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2015年6月17日
システム化で先行するドイツ
チーフエコノミスト
増田 貴司

 昨今の産業の潮流の一つにシステム化がある。スマートフォン、カーナビなど、システム化 された商品が増え、付加価値の源泉が単体のモノ・技術からシステムへと移りつつある。  システムとは、ある成果や結果が継続的に導かれる仕組みのことで、その仕組みを構築す ることがシステム化である。すご腕の営業マンや職人でなくても結果を出せるようにするのも システム化だ。日本は、「匠(たくみ)の技」や属人的なスキルを重視する伝統もあり、システ ム化は不得意である。だが、国際分業が進む中で中核的な地位を占め、利益をあげるには、 システム化が鍵を握る。  ドイツが国家戦略として推進している製造業強化策「インダストリー4.0」についても、この観 点から注目する必要がある。同戦略の核となる IoT(インターネット・オブ・シングス)に関して は、日本企業も同様のメニューに取り組んではいるが、システム化の点ではドイツがはるか に先を行く。  日本の IoT が 企業レベル、従来の延長線上の生産効率化の対応にとどまるのに対し、ド イツは官民一体で、自国製造業が将来も競争力を維持するためのビジネスモデル刷新に注 力している。ドイツが強みを持つ生産技術を社内外でつなぎ、標準化し、オープン化すること により、特注品を量産品並みのコストでつくるマスカスタマイゼーションの実現を目指してい る。  ドイツの戦略の背景には、米 IT(情報技術)企業が自動運転車の開発など製造業シフトを 強める中で、ドイツの製造業が生き残るためにはパラダイムを変えるしかないというシステム 思考がある。  日本も従来型のものづくりにあぐらをかいていると、先は危うい。新時代を生き残るには、シ ステム化の発想と戦略をもつことが不可欠だ。 (本稿は、2015 年 6 月 17 日 日本経済新聞夕刊「十字路」に掲載されました)