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2009年9月1日
繊維トレンド9・10月号 2009 No.78

■海外動向

中国化繊工業への世界的金融危機の影響と対応策

日本化学繊維協会 技術グループ主任部員 大松沢明宏

【要点(Point)】
(1)第15回中国国際化繊会議において、中国化繊工業協会は、「中国化繊工業の世界的金融危機の影響分析と対応策」と題する報告書を公表した。同報告書には、世界同時不況が中国化繊工業に及ぼす影響、不況を乗り越えて成長を回復するための対策が纏められている。
(2)中国化繊工業協会は、不況による影響として、(1)原油価格の乱高下による操業リスクの高まり、(2)需要減退(化繊及び関連製品の輸出鈍化)、(3)設備投資の急速な落ち込み、などを挙げている。
(3)2008年の化繊供給量は2,316万トン、前年比0.4%増と過去26年間で最低の伸び率にとどまった。設備稼働率は2008 年第4 四半期を底にして、2009年に入ってからは回復基調を見せているが、業界は引き続き警戒感を持って見守っている。
(4)他方、中国国務院は、本年4月に繊維産業調整・振興計画を公表。化繊工業にかかわる対策のポイントとして、(1)先進技術による設備技術・生産管理水準の向上、(2)ハイテク繊維研究開発の加速、(3)各種化繊素材の高機能化・高付加価値化、などが盛り込まれている。中国化繊工業協会では化繊工業の活力を早期に取り戻すためこの計画をスタートさせている。

東アジア経済統合とビジネス環境の変化

日本貿易振興機構 企画部 事業推進主幹(ASEAN・南西アジア) 若松勇

【要点(Point)】
(1)日本を含め東アジアでは、自由貿易協定(FTA)の発効、物流インフラの整備などにより、経済統合が急速に進展している。
(2)日ASEAN 経済連携協定(AJCEP)などは、ASEANの生産拠点を活用したチャイナプラスワンの動きを後押しすることになろう。
(3)東アジアでは購買力を持った中間層が拡大している。FTAを活用し、ASEANや中国の生産拠点からの市場開拓も進めるべきである。

世界同時不況後の日中アパレル業界の動向

坂口昌章客員研究員 有限会社シナジープランニング 代表取締役

【要点(Point)】
(1)2008 年までの中国市場は「需要>供給」であり、プロモーションによる知名度の向上と市場シェア獲得という新規顧客獲得戦略が中心だった。
(2)2009 年以降の中国市場は輸出企業の内販参入、外資企業参入等により、競合と淘汰の時代を迎える。中国企業は、「需要<供給」に対応できる国際水準の企業にレベルアップしなければならない。
(3)日本アパレル企業が中国市場で苦戦しているのは商品だけの問題ではなく、「資金調達」「中国内販へのサプライチェーン」「大都市への直営店戦略」にも問題がある。
(4)今後の日本アパレル市場は外資企業、異業種を加えた競争が激しくなる。一部のアパレル機能は「商社+企画会社」に移行し、海外からの直接調達が進んでいる。また、ファッション消費にもインターネットの影響が強まっており、その対応が求められている。
(5)今後の中国アパレル業界は、縫製工場からアパレル企業への脱皮、直営店戦略、代理商との新たな連携強化が課題になる。
(6)今後の日本アパレル企業は、100 ~ 300 坪のメガストアMD 構築、日本オリジナルのブランド力、ICTを活用したダイレクトマーケティングが課題になる。
(7)時代の変化は待ったなしであり、3 年以内に課題解決を図る必要がある。そのためには社内外の人材と能力を結集しなければならない。

PDF : 詳細(PDF:393KB)

