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2013年11月1日
経営センサー11月号 2013 No.157

■今月のピックアップちゃーと

ここでも高まる中国の存在感  ~影響力のある論文数、日本の順位は下げ止まらず~

■経済・産業

業界の境界線が消えつつある ―異業種間競争の時代に求められる経営課題―

産業経済調査部長 チーフ・エコノミスト 増田 貴司

【要点(Point)】
(1)最近、異なる業種・業態の企業同士の競争が増えている。
(2)異業種間競争の代表的な震源地はスマホである。スマホは1台の端末で複数の役割を果たすことができるため、別々の業界で発展をとげてきた多くの商品がスマホと競合し、市場縮小の危機に見舞われている。
(3)コンビニも異業種間競争の主役の一人である。近年、コンビニがさまざまな領域に取扱商品を拡大して、他の業種・業態の顧客を奪って成長している事例が増えている。
(4)異業種間競争が増えている理由としては、(1)国内市場の縮小・成熟化、(2)グローバル化と異質なビジネスモデルの流入、(3)模倣の容易化(アウトソーシングの普及、モジュール化、知識の「形式知」化)、(4)ITの進化、(5)新たな汎用技術の登場、が挙げられる。(3)、(4)、(5)はいずれもIT革命の進展と関連する要因である。
(5)あらゆる電子機器の機能がスマホやタブレットに集約され、それがインターネットによって世界中の人とつながる時代が到来した。この結果、個人が直接、生産要素や市場にアクセスできるようになり、産業界にコスト構造とビジネスモデルの劇的な変化をもたらしている。
(6)企業が異業種間競争を生き抜くには、(1)あらゆる業種の境界が揺らぎつつあることを認識し、危機感をもち、意識転換を図ること、(2)小さな失敗を恐れずリスクをとる風土を醸成すること、(3)顧客の立場になって、顧客が求める利益は何かを探求することが、戦略判断のよりどころとしてこれまで以上に重要になること、(4)広い視野から世の中を観察し、他産業の動向にも目を向け、異業種の事例から学ぶこと、といった課題に取り組む必要がある。

PDF : 詳細(PDF:1,697KB)

IFRSをめぐる最近の動向 ―強制適用の判断は見送り、日本に四つ目の会計基準―

産業経済調査部 シニアアナリスト 永井 知美

【要点(Point)】
(1)2013年6月、金融庁企業会計審議会から「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」が公表された。国際会計基準(以下IFRS)を上場企業に強制適用するか否かの判断は見送られた一方で、(1)IFRS任意適用要件の緩和、(2)エンドースメント(IFRSの基準を一つ一つ検討し、必要と考えた場合、一部基準を削除あるいは修正して採択する仕組み)されたIFRSの導入、(3)単体開示の簡素化の方向が打ち出されている。
(2)現在、日本には日本基準、米国基準、IFRSの三つの会計基準が存在する。エンドースメントされたIFRSが導入されると、国内に四つの会計基準が存在することになる。
(3)本稿では、IFRSをめぐる世界情勢の変化、IFRSの特徴を見た上で、日本でIFRSの任意適用企業がなかなか増加しない理由、四つ目の会計基準が登場する背景を考えたい。
(4)日本の会計制度は、混沌とした状況が続いている。金融庁は、どのようなスケジュールで何を判断基準に、どうIFRSに対応するのか示していない。何か強い動機のある企業は別として、そうでない企業は慌てて任意適用に走る必要はなく、制度の全体像がもう少し明確になるまで様子を見たほうが無難と考える。

PDF : 詳細(PDF:1,804KB)

■業界展望

米国の医療機器市場の現状と日本関連の注目テーマ

クレディ・スイス証券株式会社 調査本部株式調査部 ディレクター 酒井 文義

【要点(Point)】
(1)医療機器の種類は検査用のMRIやCTスキャンから、手術用メスや注射器まで、多岐にわたる。正確な診断や予防、治療と予後などに果たす役割は大きい。
(2)米国の医療機器市場はオバマケアによって大きな影響を受ける可能性がある。ベーシックな検査需要や機器の需要が誘発されることや、低侵襲性デバイスによる日帰り手術が増加することなども見込まれる。
(3)足元の米国医療機器市場はオバマケアに政治的逆風が吹いていることもあり、停滞気味といわれる。ただし米国の医療機器市場は引き続き世界をリードする場であることは変わらない。わが国の医療機器メーカーの取り組みや、国内のデバイスラグの解消などに注目したい。

