされます。