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2009年11月1日
中国旅行はお金がかかる
チーフアナリスト
永井 知美

 「中国旅行はお金がかかりますねえ」    ある大学教授からこの言葉を聞いたときは、思わず笑ってしまった。中国は物価が安い。お金がかかるとは変ではないか。  先日、桂林ツアーに参加した私はこの言葉を実感することとなった。漓江下りで有名な桂林は世界中から観光客が集まる。その観光客を狙って物売りが出没するのである。しかも、その売る気たるや半端ではない。  物売りには店舗型、屋台型、個人型と様々な形態があるが、空港内の免税店にしろ、個人の物売りにしろ、何が何でも売ってやろうという意気込みに変わりはない。観光客が通りそうなところには必ず物売りが控えており、お菓子、衣類、民芸品の類の売り込みを図る。桂林市内でツアーバスに乗り込もうとしたとき現れた扇子売りは、「4本千円(なぜか円が好まれる。しかも千円の場合が多い)」と言うのを断ると、当方の手の上にどんどん扇子を積み上げて断れない状況に持ち込み、根負けして払うと意気揚々と引き上げて行った。後で扇子の数を確かめると15 本。原価は一体いくらだったのだろうか。  値引き交渉して値下げさせても油断はならない。某ホテル内のみやげ物屋でお菓子を眺めていたところ、お菓子3箱90元を75 元にまけると言う。100元渡すと別のお菓子を2 箱見せられ、「全部で100元。おいしいよ、味は保証する(日本語)」と迫ってくる。気合に押されて買ってしまった。冒頭の言葉を吐いた大学教授の知人は、西安に出張した際、書画の類からカーペットまで買い(そもそも買い物好きかもしれないが)、20万円以上散財したそうである。私の被害額(?)はそれに比べると微々たるものである。  桂林は世界的観光地だけあって街並みが美しく、ゴミもたばこの吸殻もほとんど落ちていない。ただ、日本と決定的に違うのは、過去と現在が混在したような圧倒的な「格差」の存在である。BMWの隣をリヤカーが通り、軒が傾いたような古ぼけた家のそばに欧風高級マンションが並ぶ。高級マンションでは、部外者が入らないように物々しいゲートの脇で警備員が見張っていた。  景気刺激策のためか妙に道路工事が多かったが、作業の様子を見ていると建設機械はあまり使われていない。スコップで掘った土を天秤棒で運んでいる。私は産業分析が本業なので、中国ではなぜ最新鋭の工作機械をあまり使わないのかという質問を専門家にしたことがあるが、答えは高水準の機械類をそれほど作っていないからというのと、省力化が進み過ぎると失業者が増えて困るからというものであった。農作業を見ていても、農機はほとんど見かけず、桂林郊外で見かけた農婦はクワで畑を耕していた。  一日の観光を終えてホテルに戻ると、先進国に全く引けをとらない豪華な宴会場で若いカップルが結婚式を挙げていた。クワで畑を耕す人と米系高級ホテルで披露宴を開く人。中国は沿海部と内陸部の経済格差が言われて久しいが、同じ都市内にも大きな格差が存在する。だが、何より印象に残ったのは、桂林で出会った人々の、明日は今日より少しでも豊かになってやろうという強い意志だった。