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2016年10月3日
人工知能を考える
シニアエコノミスト
福田 佳之

人工知能の進歩がすさまじい状況です。今年3月にはグーグルの人工知能であるAlfaGoが世界最強レベルの囲碁棋士と対戦して4勝1敗と打ち破っています。囲碁は将棋やチェスに比べて読まなければならない局面の数が多いと言われており、その数全部で10の360乗と言われています。ちなみにチェスの場合は10の120乗、将棋の場合は10の220乗と多いのですが、囲碁にはかないません。2013年に人工知能が将棋のプロ棋士に勝ったときでも、囲碁で人工知能がプロ棋士に勝つにはあと10年はかかると言われていました。それからたった3年で人工知能は囲碁界の頭脳の最高水準に追いつきました。一体、人工知能はどこまで進歩するのでしょうか。  現在、人工知能などによってどのような未来社会が実現されるのか総務省などで議論があります。例えば、2020年には重篤な病気の延命や予防が可能となり、25年には家事ロボットが実用化され、2030年には機械翻訳が実現するとしています。人工知能やロボットの進歩によってあらゆる人間に高度なサービスが提供される社会が到来すると見ているようです。筆者にとっては家の中を整理整頓してくれる家事ロボットの登場が楽しみです。  一方、人工知能の進歩は人類にとって恩恵ばかりをもたらすわけではありません。人工知能やロボットが進歩していけば定型的な職務だけでなく、非定型な肉体労働まで行うことができると見られており、人間の職を奪うとする見方があります。10~20年後に日米英の労働人口の35~49%が人工知能やロボットに置き換わるという試算が出ています。また2045年には人工知能の知性が人間を超えるという「シンギュラリティ」の到来を予言する人もいます。その頃の人工知能のIQは10,000を超えるようです。いつか人工知能は人間の知的能力を超えるだけでなく、人間と敵対し、そして人間を支配する存在になってしまうのでしょうか。人工知能の研究者はこういった将来の到来に否定的です。  人工知能が人間の知的能力を超えたとき、どのような状況が訪れるのでしょうか。この質問に対する回答は現代のチェスの世界に隠されています。1997年にIBMの人工知能のディープ・ブルーは当時のチェスの世界チャンピオン、ガルリ・カスパロフを破りました。その後、人間だけでなく、人工知能も参加できる、フリースタイルのチェスの大会が行われるようになりましたが、一番勝率が高いのは人工知能だけのプレーヤーではなく、人間とコンピューターで構成されるチーム「ケンタウロス」です。また、チェスの人気はいまだに根強く、人間のチェスの強さは人工知能で訓練することで強化されており、現在、1997年時点と比べて2倍以上のグランドマスターがいるとのことです(ケヴィン・ケリー「<インターネット>の次に来るもの 未来を決める12の法則」NHK出版、2016年)。  人工知能が人間の知的能力を超える時代に突入しても、人間は人工知能と共存しながら自身の存在意義を見いだすことができるのではないでしょうか。