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2017年6月1日
幸せを呼ぶ人間関係とは!?
コンサルタント
金子 真弓

父がリタイアしてから、十数年が経過しました。 最近では時折、同窓会への参加やかつての級友との懇談会の音頭取りをするなど、旧交を温めることを楽しんでいるようです。  サラリーマン時代、父はいわゆる"仕事人間"で、平日は朝早くに出勤して夜遅くに帰宅、たまの休日は家族サービスや休息に時間を使っていたイメージが強くあり、現在のように友人と集ったり、習い事を始めて趣味や新たなコミュニティを持ったり、といった姿は当初、大変意外に感じたものです。    世の中では趣味や社会活動など、生き生きとセカンドライフを過ごすシニアも多い一方で、職場を失った後にすることが思いつかない、家庭には居場所がないのでは、と定年後の生活に不安を抱える中高年も多いと聞きます。  ときに、大変不名誉ながら"自殺大国"と呼ばれるこの国では近頃、労働者の"過労自殺"や"過労死"が大きな注目を集めています。しかし、全体の4割近くを占める60代以上の自殺者の多さもまた、見過ごせない問題と言えるでしょう。これには、地域との関係性の希薄化や生涯未婚率や熟年離婚件数の上昇、あるいは少子高齢化による単独世帯の増加などが招く、高齢者の"孤立"や"孤独化"が大きく影響していると言われています。  とりわけ、男性の自殺者は女性の約2倍にものぼるという事実もあります1。古くを遡れば、女性は集落で周囲と協力しながら生活していく上で横のつながりやその強化に対する意識を強く持ち、男性は集団での狩猟において上下の伝達や関係を重要視してきました。定年退職後の人間関係の途切れが男性にとって、より高いストレス状態を生むということは、こうした関係性構築における傾向差が関係しているのかもしれません。    計724名の被験者の仕事や家庭生活、健康状態など、あらゆる面から追跡調査を行っている、ハーバード大学「グラントスタディ」の調査リーダー、ロバート・ウォールディンガー博士は、TED Talks『What Makes a Good Life?』(2015年)の中で、「人が健康かつ幸福でいられるために最も重要なことは、富や名声を得ることでもハードワークに没頭することでもなく、"良い人間関係"を築くことだ」という研究成果を明らかにしました。  同時に、家族や友人など、人とのつながりを多く持つ人ほど健康で長生きする傾向にあり、そのつながりは数ではなく、質が優先されるということ、そして"良い人間関係を築き、保っていくことは脳機能にまで影響を与える、ということも主点として語っています。    私自身、父の行動を見ていて、友人や社会とのつながりについて考える機会が増えたように思います。昨今のインターネットやSNSの発達に伴い、手軽に"誰か"とつながることや、一度途絶えた関係の再構築でさえもが可能になりました。しかし、それが便利だと感じる一方で、個々のつながりが希薄になりがちであると感じることもあります。  人生は「80年時代」から「100年時代」へ。幸福な人生を送るために、「いいね」のみでつながる"誰か"より、もっと身近で、より良質な関係性を築くためのメンテナンスや、コミュニティへの参加を心がけたいものです。