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2015年5月7日
誠実・安心のブランド
チーフエコノミスト
増田 貴司

 2014 年に 1300 万人を突破した訪日外国人旅行者による消費が盛り上がっている。消耗品 では、菓子や食料品、哺乳びん、化粧品など日本では当たり前の商品を、訪日外国人が大 量に購入している。これらは日本製の安全・安心を求める消費行動だ。  人気を博しているのは日本製に限らない。中国人旅行者が日本で買って帰る定番商品に、 中国製の温水洗浄便座がある。中国で製造された洋服を日本の小売店で中国人が買い求 める光景も多く見られる。メイド・バイ・ジャパンの商品を日本で買えば、偽物をつかまされる 心配がないという安心感がある。  日本人気は中古品市場にも及ぶ。古着でも中古車でも、日本人によって使われていたもの は、もともとの品質の良さに加え、使い方も丁寧なため老朽化していないとして、外国人の間 で人気が高いという。日本の仲介業者なら、商品の汚れや不具合を隠して売るといった悪質 な行為がなく、修理などアフターサービスも万全という信頼感があることが人気の理由であ る。  同様の信頼感は労働市場でも存在する。企業は日本に拠点を置けば、信頼性の高い、あ まり監視しなくても真面目に働く労働力を容易に確保できるというメリットを享受できる。  これらはいずれも、日本人・日本企業が公正かつ真面目で誠実という評判を得て、安心の ブランドが確立していることが国際競争力の源泉になっている事例といえる。  最近、食品の産地偽装、免震装置の性能偽装など、日本の評判に傷をつけるような事件 が表面化している。日本が連綿と培ってきた誠実・安心のブランドという財産を守るため、法 律や業界の自主ルール等により徹底した再発防止策を講じ、国を挙げて社会の規範を維持 していくことが必要だ。 (本稿は、2015 年 5 月 1 日 日本経済新聞夕刊「十字路」に掲載されました)