■視点・論点

自然体で回復してきた日本経済、リスクはやはり海外

日鉄住金総研株式会社 経済産業調査部 チーフエコノミスト 北井 義久

予想以上に好調な個人消費 日本経済は、中国向けを中心とする輸出の減少により2012年春から冬にかけて軽い景気後退を余儀なくされた。しかし、個人消費が堅調を維持し輸出が持ち直しに向かったことにより、景気は12年11月に底を打ち、その後は順調な回復が維持されている。

■マネジメント

【シリーズ企業と広報(5)】 100年先も健全な企業であり続けるために ―東レ広報30年の経験で学んだこと― 「サプライズなし」を目指すのがIR活動

東レ株式会社 顧問 斉藤 典彦

【要点(Point)】
(1)企業は株主・投資家と対話を図り理解を促すことによって、企業の相対的価値を極大化するため、経営の責務としてIR活動を推進している。
(2)投資家とのコミュニケーションを通じて、「その目線を知りつつ、わが道を行く経営」というバランスの取れた経営こそが望ましい経営である。
(3)アナリストレポートで「サプライズなし」と書かれることは、アナリストとIR担当者との日頃からのコミュニケーションが良いという証である。

■環境・エネルギー

IPCC第5次報告書と気候変動政策: 東京オリンピックをグリーンに

京都大学 名誉教授 地球環境戦略研究機関(IGES)シニア・フェロー 松下 和夫

【要点(Point)】
(1)暑かった今年の夏の背景には、地球温暖化の進行がある。
(2)9月に公表されたIPCC第5次評価報告書では、温暖化の原因を人の活動によるとほぼ断定し、今後さらに気候変動によるリスクが高まると警告している。
(3)IPCC報告は日本にも適応策を含む、より積極的な気候変動政策を求めている。とりわけ2020年の東京オリンピックをグリーン・オリンピックとする取り組みが必要だ。

■アジア・新興国

アジアの時代の中国ビジネス ―ビジネス環境の変化と日本企業の対応―

浦上アジア経営研究所 代表 浦上 清

【要点(Point)】
(1)グローバル化の中でアジアが中核をなすアジアの時代に中国が世界の企業の戦略ターゲットになっており、日本企業も対中国直接投資を増やしている。
(2)在中国日系企業・米系企業の最近の実態調査によれば、人件費も含めたコストの上昇が経営上の問題点のトップに挙げられている。また、人的資源の制約も深刻な問題であり、日系企業・米系企業はさまざまな対応策を講じている。
(3)中国市場は、タブレットPCとスマートフォンの事例を踏まえてみると、世界市場で中心的な位置を占めつつあり、中国市場での販売は重要な意味を持つ。
(4)アジア事業の全体像を踏まえた上で中国事業の位置づけを明確にし、貿易・投資戦略を打つことが大切である。
(5)企業は、中国社会が直面している課題にイノベーションで応え、中国との共同プロジェクトなどを通じて新しいビジネスを生み出すことができると同時に、中国社会の変革に寄与できる。

PDF : 詳細(PDF:1,582KB)

■人材

人材育成の視点 イノベーション創出が起きやすい風土への改革

元キヤノン材料技術研究所長 技術経営コンサルタント 村井 啓一

【要点(Point)】
(1)イノベーションが起きやすい組織風土を創るためには、皆さんが目的とすべきイノベーションはどのようなものかその本質を理解しなければ始まりません。
(2)イノベーションは三つの条件がそろえば創出確率が向上します。卵を産む創発人材と、イノベーションまで牽けん引できる創発リーダーの存在、そして、これら人材が闊かっ達たつに活動できる自律的組織風土が醸成されていることです。
(3)組織風土改革を行うことは難しくありません。組織トップの明確なビジョンの下、構成メンバーの腑ふに落ちて、自律的活動に落とし込むまで行動し話し合うことです。

■経済用語解説

ちょっと教えて!現代のキーワード 

「NISA(ニーサ)」 「RCEP(東アジア地域包括的経済連携)」

■お薦め名著

『インド・ウェイ飛躍の経営』 ―インド・ウェイは、ビジネスの「あるべき姿」を提示―

ジテンドラ・シン、ピーター・カベッリ、他 著 太田 正孝 監訳 早稲田大学アジア・サービス・ビジネス研究所 訳

■ズーム・アイ

人生はプロジェクトマネジメント

経営センサー編集部 石川 裕子

人生には、3つの坂「上り坂」「下り坂」「まさかの坂」があると言われます。今夏、4歳の長女が長期入院し、想定外のことが起こる「まさかの坂」を経験しました。昨日まで元気に保育園に通っていた娘が、外来診察に行ったところ、緊急入院となってしまったのです。その大学病院の小児科は、親が24時間泊まり込みで付き添いをして、投薬や各種計測をしなければなりません。母親の私が付き添うことになったのですが、10カ月になる長男もいるので大変な生活が始まりました。