China News 上海のカルチャー事情とショッピングモールイベント

横川 美都 研究員

アートと音楽。ファッションとつかず離れずの距離にあるこのふたつは筆者の生活にとっても必要不可欠な要素。何気なく過ごしていても世界中の情報がふんだんに入ってくる東京での生活に比べ、中国にいると自分から積極的に情報を収集しないとなかなか身近に触れることができないものでもあります。また、硬い意味での「芸術」というとやはり文化の中心である北京の方が活気があり、国内の著名アーティストも北京を中心に活動しているのが現状です。ただ、幸いなことに商業的にはやはり上海、ということなのでしょうか? 英語や日本語のフリーペーパーやネットでの情報を注意して見ていると、外タレなどの大型のコンサート(7 月に安室奈美恵、8 月にはアメリカのバンドLinkin Park がコンサートを開催した)やクラブイベントやライブハウスでのインディーズ・バンドのライブ、有名美術館そして市内に点在する小さなギャラリーなどでのエキシビジョンが盛んに行われていることが分かります。筆者は時間が許す限りアンテナに引っかかったイベントには顔を出すようにしていますが、それは、個人的な趣味という以外にも、こうした日本人ビジネスマンがなかなか足を踏み込まないようなところで、この街のカルチャーが変化していることを強く感じるからです。 今回は、森ビルが浦東に建設した上海環球金融中心Shanghai World Financial Center(以下SWFC)内にオープンしたアートギャラリーとショップのオープニングイベントと、上海のインディーズ・レーベルとタイアップをして開催されたショッピングモールのライブイベントをご紹介します。

PDF : 詳細(PDF:529KB)

ファッション業界とインターネット媒体

ニューヨーク州立ファッション工科大学 准教授 川村由仁夜

先進国を中心に、売り場で商品に触れることも直接見ることもなく、インターネットで衣料品を購入することが今や当たり前となる中で、コレクションショーの効果、効用が薄れつつある。インターネットショッピングが成熟期に入り、ファッション業界ではラグジュアリーブランドを含めた企業各社の生き残り競争における重要なポイントの1 つとして、インターネット媒体を活用した顧客の開拓や囲い込みを目的に、更に一歩突っ込んだインタラクティブな情報発信とリサーチに取り組んでいる。今号では、その最新状況についてレポートする。

シリーズ テクニカル・テキスタイルの開発動向 第4回 テクニカル・テキスタイルの用途開発 -(その1)輸送機・工業資材、建築・土木、農業資材-

テキスタイルジャーナリスト 米長 粲

【要点(Point)】
(1)テクニカル・テキスタイルの加工技術は既存の衣料用紡織編加工技術をベースに、機能性を向上させるために、独自に開発された加工技術が製品化のキーテクノロジーである。
(2)ハイブリッド複合糸、3D 嵩高布帛形成、ナノファイバーや複合不織布加工、独自の細幅織物と組紐、多軸多層構造布帛など独特の加工技術がある。
(3)仕上加工は紫外線加工、電子線加工、レーザー加工、スパッタリング加工など環境に配慮された機能性物理加工やコーティング技術が開発されている。
(4)テクニカル・テキスタイル特有の機能と形状を維持するためレーザーカット、縫製など独自の製品形成のための裁断、縫製が開発されている。

■国内動向

シリーズ 日本ファッションアパレルの課題と今後の展開 第4回 ミラノ・トリノで見たラグジュアリーブランド“プレタポルテ”の生産工程について

文化女子大学 服装学部 教授 正田康博 信州大学名誉教授 繊維学部 特任教授 大谷毅

【要点(Point)】
(1)“プレタポルテ”の生産業者(以下アパレルメーカー)は、規模拡大を避けて属人的経営を進め、一般管理費などの期間原価をセンス、美、風合いを追求する衣服造りのための製造原価に充てている。
(2)アパレルメーカーの生産工程は発注者のメゾンが支配するのではなく、メゾンのクリエーションを積極的に実現する立場にあり、設計と生産の場面でかなりのノウハウをメゾンに提供する。
(3)アパレルメーカーはCAD 設計CAM 裁断する一方で、定評ある昔ながらの機械を駆使する。
(4)設計・生産のノウハウはこの業界数十年の超熟達者(老女(CTO)型)が各工程で属人的に工員を指導して伝授する。あるいは多数の熟達モデリスタの相互作用で獲得していく(OJT(CEO)型)。
(5)メゾンが要求する“プレタポルテ”の生産は、アパレルメーカーの各工程の総合力を必須とするので、CTO やCEO の属人的な要素が大きく反映される。
(6)大ロット生産や一般的に適用される工業規格ではなく、メゾンのCD(クリエイティブディレクター)の要求に忠実な小ロット高品質生産を進める。

