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2005年8月1日
経営センサー7・8月号 2005 No.74

■経済・産業

注目の新興経済大国を追う (下)ロシア編 ロシア経済好調の背景と今後の課題

株式会社UFJ総合研究所 調査部 研究員  堀江正人

【要点(Point)】
(1)ロシア経済は1990年代の混乱から立ち直り高成長を続けている。個人消費が急拡大しており、モスクワなどの大都市では高額商品の売れ行きが好調である。
(2)しかし、ロシアの景気拡大は主要輸出品である原油の価格高騰に支えられており、原油価格が下落に転じれば景気は鈍化する可能性が高い。
(3)プーチン政権は、2010年までにGDPを2000年の2倍に増やすことを目標としているが、それには今後8%近い経済成長率が必要となる。ロシア経済の潜在成長率は足元で6%台後半と見られ、8%の高成長率を中長期的に続けるためには、構造改革による生産性向上が求められる。

シリーズ:製造業の現場は今(2)  強さの秘密はここにあった 元気なモノづくり中小企業の事例に学ぶ

増田 貴司 産業経済調査部 チーフ・エコノミスト 

【要点(Point)】
(1)今号では、優れた技術力をベースに独自の強みを構築して競争力を発揮している元気なモノづくり中小企業の事例として、次の3企業を取り上げ、その強さの背景に迫ってみたい。
<事例1>株式会社クマクラ(精密機械加工)
<事例2>原田精機工業有限会社(輸送用機器の試作加工)
<事例3>日本電鍍工業株式会社(メッキ加工)
(2)これら元気な中小製造業企業の事例から、われわれは、
(1)新製品開発の競争力、(2)現場の力を発揮する戦略、(3)MOT的手法の実践例、を学ぶことができる。
(3)「元気なモノづくり中小企業の強さの秘密」を10箇条にまとめると、
(1)オンリーワンの技術・製品の開発、(2)高度な自社技術を世の中にアピール、(3)ローテクとハイテクの融合で強みを構築、(4)事業分野の選択と集中、(5)難しい注文でも断らないで挑戦する、(6)「コンサルタント、技術顧問」的機能を持つ、(7)外部ネットワークの活用、(8)顧客のささやきに耳を傾けてニーズを吸い上げ、(9)開発から設計・製造まで一人の技術者が一貫して行う、(10)人材育成に熱心である、となる。

イノベーションを見据えた科学技術戦略となるか -第3期科学技術基本計画の行方-

福田 佳之  産業経済調査部 エコノミスト

【要点(Point)】
(1)本年度は第2期科学技術基本計画の最終年度であり、2006年度からの第3期基本計画のスタートに向けて、現在、同計画の策定を巡って議論が繰り広げられている。
(2)これまでの科学技術基本計画によって一定の成果が得られたものの、韓国や中国といったアジア勢の追い上げが急になるなど新たな対応が迫られている。
(3)第3期科学技術基本計画は、社会・国民への説明責任と社会への成果還元という基本姿勢を打ち出しており、「モノから人へ」「機関における個人重視」と支援対象をシフトさせている。
(4)しかし、現段階では政府研究開発投資目標の決定や基幹技術の絞り込みなどはできておらず、今後の議論の焦点になると見られる。
(5)これまでの議論を総括すると、政策目標や対象分野・領域が拡散する傾向にあり、メリハリのついた科学技術政策の策定・実施と、効率的な研究開発を模索する必要がある。また、イノベーション振興という視点を入れる必要があり、そのためには所轄府省との連携が重要であろう。
(6)科学技術政策実施に際しては、規制緩和と財政支出削減が重要であり、これらの関係はコインの両面であることを銘記すべきであろう。

バイオ革命は本当に起こるか

大島 桂典 研究理事 東レ株式会社研究本部顧問

【要点(Point)】
(1)バイオテクノロジーは地球や人類が直面している大きな課題に対して有効な解決策を提示する可能性のある数少ない有望技術である。
(2)現在大きな期待をもとに国策も含めた多くの研究開発が進められ、種々の有効知見が見出されているが、現状の延長線上ではバイオ革命に相当する実現はない。
(3)バイオ革命実現には、産業界や企業がバイオテクノロジーを用いた物づくりや製造プロセスを中心とした分野に本気で注力する必要があり、現在がその好機である。

■視点・論点

村社会の崩壊が始まった

経営コンサルタント 萩原 誠

 2005年は日本の村社会が崩れ始めた年として歴史に残るであろう。2005年が始まってわずか5ヶ月の間に、戦後60年続いた日本の村社会の崩壊を予測させる事件や事故が続発した。 『10大事故・事件・事象』 (1) 産業再生機構の救済が決定したカネボウで累計約2,000億円にも及ぶ粉飾決算が判明し、とにもかくにも上場廃止が決定した。何とか上場を維持しようとした産業再生機構、長年の不正を見抜けなかった監査法人・監査役・東証。関係会社への損失飛ばし疑惑を多くの社員や業界は知っていた。

■マネジメント

中国における増値税制度の動向

望月コンサルティング(上海)有限公司 董事長 公認会計士 望月 一央 

【要点(Point)】
(1)日本の税収に匹敵しつつある中国国家税収全体の中で、増値税収入はその約2分の1を占め、その重要性はますます高まりつつある。
(2)中国増値税制度における輸出増値税は中国特有の制度であり、今後も政策的に変更されることが予想されている。
(3)2004年度の増値税納税調査が、2005年半ばに予想されており、多くの企業において輸出増値税が追加調整される可能性もある。

新「会社法」のポイント 第1回

弁護士  松崎 昇

【要点(Point)】
(1)形式面「会社法」は、形式面で次のように生まれ変わった。
(1) 今まで商法の一部であった会社関係の法条をまとめて一本の独立法とした。
(2)これまでのカタカナ文語体を、現代的なひらがな口語体とした。
(2)ねらい次に、そのねらいについては、会社法全般にわたって様々な改正がなされているので、簡単に要約することは困難だが、大体次のようにまとめられるといってよいだろう。
(1)会社形態や設立方法を実際の要請に合わせたものとした。
(2)会社経営をより機動的に行えるようにした。
(3)上記(2)の反面、会社経営を健全に保つ方策を強化した。
(4)その他

■人材

技術経営(MOT)教育のためのケース教材(2) あなたなら、このケースどうする? -世界シェアNo.1、東レ炭素繊維複合材料“トレカ”の研究技術開発・事業戦略-

宮木 宏尚 特別研究員 MOTチーフディレクター

【要点(Point)】
(1)MOT(技術経営)は「不確実性に挑戦するマネジメント」といわれるように、MOT人材育成においては、講義中心の座学だけでなく、OJTに代わる「疑似体験」とも言うべきケーススタディが、重要である。
(2)このケーススタディ教材は、近年数多く作られているが、最終商品や先端技術に関するものが多く、素材開発がわが国製造業の競争力を支えているといわれながら、この分野のケース教材は、消費者との馴染みが薄いこともあり、ほとんどないのが実情である。
(3)東レ経営研究所では、東レ(株)、一橋大学青島矢一助教授の協力を得て、東レ(株)の2つの素材のケース教材を作成した。この教材により、素材系産業の技術開発戦略、事業化戦略、マーケット戦略などに関するヒントが得られるものと考える。

・新しい経営感覚を磨く創発塾」第1期開講 ・上級MOT短期集中「戦略的技術マネジメント研修」第2期開講

■経済用語解説

ちょっと教えて!現代のキーワード  「破壊的イノベーション」「生体認証(バイオメトリクス)」

■お薦め名著

『戦略不全の倫理』 -収穫なき繁忙との離別- 三品 和広

■ズーム・アイ

万国博雑感

鶴見 徹

 子供たちを連れて、一日愛知万博「愛地球博」で遊んできた。1851年の「第1回ロンドン万国博覧会」以来、特別展を除いて35回を数える万博の歴史の中で、1970年の大阪万博、1990年の大阪花博に次いで、日本およびアジアで開催される3回目の万博ということである。私自身今まで万博を見たことがなく、このような機会がなかなかあるわけでもないので、小さな子供の記憶に残るかどうか心許ないとも思ったが、行ってみることにした。梅雨の合間を狙ったのであるが、早朝の新幹線からすでに混んでおり、リニモの乗換駅では長蛇の列に巻き込まれ、さすがは万博と妙なところに感心してしまった。

■今月のピックアップちゃーと

結婚=幸せ? ~結婚観の国際比較に関する調査~

■TBRの広場

繊維産業シンポジウム開催のご案内