PDF : 詳細(PDF:478KB)

シリーズ 高コスト先進国における企業生き残りのKey Factor - 第11回 異質需要とマーケティング構想力 - - キングジム社の創発型マーケティング行動システム -

青山学院大学 経営学部 准教授 東伸一

【要点(Point)】
(1)「計画・管理型」のブランド化概念が一部でその制約に直面する現在、ひとつの代替的なブランド観としての個別文化創造性に着目することで、マーケティングによる関係性づくりの多様な側面が明らかになる。
(2)メーカーと流通業者、(流通業者を経由した)メーカーと消費者の関係だけでなく、ある製品を購買・使用する消費者間のコミュニティは、個別文化によるブランド化概念のひとつのカギを握っている。
(3)個別文化創造によるブランド化は、長期的な時間軸を要する活動であるだけでなく、「計画・管理型」のブランド概念と比較すると、目的合理性水準の低い考え方である。したがって、この指向を追求するためには、長期的な視野からマーケティング活動が許容される環境が求められる。
(4)キングジム社の経営理念のエッセンスは、「独創的な商品をもって文化を創造する」という点にある。「独創」という極めて属人的な当て推量(アブダクション)によるアイデアを集団的に共有される価値・意味を帯びた文化に転換するために、どのようなマーケティング行動システムに対する考え方が作用しているのであろうか。

環境低負荷型染色加工技術の着眼点IV

森本技術士事務所 技術士(繊維) 森本國宏

【要点(Point)】
(1)ポリエステル繊維の染色に多用されている液流染色機に最近新たな省エネ・節水の機構が日欧のメーカーより提案され、現在多くの事業所で従来装置の改造が実施され始めている。
(2)吸尽染色法での染色浴の挙動をモニタリングする装置の開発が歩留まりと省エネに効果を上げると期待されている。
(3)染色加工装置最大のエネルギー消費装置であるテンターの省エネ技術の紹介。

百貨店におけるアラ還ブランドの現状とアラ還ブランドのライフシーン対応

東京ファッションプランニング株式会社 デザイン・企画カンパニー 社長 山田桂子

 

【要点(Point)】
(1)百貨店ミセス服=アラ還ブランドと定義付けて、売上上位店舗で7 店以上展開しているブランドを整理すると、オーソドックスエレガンス、コンテンポラリーエレガンス、コンテンポラリーカジュアル、ジャパニーズオリジナル、スポーティエレガンスの5 テーストに分類することができる。
(2)おばちゃんから「おばちゃん服しか売っていない」と言われてしまう現在の百貨店ミセス服は、ファッション感度の低い客層中心になっている。
(3)百貨店ミセスブランドは、「よそ行きの高額な服ばかり」で構成されている。アラ還世代の重要なライフシーンの一つとなるプレジャーシーンに対応しているブランドは極めて少ない。

■知りたかった繊維ビジネスのキーポイント

AJCEP(日アセアン包括的経済連携)とは

日本化学繊維協会業務調査グループ 主任部員 鍵山博哉

■統計・資料

主要合繊別・国別・メーカー別設備能力(現状及び増設計画) 合繊原料編

・カプロラクタム ・テレフタル酸 ・DMT ・エチレングリコール ・アクリロニトリル

主要合繊編

・ナイロンフィラメント ・ポリエステルフィラメント ・ポリエステルステープル   ・アクリルステープル ・レーヨンステープル ・スパンデックス ・スーパー繊維